篠原姫子。彼女の人生に花束を。
narcissu という物語の顔役は佐倉セツミですが、中心にいるのは篠原姫子だと思います。
始まりの物語で7階の創立やルールのことは書かれましたが、セツミと優の決断や、その後のスミレの人生に影響を与えたのは姫子さんです。
彼女だけが、健常な姿、一般病棟患者、七階患者、そしてその死、という過程をすべて描かれた存在です。彼女の生き様が水面に描かれた波紋のように、その後の多くの人に影響を与えていきます。
奇しくも同じ「篠原」の姓を持つ篠原あかりが、姫子さんの親友である優花さんに対して「その女性はまだ死んでいないのね」と語っていますが、まさにその通りだと思いました。
彼女の生命は終わってしまったけれど、彼女の人生に触れたものたちは、彼女の言葉を覚えている、その生き様を覚えている。その彼ら彼女らが生きている限り、姫子さんもまた在り続けているのだと、考えました。
篠原姫子という、この架空の存在といえども見事に生きた人物を、私は生涯忘れないでしょう。