当たり前だけど、あまりにも当たり前すぎて忘れてしまいがちなことを思い出させてくれる良ノベルでした。友情は百合ではない派なので、百合作品ではありません。
選択の自由があること、自由を享受するには自ら選択したことへの責任が伴うことはとっても当たり前で、だけど日常生活では思った通りに行かないことも多くて忘れてしまいがちなことを綺麗に語ってくれたので結構好きな作品です。
ただ、例えば海外に移住したい人に今すぐ海外に移住する選択肢があったとしても、仕事が中途半端だったり養わなければいけない家族がいたりと、過去の自由な選択の末に生まれた責任が重石となって海外に移住できないこともあるだろう。自由な選択には責任が伴って、その責任は時に不自由をもたらすから、大人になればなるほど自由なことだけでなく不自由なことも増えるはずだ。
なので、大人になることが選択肢に直面した際に流されてしまうある種の諦念からの脱却と描いたのは少々青い価値観だとは思うけれど、傷ついて視野が狭まった少女たちの止まり木としてやりがいと優しい環境を揃えた小規模の社会を用意するという舞台設定はそれなりに現実的でよかったと思います。人は必要とされて、呼びかけられて、見つけてもらえて、ようやく自分の世界を認識できるのだから。
選択の末にたどり着く場所は自己責任であることや、逃げることも責任を放り出すことも自由だがそれなりの代償をいつか自身が支払う必要があることを、これからも見失わないように生きていきたいです。