プレイ順:(共通→)美羽→柚希→穂香→くるみ→ひな→椿。評点:椿>くるみ≧ひな>穂香>(越えられない壁)>美羽=柚希(=共通)。共通→美羽→柚希の段階でギブしそうになり、その後は一気にコンプ。
0、各ルート個別評点
共 通:40
美 羽:50
柚 希:40
くるみ:75
ひ な:70
穂 香:70
椿 :85
椿ルートは、ルートロックがあり、またタイトルの‘なでしこドリップ’という単語が出てくることから本筋は椿ルートと考え、椿ルートの点数を作品の評価とした。
1、キャラクターについて
A、主人公
軟派ではないと言いつつ無駄に「可愛い」を連発するほどに硬派で、公私を混同して仕事でミスを繰り返すくらいに優秀で、営業時間中にヒロインとイチャイチャするくらいに真面目で、場所も時間も状況も弁えずに盛るくらいに理性的な主人公にはとても癒された。画面を殴りたくなるくらいに癒された。
個別ルート中盤まで主人公が‘大人っぽい’という設定の割にイマイチで、それなのにモテモテという状況が非常に心証悪い。特に共通ルートでは、騒ぎが大きくなるまで関与しようとせず大きくなったら解決するというマッチポンプ的展開が見られる。これを見せ場とされても素直には受け入れがたい。個別ルートの中盤を過ぎればマトモになる。
B、ヒロイン
TPOを弁えず迫る従妹、情緒不安定な幼馴染みには本当にええ、ええ。
一方、双子と穂香は癒しキャラ。椿も案外良キャラ。
2、各ルート(の主に不満)について
A、共通ルート
営業時間前や営業時間後ではなく、営業時間中にばかり話をしているのは何なの?就業前のミーティングとか就業後の反省会とかしないの?しろよ。
『主人公「こら美羽、ぼやく暇があるなら頭下げろ。お前がここの責任者だろう」』
下げ・・・・・・ろ?――下げるぞとか、下げようとかではなくて下げ‘ろ’?
責任者が率先して頭を下げるのは当然として(それが出来ない美羽の印象が最悪なのはさて置き)、関係者である以上謝罪する立場であるし、年長者として範を示すべき。その後謝罪してはいるものの言葉があまりにも悪すぎる。
7月25日の柚希を店から追い出すシーンもなんとかならないのか。主人公の言葉を見ると、柚希は文句を言いつつも貧乏クジを引いて人の世話ばかりする性格をしていると理解しているのだから、それを懸念したと描写すれば良いのに全くない。これ以上は甘えられないから店の外にポイというのは展開としてどうなのだ。
学生だけで飲食物を提供する店を経営するのは問題ありすぎ。食中毒とかあったときに誰が責任取るのだ。対外的なことを考えて店長は飽くまで祖母がなるべきで、美羽の立場は店長代理とかがいいところ。学校の許可を貰うための責任者が学生である主人公という謎の展開・・・・・・さすがにオーナーである祖母が責任者として許可を貰いに行け。
スイカ割りイベントの時
『美羽「ひょっとしてあたし、ちょっとやりすぎちゃった・・・・・・?」
主人公「はぁ・・・・・・今頃気付くなよ、美羽。そりゃあいくら柚希でも驚いて・・・・・・」
(中略)
主人公「美羽のいたずらには困ったものだけど・・・・・・まぁいつものことだし、お遊びだから許してやってくれ」』
止められる立場にいながら満足に止めもしなかったお前もイタズラに加担していると同義である。この言葉ではイタズラの責任を全部美羽の所為にしている。お前自身の謝罪はどうした?
