「ヒロインと付き合ってから」を楽しむゲーム。 下ネタで笑いを誘うのは程々に……
「ヒロインと付き合うまでの過程」よりも、「ヒロインと付き合ってから」の話に重点を置いたゲームでした。
【どんな話】
主人公が幼馴染がバイトしている高級パン屋でバイトをし始め、
そこで働いているヒロイン達と恋愛関係になる。
【感想】
とても面白かったです。
どんな話かといえば、先ほどのように二行で説明ができてしまう。
しいて言えば「従姉妹のあゆみが家に住み始める」を加えて
三行で説明ができてしまうほど、「ストーリー性の無い」作品でした。
本編の半分は「ヒロインと付き合ってからの話」個別√で、
共通√までの各ヒロインの接点といえば、1、2回のイベントか、メールのみ。
「とりあえず個別√入ろうぜ!」と言わんばかりのフローチャート、構成になっています。
そんな、他の「付き合うまでに重きを置く」ゲームとは違うこの作品のどこが良かったのかいえば、
キャラクターを掘り下げることに注力されていた所がとても良かったと思います。
付き合ってからは二人きりの会話でほぼ進行されるのですが、そんな進行において
いろんな角度から、ヒロインについて切り口をいれていく、主人公が理解しようとしている
「◯◯は~~な人間だ」と人間観察ではありませんが、説明描写が多々あります。
所謂、「付き合ってから彼女について新発見がある」というような描写が個別√には散りばめられていて
恋仲になることによって「相手と向き合う」という感覚を上手く表現しようという意気込みを感じます。
実際プレイ中に、ヒロインについて理解を深めるにつれて、「人として◯◯が好き」といった複雑な感情を抱いてしまいました。
そして、この作品は相手と向き合うことによって必然的に発生する、
「相手を通して自分を見つめなおす」ところまで描かれているのも、良いなと思いました。
単純にヒロインだけではなく、恋愛をすることによってお互いが成長していくという、「ただイチャラブしていない」感のおかげで
ストーリー性がないにもかかわらず、密度のあるものを感じると同時に、
相手を理解し、相手という鏡に自分を映し出すことが、現実の人間関係においてリンクする部分が非常に多いと感じました。
「相手と向き合う=相手を理解する=相手を通して自分を見つめなおす」という、
ユーザーである僕らが実際に体感している人間模様を忠実に再現しようとするのは、
僕の中では今までにはない新鮮な感覚で、もっとこういう方向性のものが増えればいいなと思いました。