今作は、いわゆる「純愛ゲー」に私が「こういうのが見たい」「こういうのが欲しい」と求めていたものがこれでもかと詰まっていた、ある種の理想系のような作品でした。 そのため、プレイしていて非常に楽しかったし、とても幸せな気持ちでいられた。
純愛ゲーとして全体的に高い完成度を誇る今作だが、その中でも特に以下4点は「これが見れてうれしい」「ここが見れて良かった」と思えた点であり、これらの点をちゃんとやってくれたことに関して非常に感動した部分である。
1.順に段階を進めていく過程の丁寧な描写
物語が開始してから知り合い(真里花は再開ですが)、そこから友人→気になる相手→好きな人→恋人→夫婦と1つ1つ順番に段階を進んでいく流れが丁寧に描写されており、主人公やヒロインの心の動きなどがじっくり感じられた。
また、ここで活きてくるのが、プロローグ=共通部であるというところ。OPのあとはすぐにSchool編の個別に入るため、ルートヒロインとの展開がそれぞれで描かれておりそのヒロインに向き合いやすく、真っ直ぐ気持ちを向けやすいのも良かったと思う。
2.えっちシーンのイチャラブとしての要素
当然エロゲなのでえっちシーンも重要である。今作では、昨今えっちシーンの濃さばかりが意識されているように感じるなか、「えっちシーンに求めてるのはそれだけじゃないんだ」と思っていた私のちょっとした想いにまで応えてくれました。
別にえっちシーンが濃いのが悪いわけではないし、それはそれで一つのプラス要素に働くことも全然ありうる。しかし、こと「純愛ゲー」に関しては、それ以上に「主人公とヒロインが心をより強く通わせる」という要素も重要であると考える。
その点において「初えっちでは必ずコンドーム完備」や「ピロートークの充実」といった部分はうまく機能していたように思う。中でもコンドーム描写、特に初えっちでのそれは非常に素晴らしかったと思います。
「初めてはゴムとしたいんじゃない」などという戯言を抜かしてえっちをするようなエロゲもあるようですが、本当に相手のことを想うのならばちゃんとコンドームは使って欲しいなというのが本音である。
よくエロゲにおいてスルーされることの多い、「ゴム無しでえっちして妊娠する可能性が」という点に今作では向き合ってくれたところも良かった(と言ってもそこまでしっかりとというわけでもなかったが)。
そこから快感を覚え、収まりが付かない/我慢ができずに生でという流れも上記で書いた「段階を進める」1つとも言えるのかもしれない。
3.主人公とヒロインの2人が一緒であることが当たり前の日常描写
よくエロゲにおいては個別シナリオに入ったのち、おおまかにヒロインと付き合う→2人の仲をより深めるための山場→EDという流れが多いように感じる。だが私としては、その後にこそあるであろう「主人公とヒロインの2人が共に当たり前に在る日常」をもっと見たいと思うのだ。
いわゆるFDによるアフターストーリーのイチャイチャパートのようなものが近いだろうか。 あちらはえっちメインになりすぎているように感じることもあるのだが。
今作ではschool編にて2人の仲を深める山場を入れ、その後のAfter編にて共に在ることが当たり前になった2人の日常が描かれており、「これだ!これが欲しかったんだ!」という思いでプレイすることができ、非常に楽しかったです。
4.結婚
結婚とは、いわゆる「恋愛の終着点」ではないかと思う。恋人として共に「特別」な日々を過ごしてきた2人が1つの家族という形になり共に過ごすことが「当たり前」となる。これは本当に素晴らしいことではないかと思うのだ。
「結婚は人生の墓場だ」などといった言葉もある。これは主にマイナス的に捉え結婚は人生を終わらせ墓場に入るようなものだといったような意味で使われているが、これはただの誤訳であるとされる。元になった言葉はボードレール(悪の華などが有名でしょうか)の、当時蔓延していた梅毒に対しての警告として「墓場のある教会で、身体を清めてから結婚しなさい。」といった言葉であり、それが誤訳されていった結果今のようなことになったとされる。
もちろん、今現在使われているような意味となるようなこともありうるだろう。が、それに関してはお互いに愛し、愛されていることを自覚し、さらに愛される努力をすることで回避できるのであろう。(本編より改変引用)
細かい点を挙げれば他にもあるが、主に以上4点が特に「ここが見れて良かった」と思えた点である。
また、「ここが見れて良かった」点とは少々異なるが、「各ヒロインごとにそれぞれED曲が用意されている」のも私は好きでした。
OPも含め全ての楽曲の作詞がライター陣によるものであり、歌詞とヒロインやその物語とのマッチング具合は非常に素晴らしく、1つの区切りとしてもとても気持ちよく終わらせてくれたのでプレイ後の読了感も良かったです。
ここまで見事に「純愛」というものを高い総合的完成度で描いてくれたことに最大級の感謝と敬意を。
また再びこのような素晴らしい作品と出会えることを願って。