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ban_07さんの-atled- everlasting songの長文感想

ユーザー
ban_07
ゲーム
-atled- everlasting song
ブランド
FLAT
得点
100
参照数
2731

一言コメント

絆と成長 すれ違いと和解 そして希望 私にとって人生のバイブルたる作品です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

パソパラに付録としてついてきた3本を1つにまとめた同人版(以下まとめ版と表記)をプレイ済みだったのだが、当時書ききることの出来なかった部分を最後までしっかり描ききると言われとても期待していた今作。
まとめ版だけでも素晴らしい作品でしたがそれがあくまで1章部分にすぎず、4章+αまであると言われては期待せずにはいられませんでしたが、同時に、まとめ版できれいにまとまっていた分蛇足なようにならないか不安な部分もありました。
ですが、その出来は自分の期待以上のものでした。
1~3章は伏線を張りつつあおば、麻智、逢留の各キャラにスポットを当てた内容、そして4章にてそれまで回収されなかった伏線の回収とまとめといった展開
様々な登場人物の視点で物語の進む群像劇タイプですが、視点となるキャラの数も多く時系列も移り変わるのでそこの把握が慣れないと大変かと。
テキストは会話文とモノローグを中心に地の文はやや少なめ 会話文もモノローグの自然な流れでテンポも良かったので読みやすいと思う。
音楽はBGM、ボーカル曲共に良質なものが多く曲数自体も多め 作品の雰囲気にうまく合ってたと思う。

・1章
基本的にはまとめ版とほぼ変わらず。
過去に戻ったあおばを中心とした話。
あおばと触れ合いながら晃司や希さんの考えや想いが徐々に変わっていくところは好きですね。
晃司や希さんもすごくいいキャラですが、一見ヘタレに見えつつも芯の部分でぶれない信一さんがすごく好きです。
信一さんと希さんのキスシーンの構図はなぜ変わってしまったのか… そこが正直残念だなぁと。
まとめ版のときから好きだった「good times bad times」のたみーver.が聞けたのでほぼ満足ですが。

・2章
カエラから「都市伝説として噂されている本」として本とそれに挟まれていた過去に戻る儀式のやり方の書かれたメモを渡された麻智と逢留が過去に戻る話。
母に会いたいという想いで過去の世界を歩き回る麻智たちだが、そこである事件に巻き込まれてしまい自身の弱さと罪悪感から禁忌を犯し麻智は消えてしまう。
そんな場面でかかる挿入歌の「to me...」がすごくいい曲でした。
この章は麻智役のかわしまりのさんの名演と以降の章につながる伏線がとても印象的でした。

・3章
麻智が都市伝説として噂の本を持っているのを見かけた逢留が本を借り過去へ戻る話。
この章は他の章よりも全体的に話は重く、逢留の知らなかった現実を目の当たりにしていく。
自分の知らなかった現実を知り、そしてそれまでの自分を反省し逢留が成長していくのはすごく胸が苦しく、そして目頭が熱くなりました…。
ラストの逢留と麻智の仲直りのシーンは本当に素晴らしかったと思う。

・4章
それぞれ過去に戻ったキャラやそれに関わった人たちが徐々に集結し、これまで見えてこなかったものが見えてくる。
「世界を救う」なんて大きな話に展開していきますが、その根底にあるのは作品のテーマでもある(と思っている)絆の大切さや未来への希望。
それぞれがみんなのことを想い、みんなのために動く 当たり前のようでそうでないみんなの行動に、想いにどんどん引き込まれていきました。
終盤の麻智と栄さんのシーンは涙が止まりませんでした…。

・まとめ
-atled-という作品は、自分にとって忘れられない作品となりました。
それは、あおばと麻智と逢留の3人の関係が自分にとっての理想の1つである、お互いのことを認め、そしてお互いに必要とする関係であるとか、ENDが自分の好きな妊娠(出産)ENDであったとかももちろんあるのですが、一番の理由として、この作品をプレイして改めて絆(家族や友達)などについて考えさせられ、そして感謝し、希望を知ることができたからです。
-atled-という作品は、泣く泣かないというよりは(自分はすごい泣きましたが)、プレイ後にゆっくりと思い返して、良かったなって思える、心に残る作品だと思います。