レミニセンス完結によせて…(肯定的見解)
今作も衣笠先生らしさ全開、途中までのシナリオ・テキスト・キャラクターなど全てが素晴らしかったがご存知のとおり、結があまりにも投げっぱなしになっている。
前作からの伏線しかり、問題の解決方法しかりである。
何故ここまで読み込ませるシナリオを途中まで書けるのに結をここまでいい加減なものにしてしまうのか、一ユーザーにすぎない私には理解できないものである。
だがしかし、暁の護衛から徹底してこのスタイルを通している。これには製作スケジュールの問題などとは違った、何か重要な意味はあるのではないかと考え今作に臨んだところ私なりの答えを得た。
それは<その世界観の中における徹底的なまでの現実性の追求>である。そう考えた理由を二つあげていく。
まず一つ目は、読み手に対してはやや不親切とも言えるような同時進行で事件解決が行われる点だ。
今作においては大きな事件として「技術者の流出」と「大和との交渉」の二つが、その他にも「新人特務官の教育」や「片桐食糧プラント」などが扱われる。
これらの事件は一つ一つ章立てされたような形ではなく場面場面で入れ替わり、相互に作用しながら話が進んでいる。
他の作品においては、「G線上の魔王」などが良い例であるが一つのエンディングに向けて、ヒロインごとの話が章立てて進んでいく。
実際このような展開の方が謎が一つ一つ明らかになっていくために読みやすく、序盤からの伏線が回収されていく爽快感とともに話に引き込まれていくだろう。
しかし、今作においては私たちの現実同様、事件がその前の事件解決を待たず、次から次へと起こる。秀隆の事情など関係なしにだ。
月日を明確に表記する作品は多いが、その表記がここまで現実感を感じさせる効果を基盤においた作品はこれ以外にないと私は考える。
そして二つ目は、前作においてばら撒かれた伏線や謎を全く回収せずに終えている一方、秀隆や恭一自身の知りうる範囲の伏線や過去、事件解決のための問題点は徹底的に表されている点である。
特に恋のアフターストーリーなどがいい例であるが、大河内代表から渡されたデータを恭一自身は全く見ずに捨てている上に、本人が自分の記憶が思い出せないのではなく、なくなっているという認識をしている。普通のフィクションであれば都合よく思い出すキッカケがあったり、記録が残っていたりするのだろうが、本来現実の社会においてそのような事が起こるのは大変珍しいことである。
そのような事が起こるから物語として成立するのではないか、という意見も当然あるだろう。
しかし、これこそが現実性の追求の一要素であり、伏線や謎が分からないままというのは至極当然のことではないだろうか。
以上のことから、<その世界観の中における徹底的なまでの現実性の追求>を元にこの作品のラストを見ると、この作品は素晴らしい完成度を持っていると私は感じる。
よく小説などで「キャラが勝手に動き出す」というが、この作品においてはまさしくそれであろう。恭一のデータ消去しかり、和葉の独断専行しかりである。キャラが最後までぶれない、ぶれたように感じるのは成長あるいは私自身の認識不足によるものなのだろう。
作品を読み進める中で非常に鬱陶しく感じる東野特務官を筆頭とする秀隆いびりも当然起こるものであり、「技術者の流出」事件の解決後に見せる秀隆への態度の変化も納得出来るものであった。(立ち絵希望!)
そして、よく問題に挙がる結の投げやり感もこの考えから見ると納得出来るものだ。
ここで和葉ルートにおけるユウキの言葉を借りよう。
「そりゃそうだよなぁ。ゲームなら最後は主人公がズバッと解決して終わりだけど、実際上手く行くことの方が稀って言うか」
これはこの作品の根幹にもあたる言葉だろう。「暁の護衛」では海斗の圧倒的なまでの実力、「レミセンス」においては天才の秀隆という彼ら自身の能力で出来る最大の範囲で問題を解決した結果があのエンディングなのだ。
今作においては和葉ルートの和葉救出成功するも戦争は回避できず、涼風ルートの藤堂の毒殺という結果になる。これから言えるように完全なまでの大団円は現実的には難しいものであり、これらの結末の後も彼らの人生というものが間違いなく続いていくことを当然の前提として積極的に描ききったと言えるのではないだろうか。
今後とも衣笠先生の作品には期待していきたい。
さて、真面目に書いてきたがここ以降は完全に蛇足。私の独善がさらに強まった感想である。
まず、
和葉社長マジかわいい。
っていうか今後の物語以降、話を続けるんであれば倉屋敷もジオフロートもあった方が面白くなるんだろうから、このルートを正史にしちゃっていいんじゃない?「暁の護衛」じゃ「レミニセンス」に繋がる正史と呼べるようなルートはなかったわけだが。
っていうか胸元の星ってどういう意味があったんだっけ?
衣笠先生の作品で一番かわいい。というか、自分の中のヒロインベスト3に余裕でランクイン。
キツイ性格やら何やら全部含めてメッチャタイプ!
そして何気に秀隆もカッコいいね。
「守る」というとどうしても「身を挺して」とか考えてしまうが、それは交渉における「最終手段としての暴力・武力」と同じで最終手段、それしか使えないのはかえって格好悪いと私は思う。
そんな中、秀隆は涼風ルートの拷問における意志の固さから見て取れる暴力に対する身構えを持った上で、平和的交渉の段階で絶対に被害が及ばないように行動している上に、それを実現可能とする交渉力・頭脳を持ち合わせている。
こういう主人公は本当にいいと思う。
女性勢はいうに及ばず、裕輔、ユウキ、磯部といった友達男性勢も「いいやつだなぁ」とプレイ中何度も思わせられて、非常に楽しくプレイできた。
一人一人の登場人物がしっかり描かれていて、これでレミニセンス完結というのはとても名残惜しいものだが、それと同時に彼ら彼女らの人生は続いていくということを心より感じられる作品だった。
「なら喜んで教えてやるよ。あたしは――――――大嫌いなんだよ。バーカ」
ああ、このEND、最ッ高!!!