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gonさんのナツユメナギサの長文感想

ユーザー
gon
ゲーム
ナツユメナギサ
ブランド
SAGA PLANETS
得点
85
参照数
917

一言コメント

一見すれば、一夏の儚き恋物語と言えよう・・・ だが、私は全力ご都合主義のユーザーに考える糊代を与えてくれる素晴らしい作品だと認識する事にする。書いてる内容はしょうもない妄想なんで、見てもほぼ役に立たなさそう。あ、いつもの事か・・・

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 とても丁寧に作られていたのがとても印象的で、期待していた以上にとても素晴らしい作品でした。この作品に対し、敬意の気持ちを表現する為にも、まずはここから始めないといけない気がしてしまいます・・・

 作品に関してですが、複線の使い方がとても印象に残っております。登場人物の正体、ホープという場所が何故夏を繰り返すのか、随所に散りばめられ、先を読ませたいと意欲を駆り立てるシナリオはとても素晴らしかったです。中だるみする事無く最後まで読みきる・・・ 言うのは簡単ですが、実際とても難しくとても大事な事でしょう。この作品には確かにその条件を満たす何かがあったのでしょうね・・・ 複数ライターの作品で、このレベルでの高水準。これだけのもの見せられると、唸らずにはいられないという気持ちにさせられますねww

 私がこの作品を好きになった理由としましては、多分ここが一番大きいように感じます。それは・・・

 この物語は、しっかりと完結されている訳ではなく、ユーザーに想像させる(好きなように解釈させる)作りであった事。
 ↑ま、ほとんど私の誤解釈といったところなんですが・・・

 詳しく書くなれば、例えば歩以外のヒロインは捨て鉢なのでしょうか・・・?ナツユメエンドをトゥルーと据えるのであれば、歩以外では誰と結ばれる事となっても所詮は過ぎ行く一夏の物語。ここでは、主人公と結ばれる事が大事なのではなく、ヒロインの抱える葛藤を解決するのが一番の肝。(つかさエンドで雪が降る場面の描写があった点からも推測できますが・・・)多分それが常考なんでしょうが、永遠に続く夏はあってもいいのではないでしょうか・・・?ナツユメに辿り着く事無く、そこで打ち止めとなりうると解釈できなくもないのではないでしょうか?作品の趣旨が、明日に立ち向かえ!!的な作風を考慮すれば、自分で書いててこの解釈は無理がある事は承知しておりますが、それでも私にはそのようにこの作品を読んで感じました。

 私がそのように感じた理由としましては、ナツユメルートで主人公が死んだという事を暗に仄めかしていながらも、実際死体は発見されていない。そして、夢先生の『希望を持たせる様な事は言わないけど・・・』みたいな物言いと最後のエンディングの音々の一言。これを見た時ビビっと来ましたww主人公が死んだという事を前提に据えながら、それでも【もしかしたら生きてるかも?】という期待を持たせる様な言い回し。最後の最後でこんな終わり方をすれば、私の妄想もアリかな~と思えてしまいます。そんな点から、ユーザーにどこか解釈を委ねる作品であると感じました。言いかえるならば全力でご都合主義な作品であるとも・・・

 儚き恋物語と捉えるか・・・?はたまた私の妄想力全開の解釈の様にご都合で捉えるか・・・?ナツユメエンド・つかさエンドが現実重視な内容であるとするなれば、真樹エンド・羊エンド・はるかエンドは夢重視の内容である事を考慮し、ユーザーそれぞれが判断する。はっきりしないと言われればそれまでですが、だからこそ得る事のできる想像の自由。私はこの作品の醸し出すそんな雰囲気がとても大好きです。複数ライターであるが故にかどうかは分かりませんが、二律背反の生み出すナツユメナギサという世界観。プレイされていない方がいれば、これはオススメできます。明確な作品が好きという方にはあまりオススメではないかもしれません。

 ここまで読んで頂いた方には大変恐縮ですが、あ~、こやつお得意のいつもの妄想全開だな~ぐらいの暖かい目で見ていただければ幸いです。それではまた・・・