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gonさんの涼風のメルト -Where wishes are drawn to each other-の長文感想

ユーザー
gon
ゲーム
涼風のメルト -Where wishes are drawn to each other-
ブランド
Whirlpool
得点
81
参照数
1402

一言コメント

主人公の呪いという伏線を各ヒロインのルートで打消したのは素晴らしいと思う反面、それでも寂寥感が残る切ない純愛物語。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 この作品において、一番驚いたのはボリュームでしょうか。結構読み応えのある内容だったと思います。

 この作品においての、キーワードは主人公の呪いについての事でしょう。この部分は各ヒロインのルートでそれなりの解決を導き出した作りになっていたのは好印象。

 分かり易かったのは、捺菜ルートと羽衣ルートでしょうか。
 佳華ルートは開発計画の中断という形で主人公の命が削れられることを阻止したという解釈になるのでしょうか?
 月音ルートも似たようなもので、月音草が『特別保護植物』に認定されたという形で森が守られたという事なのでしょうか?
 あまり良く理解してない様な気がしなくもないですがww

 ただ、捺菜があまりにも気の毒すぎるというのがとても印象的です。彰人の呪いを解く為、その理由を語る事無く森に入る決意を固めたという悲壮感漂う選択。彰人に気付かれたくないという気持ちは分かるのだが、自己犠牲があまりに強すぎる。語られない想いは届かず、報われない思いの辿り着く先は・・・
 涼ルート以外では、彰人は捺菜の想いに気付かないわけですから、誰かと結ばれたその後の彰人と接触し続ける事は想定の範囲なのでその点も冷静に考えると切ないですね。捺菜の性格上、笑って普通に接するだろうと想像できる分余計切なさが募ります。森に入る事は涼の事もあるから、彰人の為だけとは限らないでしょうが大部分であったのは推測できる。森に入る事の葛藤の描写もあったわけですから、後悔の全くない選択とはいかないでしょうしね。

 あと羽衣の妹の優衣の件にもわだかまりが残りますね。優衣の病気は医学では治療する事が出来ず、インフェル(精霊)の力でないと治せない。羽衣ルートでは神具の力を病気の為に使いますが、それは対象が優衣から羽衣に変わったからであり、それ以外のルートであれば彰人は優衣の為に力を使うのでしょうかね?この点は、たらればの話なので、羽衣が神具の使い方に気付くとか、その状況(優衣危篤)になれば何とかする的な希望的観測で解釈するしかなさそうですね。

 結局私が言わんとしたい事は、一見ハッピーエンドに語られるそれぞれの物語にも、読み手によっては何かしら(対象のヒロイン以外の事で)わだかまりが残るものであるという事。

 完全無欠のハッピーエンドは難しいのかもしれませんが、本筋を綺麗に纏めているからこそ、そこら辺の細かな部分も綺麗に終わらせて欲しかった。そこまで望むのは欲張りなのは自分でも理解しておりますが、最近の作品では本当に綺麗な作品(とても良く作りこんでいただけに)だったと思うだけにすこし残念な気がします。
 ですが、人の優しさをうまく描写しているとても良い作品ではあるとは思います。感想では良い点には触れておりませんが、随所に感動できるシーンがありますのでプレイ予定がなかった方にもおススメ出来る作品です。