話の組み方が雑で、どうしてそういった展開にしてしまったのかと天を仰ぐ機会が何度もあった。振り返ってみると賑やかな共通部分が一番楽しかったなあと思う。
時間の動かない不思議な館を舞台にした作品であり、巻き込まれるような形で館に招かれた主人公たちが脱出を目指すべく奮闘していく。
なかなかミステリアスな導入ではあったものの、共通ルートは探索をしつつ遊びつつといった感じで、そこまで話が動かない。あくまで環境に慣れる事を目的にしていた。言ってしまえばあまり変化も緊張感もない日常が映し出されていくだけなので、早く謎を解き明かしたかったり、ヒロインを攻略したい気持ちが前に出るとやや冗長に感じてしまうかなと。
ただ、終わった後に振り返ってみるとあの平和な時間こそがミーナにとっての幸せでもあったのだなぁと思う。そう考えると決して無駄ではなかったし、彼女があれだけはしゃいでいたのも納得できる。
そんな感じで共通ルートに関してはそれなりに良かったかなと思うのだが、個別ルートに関してはやや否定的な意見を述べていく事になる。個別ルートではヒロインとの距離が詰まっていくと同時に、抱えている悩みに触れることでそれが館の脱出に繋がっていく。
恋愛パートについてはそこそこ丁寧で、個別ルート派生後即えっちではない点が嬉しい。助けてもらったり、支えてもらうイベントを挟むことで主人公に恋心を抱く。その辺の進め方は比較的丁寧で良かったなと思う。中でも共通の時点で目をつけていた純麗ちゃんとのやりとりは甘酸っぱくて、素直ではないけれど段々と心を許していく純麗ちゃん大変愛らしかった。
で、各々の悩みに触れていくわけだが…意外と重いテーマを用意してきたので驚いた。中にはいじめられて自殺未遂をしていたヒロインもいて、おいおい雰囲気変わりすぎだろうと。ただまあ、重い話は嫌いではないのでどうやって解決していくのかなと少し楽しみにしながら読んでいた。
しかしながら、いざ読み進めていくとかなりパッパと話が進んでいく上に、解決方法も凄くふわふわしている。どのルートも結局、主人公が傍にいるからきっと大丈夫!みたいなオチになっていて笑ってしまった。理解のある彼氏くんがいれば万事解決なのだろうか。
そして、最も残念だったのはグランドルートであるミーナルート。あの世界の時間が止まっている理由に気付いた時は、面白くなりそうだなと思っていたのだが、一度元の世界に戻ってからの展開がまあ酷かった。
いきなりギャグのような戦いを見せられたと思ったら、結局は元凶であるナトリが気まぐれで助けてくれる。まあ主人公の行動がナトリの心を動かしたのだとは思うが、それでもそれが感動に結び付くかと言われれば答えはノーなわけで、何となくハッピーエンドになった感は否めなかった。
加えて一度元の世界に戻ってから助けに行ってハッピーエンドを迎えるまでの流れがすごくハイテンポで書かれているのも気になる。個別ルート全体に言えることだが、展開のさせ方がかなり雑。感動路線の作品なのだが、どれに対しても感動を覚えることはなかった。
かなり辛口で感想を書いてしまったが、恋愛部分については悪くなくて、純麗ちゃんなんかはかなりドンピシャなヒロインだった。しかしだからこそ、核となる部分を丁寧に仕上げてほしかったなと。惜しい作品でした。