アンケートを取ったのに何故か営業時間終了後に確認しようとせず、翌日営業時間中に内容を確認するキャラ達。そして営業時間中に急にデザートを作ろうと言い出し、呼び込み・接客をそっちのけで試作品を作り出す。しかも当日来店した客に、その場でざっくり計算して売り出して利益率の悪い値段設定をしてしまう大失態を犯す始末。
さらに言えば、試作品の筈なのに美羽と柚希の2人が1種類ずつつくり計2種類しかない。試作品なのだからもっと種類を作りそこから絞り込むものが普通であろう。趣味でやるなら作ってみて旨いかどうか見ればいいだけかもしれない。しかし商売としてやる以上、味だけでなく手間・生産性そして何より利益率を考慮する必要がある。それらを一切考慮していない。
『美羽「よし、決めたっ。明日の夜、肝試ししよう!」
うららかな昼下がりの、食事休憩が終わった頃。いきなり、店長が業務とは全く関係のないことを言い始めた。』
だから仕事しろ。営業時間中の私語は慎め。
『主人公(柚希が自分の意見を強調する時は、たいてい裏にもう一つの理由がある)』
柚希のことは良く理解しているみたいなドヤ顔すら目に浮かびそうな発言だけど好意には気づいてないんですかそうですか。しかも柚希は‘この街には観光に来たのよっ’みたいに自分の意見をとても強調している箇所が多々ありましたけどそれとの齟齬は考えちゃいけませんかそうですか。
(正確には各個別ルートに入ってからだが)祭りの準備が2日前か前日からという展開の唐突さは修正するべきだった。数日で用意なんて出来るわけがない。
B、美羽ルート
営業時間終了直後にデート。店長とキッチンチーフが、(賃金を確約していない)平定員に閉店作業を丸投げ。事前に承諾を得るなどもせず、‘任せた’の一言で返事も待たない。完全に厚意に胡座を掻いている。非常に不愉快である。しかも、その当日の夜における柚希の台詞に、『柚希「二人もちゃんとお店のお仕事してますし文句を言うところは見当たらないんですけど」』とある。おいおい君は今日の出来事も覚えていないのか?閉店作業を君達に丸投げしていただろう。
曽祖父が使っていたミルをどうしようかという段階で、権堂に修理を依頼することを思いつかない恩知らずで白痴な主人公には脱帽。蓄音機の件で権堂にどれだけ世話になったと思っている。その恩をもう忘れたのか?思いついたけれども手を煩わせるのは気が引けるので提案しないのと全く思いつかなかったのでは現れる行動は同じでも、その中身は天地の差がある。
曽祖父母のためにも店を繁盛させたい、彼らの想い出の遺品を使いたい、遺志を継ぎたいという展開は(多少オリジナリティには欠けるが)比較的良かった。しかし上記のように不満を抱く点が数多くあり、読後感は爽やかとは到底言えず、むしろ後味が悪いという印象。
C、柚希ルート
みなの厚意で貰った2時間の特別休憩で初体験を野外で済ますのはどうかと・・・・・・
『美羽「・・・・・・うぅぅ、カウンターの中でキスだなんてそれってバカップルって言うんじゃないかなぁ」
美羽「しかも、こっちから見れない角度でちゅっちゅしてるつもりだろうけど、全然隠れてないし」
美羽「あぅ~~~!凛々しいお兄ちゃんがどっかに行っちゃったよ~!」』
共通~柚希ルートの間に凛々しい兄なんて最初からいなかった。
それにしても個別ルートに入ってからの柚希は脳と口が直結でもしているのか?物語序盤では括弧書きで頭の中の声として描写されていたのに、ルートに入ると思考が全部口から漏れている。
物語冒頭では口から漏れないから主人公に気づかれず分岐に影響せず、ルートに入ったら天然で主人公を誘惑する便利な設定になっている。ライター様の浅ましい魂胆が透けて見える。
D、くるみルート
罰として倉庫に軟禁されたのに倉庫内でコトに及ぶ点(しかも初体験)と、権堂への挨拶の予行演習において主人公が『最初に告白されたのは俺の方で、むしろ押し倒されたのは俺のほうだったりもしますし』と大失言をやらかした点以外は良く出来ていた。前者に関しては二人を揃って同じ場所に閉じ込めた美羽側の失態、後者に関しては主人公がその後にきちんと反省した事実を鑑みれば、致命的なミスとも言い難く、個別ルート後半の出来自体は良いので全体的には良作と言えよう。
E、ひなルート
色々と展開がアレなのを除けばまあまあ。展開がアレなのもひなの焦りと考えれば看過可能。
ただし1箇所、重要なシーンにおいて凡ミスがある。
『主人公「・・・・・・もう一度、聞こうかな」
主人公「ひな、この後、どうしたい?」
ひな「・・・・・・え・・・・・・?」
敢えてその時、俺は彼女のことをそう呼んだ。
俺と同じで、変わらないといけない。そう思ったから。
(中略)
主人公「現に今、一本の電話だけで、ひなちゃんは泣きそうなくらいに動揺しているだろ」』
ひなと呼ぶと決意した直後にひなちゃんになっている。
F、穂香ルート
特に大きな不満点は見当たらなかった。全体として綺麗にまとまっており、良作と言っても差し支えないだろう。ただ逆に小さく綺麗に纏まっている印象で名作には程遠い。
G、椿ルート
本作で一番良いルート。細々とした不満点等はあるものの、充分に面白かった。ラストをご都合主義と嫌悪する人もいるだろうが、伏線は充分張られていた。またそこに至るまで主人公も椿も精一杯悩み苦しみ‘成長’している。