概して鍵らしさを損なわないままに、描かれがちな価値観を一段現実的な目線で語った作品じゃないかなと思います。とても面白かったです。
"根源的で理屈の伴わない感情(人間になりたい、親から子への無条件の愛情など)は単なる本能で、本能に対して理屈を後付できてこそ人である。"というのはとても馴染む価値観で、親から子へ、人から人へ繋ぐ、心のような、魂のような、生き方のような。言語化は難しいが大切なナニカを、無条件の華美な綺麗事で語らずに、泥臭い交流の果てに選んだ利己的な感情として描いた点がとても良かったです。
複雑な設定の導入や人間性、行動原理を丁寧かつ明瞭に描いたロミオの筆力や物語的な面白さはあえて語るまでもないと思うので割愛しますが、けっしてテーマや物語に付随する価値観だけが良かったわけではなく、気づきや変化に至るまでの過程を、短いながらも十二分に伝えてくれたからこそ沁みたのだということは言っておかなくてはならないなぁと思います。
付記
ところで、鍵らしさとは言いましたが、言ってること自体は家族計画のときから大きく変わらないんじゃないかなという気がするので、そういう意味ではきちんとロミオらしくもある作品ではないでしょうか。(ロミオ無識者ですが)