スチルの使い方が抜群に良くて、作品の質を大きく向上させていた。ただ、シナリオ面で少し気になるところがあり、そこは残念だったかなと。次作に期待しています。
創作×青春モノであり、さっとあらすじを読んだだけでも好きな単語が並んでいた。キャストも商業作品で絶賛活躍中の声優さん達を起用しており、処女作にもかかわらず力の入れ方が凄いなとプレイ前から驚きが多かった。
主人公の大切な人を失った故に物語を書けなくなったという設定も中々そそるもので、そこからどんな選択をして、どんな物語に分岐していくのかが非常に楽しみになった。既視感のある設定ではあるものの、この時は純粋にわくわく感が勝っていた。
共通ルートは結構しっかりしていて、日常を重ねながら、己と向き合っていく主人公は読んでいて面白く感じたし、応援したくもなった。ヒロインもかなり私好みのビジュアル、性格の子が揃っていて、特に朱ちゃんは一目見た時からお気に入りだった。子犬のような性格と才能ある姉の妹という立場がとてもそそる。
で、個別ルートについてだが、まず藍ルートが残念だった。何が残念だったかというと、内容が2021年に発売された某商業作品と酷似していたからだ。まあジャンルが同じだし、そういった展開になっていくこともあるよなと、途中までは自分を納得させながら読んでいたのだが、スチルまでそっくりなものを用意してきたので、これはもう“やった”なと。ライターさんのSNSを遡ってみると、やはりその某作品をプレイしており、また大好きな作品として挙げていたので、まあ寄ってしまったのかなと。良い悪いはさておき、私は純粋に藍というヒロインのことを好いていたので、少しショックだった。
他の個別ルートに関しては少し桜の風を感じつつも、悪くないお話が用意されていたかなと。特に気に入っていた朱ちゃんは付き合うまでの流れこそ不自然だったものの、ヒロインとしてしっかりと可愛い一面が描かれていて、彼女の事をますます好きになることができた。主人公との約束をすっぽかして姉のお見舞いに行くところなんか凄く好感が持てる。また可愛いだけでなく、しっかりと画家である姉を追いかけようとし続けてくれる点も良かった。ラストの勝負もまた少し桜の風を感じたが、締め方としては悪くなかったと思う。真剣な表情でボードに向かう朱ちゃんがこれまた魅力的だ。
振り返ってみるとシナリオで少し引っかかる点はあったが、絵とヒロインは悪くなかったと思う。次作はもっとオリジナリティあふれる作品で勝負してくれると嬉しい。