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boboboboさんのひこうき雲の向こう側の長文感想

ユーザー
bobobobo
ゲーム
ひこうき雲の向こう側
ブランド
FLAT
得点
85
参照数
1911

一言コメント

体験版のみでそれ以外の情報をシャットアウトした結果、一番最初にプレイしたのは瑛莉ルート。失敗した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

メイン攻略キャラは瑛莉・美奈・いろはの三人。
三人クリア後おまけで里沙、美奈ルートの派生で綾。
里沙・綾共にエロは一回です。

瑛莉→美奈→いろは→里沙→綾の順番でクリア。やっちまった感満載なんですが。
多分、美奈→綾→いろは→瑛莉→里沙の順番が良かったんじゃないかと感じます。
体験版の最後の方くらいにこれは瑛莉の物語なんだみたいな事が書いてありましたが、全く持ってその通り。
エピローグの力の入れ具合が全く違う。
正直、感動とかは全くありませんでしたけど、瑛莉エンドを見た時、胸が締め付けられました。
理想の日常って感じがとても伝わり、言葉にできない何かで胸がいっぱいになりました。じわじわ来る余韻が半端無いです。
そんな状態の中で他のキャラを攻略したもんだから、損した気分になったのは言うまでも無く。
物語に入り込めましたけど、エピローグで拍子抜けしてしまったのですね。

瑛莉本気出しすぎでしょこれ。
・・・失敗したなぁ。


ってことでルート毎のモロバレ感想になります。


美奈ルート
痛いほど主人公の気持ちがよく分かりました。
女の子として恋してるのに、妹として愛さなきゃいけない。
共通からの流れのままなので非常に主人公に感情移入出来ました。
初めて人を好きになり、告白しようとした瞬間、相手が妹になる。
これは・・・胸が痛すぎる。この感情のまま本ルートを読んでいたので、リンク率が凄まじい。
あまりにも感情移入しすぎて、美奈の純粋な心(子供な部分)や親友の事が嫌いになりかけた。
美奈にとって理想の兄として祝ってあげなきゃいけない(カッコつけな)気持ち。男として好きな女の子を取られた気持ち。
その葛藤よく分かる。こうするのを美奈が望んでるからみたいな事を勝手に思い、独りよがりで自己完結させようとする姿。
視野が狭くなり、以前と変わらない美奈の純粋な気持ちが憎らしくなるってのがうまい具合に表現出来てたと思います。
それから里沙に諭されて、親友と美奈、そして瑛莉に向かう場面は良かったと感じます。
ただ、こちらのルートは思わせぶりが酷い事と最後が中途半端になった事がちょっとなと。
種明かしを見た時、拍子抜けどころの騒ぎじゃなかった。
主人公・美奈・親友の三人の事を考えればこれで良かったと思うんだけど、なんかもにょった。
それに、最後は恋人になった事を結局親には内緒て。
うーん もうちょっと突っ込んだ形にして欲しかったってのが本音。


綾ルート
こちらは短いながら美奈の派生としては良く出来てたと感じます。
勘違いとはいえ、恋した妹に恋人が出来た。
気分はどん詰まりMAX状態な時に誰かに優しくされ、傍に居られればそりゃ恋に落ちますよね。しかも可愛いんですから。
逃げの恋と言われればそうですが、あるあるとか思って読んでました。


いろはルート
いろは天使すぎじゃないですか。慈愛の女神です。彼女の半分は包み込む優しさで出来ています。
きっかけがキスが気持ち良くてっていう、身体から始まる恋ってのがうまく表現出来ていたなと。
好きじゃないけど、二人きりになるとエロい事をしたくなる。
好きじゃないけど、いろはの事を色々知りたくなる。
好きじゃないけど、いろはと居たいみたいな感じが最高だった。
それって・・・とか。
何ていいますか、恋愛って結構即物的なんよって言われてるみたいでした。
ただ、このルートの構成が個人的に合わなかったです。
それは、綾のいじめの事ですね。
いろはとイチャイチャした後の場面で、綾がいじめられている場面を見せてくる。
正直、綾の事が気になって素直に楽しめなかった。
それに主人公・妹は綾の様子がおかしい事に気づいていたのに、自分から言わないから大丈夫みたいな感じ。
すげーモヤっとする。
主人公はいろはの事で頭が一杯だったんだろうなと想像できましたし、いろはの魅力を惹きたたせる解決方法だったのは理解出来るんですけどね。
でも、すげーモヤっとする。
体育館で主人公がキレた時、お前にキレる資格はねぇよ?とは思いました。


瑛莉ルート
素晴らしい。その一言に尽きます。
ストーリーが彼女の為に進行している感じ。
日常描写から部活解散、そこからの告白。
そして、あのエピローグ。日常系の最強形態じゃないっすか。今でもBGMとCGを順番に眺めるだけで胸一杯になりますね。
まぁ部活解散の件はちょっと簡単に解決しすぎとも思いました。
けど、そこを描きたかった訳では無く、他人の恋愛を覗き見る事が如何に下種な行為なのかを瑛莉に自覚させるって部分を見せたかったのかなと思ったので、まぁいいかなと。

また、僕は最初にこのルートをプレイしたので自然だなと感じましたが、いろはルートを読んだ時、ちょっと感想が変わりました。
それは身体からの関係に嫌悪していた部分。
最初から主人公に若干惹かれているっぽい感じだったですけど、決定的なのってキスとかおっぱいモミモミじゃなかったの?
僕はそう思っていたので、何か面白いな~って思いました。
始まりはどんな事でも恋愛って素敵だなって感じてしまった。


里沙ルート
こちらは思ったことは唯一つ。
共通から個別まで瑛莉がドヤ顔連発してたのはこの為の伏線だったんだなと。
最後の制作人たちの最高のドヤ顔にちょっと笑った。



総括としましては、本作は僕にとって虹みたいな作品。
嫌いだって思う部分も多かったし、辛い部分も多かった。それに不快だった部分もありました。
好きな部分も多かったし、笑えた部分も多かった。それにニヤニヤしちゃう部分もありました。
プラスの感情もマイナスの感情も全てひっくるめて、本作は好きだなって思いました。
BGMもオルゴール調の「14」とピアノの「18」・「19」が優しく、非常に耳に残りとても好きでした。
かなりストレス溜まりましたし、読了後疲れちゃいましたけど、プレイ出来て良かった。
良い作品を作ってくれてありがとうございました。


ただ、バグ。てめーはダメだ。
シーン切り替えでの背景がおかしいとかBGM・ボイスが消えたりとかテキストの文字色が変わるとか・・・。
いや、本当に何とかしてください。結構な頻度で感情移入を阻害されたんですけど。

それに、里沙のシーン飛ばされてる?
共通ルートの終盤、観測部と美奈で例の丘でのBBQシーン。
なんかここで里沙と何かあったぽい事書いてありましけど、そんなのあったっけ?
ちょっと訳が分からなかったんですが。
それとも読み飛ばしたのかな・・・。