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gluttonykingさんの俺は君の生理用ナプキンを舐めたいの長文感想

ユーザー
gluttonyking
ゲーム
俺は君の生理用ナプキンを舐めたい
ブランド
PLASTIC LABEL
得点
80
参照数
541

一言コメント

ナプキンって字面からの印象とは裏腹に――

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

〇どんなゲーム?
『女子が使用したナプキンを集める』ことが趣味である主人公、経介が各ヒロイン達に狙いを定め、
彼女たちの使用済みナプキンを手に入れようと模索するADV。
学校の女子トイレに監視カメラを忍ばせ、逐一彼女たちの”動向”を観察するも、なかなか当たりを引けずにいる経介。
考え抜いた結果、見出した方法は、『彼女の家に入り使用済ナプキンを盗む』ということ。
実行するためにはまず、彼女たちとの距離を縮めなければならない。
使用済みナプキンで自慰に興ずるのを夢見て、彼は仮面を被り、彼女たちに声をかける。
使用済ナプキンのために、ヒロイン達にとっての「良い男」を演じる……


〇感想
『素直に、手放しで喜べないけど、これも純愛ゲーだよね』という一言が最初に出てくるような作品でした。
所謂、人間の真価、真実の愛というものはどん底に突き落とされた時に試される。
逆に言えば、どん底に突き落とされない限り、真の愛というものは確立されない。
BADENDがメインなあたり、私の中でプレイ中そういったひねくれた考えが渦巻いていました。
一種の警鐘のような……「お前らが普段慣れ親しんできたような〇〇や△△とは違って普通はこうなんだよ」
と、サークルらしさというか、前作のメンヘルメイトと似た雰囲気を終始味わう心地がなんともいえません。

メンヘルメイトと本作の違う点として、
『必ずヒロインが他男に妊娠させられる』という点。
とんでもないです。
邪知暴虐を極めた者が考えそうな展開は言いすぎですが、近いです。

イイ感じの流れでヒロインが他男にうつつを抜かし、イイ感じに妊娠を決断しますが、
いざ子を産む瞬間に、我に返り怖気づき、恐怖に苛まれる彼女達の痛々しさは他のゲームじゃまず味わえないものかと思います。
だって、恐怖のあまり、包丁で自分のお腹刺して赤ん坊殺すって……やばいだろ。
このゲームには良く言えば秀逸な要素、悪く言えば馬鹿野郎。
しかし、それだけで本作は終わらないのですが、割愛。



上記のような『取り返しのつかない過ち』を本作はテーマにしています。
傍からみれば、彼女たちがやったことは「そりゃあ、股開いたお前が悪いんだろ」と他人事で済まされてしまいますが、
これが僕ら一人一人に該当するかもしれないと考えると胸が痛いです。グサグサきます。
きっと誰だって何かしら一度は取り返しのつかない過ちを犯してしまうものじゃないでしょうか。
彼女達や経介がやらかした事までいかなくても、当人達にとって後悔が絶えないような過ちを犯してしまう、
もしくは既にやってしまったと思います。
それら後悔に対してこの作品は向き合う勇気を見せてくれます。
人は悲しみを知っているから幸せを実感できるとも言うように、
『いつだって後悔しながら大切なものを見つけていく』
そんなある種の生き方なるものを見せられている気がしました。
本当の幸せが訪れるかはわかりませんが、辛い日々を送っていく中に、
ほんの少しの希望があると、ほんのちょっと勇気があれば、人は良い方向に変われるかもしれない。
という優しさも、寓していたら、私はちょっぴりやって良かったなって思えるので、そうあってほしいです。
また、主人公という当事者、愛する者がという視点を通して、
臆病な人間だからこそ誰もが一度は犯してしまう過ちに対して寛容でいてあげようかなって気分に浸らせてくれます。
流石にあれはかわいそう……。

本作は不幸で満たされた空間にある、ほんのごく僅かな希望を手繰り寄せんとする、
純粋な想いが込められてると思いたいです。



所謂ギャップものな作品でしたが、商業と比較して”同人ならでは”な要素を全面推し出した良い作品でした。


おわり