オムニバス形式のデジタルノベル。シナリオ・音楽のバランスが良い。
ひとつのシナリオにひとりの主人公・ヒロインという、オムニバス形式の作品。
それぞれの話は比較的短いので、短編集といったところです。
各章のライターが異なるわりに、粒が揃っていたと思います。
「一生に一度のお願い」と「お試しのお願い」がこのゲームのベースであり、
それぞれのシナリオはその上に組み立てられています。
１章は、ゲームの導入だけあって、前半ちょっと説明的過ぎる感じがしましたが、
後半になると純粋にシナリオを楽しむことが出来ました。
主人公がヒロインに惹かれていく過程が良く表現されていたと思います。
そういえば唯一主人公が「対象者」のシナリオでした。。
２章は、最近流行り気味の「ループ」物でした。ループ物はシリアスなものが多いた
め、この章のようなコメディ一色のものは新鮮でした。
展開は王道一直線の幼馴染物で、最初はお願いシステムの必然性が感じられなかった
のですが、エピローグを読んで納得できました。「その後」がしっかり書かれていた
のは好印象でした。
どうにもこの章は不評気味なのですが、私は一番良かったと感じました。
３章は、主人公とヒロインそれぞれの成長物語です。話の構成自体には問題が無いの
ですが、「泣かせるぞ」という意図が見え見えで、あざとい感じがしました。
結末はバッドエンドとは言えないのかも知れませんが、納得できない方も多いかも
知れません。深く考えると救いのないシナリオに感じてきてしまうので、余韻の消え
ないうちに次のシナリオへ移ったほうが良いかも知れません。
４章も主人公とヒロインそれぞれの成長物語です。挫折を味わった主人公と、一歩が
踏み出せないヒロインが少しずつ変わっていく様子が見所です。
結末もスッキリと後味が良く、最終シナリオにぴったりでした。
残念だったのは、各章とも主人公の個性がちょっと薄いことでしょうか。
もう少し色がついていても良かったような気がします。
シナリオ以外については、プレイ前はかなり幼そうな絵柄でちょっと抵抗を感じたの
ですが、プレイしているうちに気にならなくなりました。
また、音楽はシーンにマッチしていましたし、主題歌はかなり高水準でかなり満足です。
全体的にバランスが良く、「買って良かった」と思わせる出来でした。