前作が期待した程の内容ではなく、正直イマイチだったので今まで食指が動かなかったのですが・・・。ところが「前作は何だったの?前振りだったの?」ていう具合に、良い意味で期待を裏切られた作品でした。
いろいろ書きたい事はありますが、とりあえず最後の最後までプレイすれば確実に満足できる作品ではあると言えます。
また個人的に特筆しておきたいのは、エンディングの多さです。
システムはほぼ前作から継承されていて、このエンディングの多さも同様だったのですが、正直前回においては無用の長物という気がしてなりませんでした。
その理由として、
・前作ではヒロインごとの展開が似通っていて、一見EDの数が多くとも、実際のバリエーションは少ないように感じた。
・ヒロインの設定にあまり魅力を感じず、「実質せりなと晶子の2人で充分、後は付け足し」というように思え、よって他のキャラのEDに感傷させるものがあまりなかった。
等が挙げられます。
しかし本作ではその欠点が大きく改善されています。
前作のヒロイン達は必ず晶子と対比されてしまうので、展開に幅が無かったのですが、今回はその制約がないのでヒロイン達が生き生きしてるように感じられました。
加えて、主人公の性格が前作とはまるっきり反転してることが、余計にそう感じさせるのかもしれません。
そしてヒロインがストーリ上キチンと動いていると、当然感情移入しやすくなり、物語にも入り込みやすくなる、という効果が発揮されます。
それらがあって初めてEDの多さが生きてくるのであります。
ヒロインが動いていないゲームではいくらEDが多くてもあまり意味はないでしょう。
さて、当然EDというのは様々な選択の末、到達するものですが、ゲームが他の小説や映画に優っている点は、この「自分で選択した行動に応じた結果を受け取れる」という能動的な点にこそあるのではないかと思います。
そして本作は、その点で極めて優れていると言えます。
主人公の選択に対し、納得できる自然な展開でエンディングに行くというのはフラグ管理上、意外に難しいもので、もし矛盾している表現があればそれだけで興醒めしてしまいます。
しかし本作ではそういう所が一切無く、逆に26ものエンディングのほとんどが自分が選択した事に対し納得できる結末になっています。
その内容は各ヒロインごとに3~4個程EDがありますが、その中でもあきらや由実子のBADエンドは素晴らしいです。
これらのBADエンドには現実のままならさ、正しいものな何なのかはわかっているのに、それが出来ない、抑えることのできない負の感情、といった人間心理がうまく表現されていると思います。
もしハッピーエンドしかなければ、あまりに御都合主義過ぎて、物語に深みが生まれなかったのではないでしょうか。
やはり汁粉に塩を一つまみいれる事でより甘味が増すように(byミスター味っ子)、バッドエンドをしっかりと描くことで、よりハッピーエンド、ひいてはラストのトゥルーエンドで感動させられるのではないかなぁと思います。