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fieldLさんの遥かに仰ぎ、麗しのの長文感想

ユーザー
fieldL
ゲーム
遥かに仰ぎ、麗しの
ブランド
PULLTOP
得点
100
参照数
2087

一言コメント

分校系は栖香→美綺→邑那の順番で。そして邑那は一番最後に攻略すること。後は・・・まぁ、とにかくやってみて下さい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 とても楽しみにしていた作品なので体験版をプレイせずに予約していました。実際、発売日に手に入れてはいたのですが、本作自体がかなりのボリュームだったのと院試の勉強でしばらくプレイできず本日やっとクリア。
 感想としては、期待以上の出来でとても楽しめましたね。本校系の評価は高いですが、分校系はあまり評判が良くないようですね。けど私は両方とも面白かったと思いますよ。例えれば、健速氏はキレのある速球と多彩な変化球を投げ分け打者の目先を惑わす技巧派投手で、丸谷氏は気迫を前面に出し150Km超の速球をどんどん投げ込んでくる本格派投手といったところでしょうか(勿論、ここで言うところの技巧派・本格派という表現はあくまで美少女ゲームのシナリオライターとして、という意味ですが)。


 本校系について。健速氏のシナリオは初めてだったのですが「巧い」と感じましたね。殿子シナリオなんかを見ても、あのまま組み立てた飛行機を飛ばしてしまってもシナリオとしては無難に纏まるんですが、敢えて「飛行機落下→司が泳げるようになっている描写→エピローグ」と展開させたところにこの人の力量を感じました。さらに感心したのは、エピローグで『Fly me to the moon』に掛けて『in other words・・・あなたを愛しています』と締め括ったときには思わずニヤリとしてしまいました。殿子シナリオのメインテーマを的確に描き、かつ、いかにも殿子のしそうな表現で昇華した最高に綺麗な終わらせ方でした。他のシナリオに比べればあっさりしているのは確かですが、私は本校系では殿子シナリオが一番好きでしたね。

 分校系について。印象に残っているのはやはり邑那ですね。丸谷氏の気迫が感じられて読んでて面白かったです。「複眼的な視点を持たねば真実は見えない」というのは常々意識していることなのでシナリオ自体は驚くものではないのですが、別々の角度から光を当てて浮かび上がってきたものをそれぞれきっちりと描写していたのでとても面白く読ませてもらいました。満足感が多く得られたシナリオでした。

 滝沢司について。踏み止まるべき場面を知っているという点で分校系の滝沢司の方が素敵です。邑那シナリオの最後で源八郎が言うように滝沢司という人間は「とある事」をしてやれば簡単に狂ってしまう人間であり、もしリーダに引っ叩かれるような本校系の滝沢司なら源八郎に噛み殺されていたでしょうね。


 何にせよ期待以上の出来で大変満足しました。PULLTOPさんは恐らくそろそろ過去作の分とあわせてFDを出すと思うので、少々希望を。
 リーダと鏡花のifシナリオを強く希望します。この二人はとても魅力的だったし、この二人なら本編のイメージを壊さずにシナリオを書けると思うので。できればリーダは健速氏で鏡花は丸谷氏がいいな。あと、アフターストーリーとして、栖香とひたすらいちゃつくアフターシナリオと、コミカルさを前面に出した美綺とみやびのアフターシナリオを希望します。梓乃・殿子・邑那の三人は本編との兼ね合いでアフターシナリオはちょっと難しいかな。希望が叶わなかったとしても『ゆのはな』も好きだったしFD出れば買っちゃうのかなぁ。