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gluttonykingさんの彼女系生命進化論パーフェクト☆ガールの長文感想

ユーザー
gluttonyking
ゲーム
彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール
ブランド
SowChild(ばかすか)
得点
85
参照数
138

一言コメント

『選択肢を選ぶだけで"ヒロインとの幸せな人生"を歩める美少女ゲームへのアンチテーゼ』と思いきや

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■あらすじ
今日も俺は""幼馴染み""に起こされて、彼女とともに学校へ向かう。
今日も俺は教室にやってきた""後輩""と昼食をとる。
今日も俺は廊下で待ち伏せていた""先輩""によって図書館での仕事を手伝わされる。
――彼女たちは俺のことが好きだ。俺はそのことを知っている。


■どんな話
地球は滅びかけ、生命の危機に瀕していた。人類は最後の望みをかけて、アダムとイヴを宇宙へ旅立たせる。
宇宙船の中、アダムは選択を繰り返す。最高の種を生み出すために、何度でも繰り返す。
『必ずハッピーエンドに導いてくれる』""観測者""の力を借りて――
しかし、時間は有限。終わりは始まる。
最高のヒロインを選択するプログラム""パーフェクトガール""で生きる主人公は気付いてしまう。
これが偽りの世界であることを……。
すべてが見えない神の手の"選択"によって積み上げられた地獄の末を生きる主人公は、己の未来をつかむため、懸命に奇跡へ手をのばす。

■感想
心をかき乱されました。
およそ10年ほど、エロゲー/ノベルゲームを嗜んできた"理由"とこんな形で向き合わされることになるなんて。
言葉にすることはなく、ずっと無意識に胸の奥底にしまってきた感情を汲んでくれたことに、多大なる感謝を捧げたいです。
「自分だけじゃない」と思えただけで目元に溢れそうになるほどの涙がたまってました。わかりみが深いというのはこういうことをいうのですね。
この現実はやり直しが効きませんが、自分がノベルゲームを触れてきた時間は決して無駄ではなかったことの証をこのゲームは残してくれました。
たかがフィクション。絵空事。想像の産物だけれど、そこで生きる人物の様々な感情に心を揺さぶられ、時には救われ、怒りをぶつけもしましたが、
自分一人じゃ得ることが出来ない体験を味わわせてくれたことは紛いもない事実。それは誰も否定することが出来ない確固たるもの。
この気持ちは一生色褪せることはないでしょう。

たくさんの感情を、たくさんの人生を、
たくさんの笑顔を、たくさんの幸せを。

ヒロインと一緒に笑って、泣いて、
足掻いて、足掻いて、足掻いて、足掻いて……

画面の前で苦しくなって、いつまでも泣き続けた。
そしていつまでも心の中に刻まれた。

人生はこんなにも苦しいのに、
懸命に生きてみたいと思えるんだって。

何度でもやり直し、敷かれたハッピーエンドを選ぶだけの美少女ゲームに毒を吐くゲームは、
僕らの本懐に寄り添い、すべてのノベルゲームに花束を送る作品でした。
大変素晴らしかったです。