新しい「はじめて」が増え、やがて「当たり前」へと変わっていく。特別な物語ではないが、私の望んでいた光景がぎゅっと詰まった素敵な一作だった。
恋愛特化な作品において初手告白はかなり珍しいなと、始まり方を見て驚きとちょっとした不安が生まれたが、その先に待ち受けている物語はまさしく恋愛物語であった。特別なイベントなんてない、自然な恋愛風景をただひたすらに重ねていく。その丁寧さな運び方にとても好感を覚えた。
まず大前提として、ヒロインがとても愛らしかった。攻略ヒロインが一人なので、そのヒロインの事を見てどう感じたかというのは極めて重要だと思う。繰り返すが本作のヒロイン「渡部 響花」という女の子は物凄く可愛かった。何が可愛いって、容姿が良い事は当然なのだが、それ以上に中身がとっても素敵なのだ。
クラスの委員長という事で真面目な性格をしていて勉強は勿論、家では家事をしていたりもする。おまけにスタイルも抜群にいい。そりゃあ好きになるし、好きだって叫びたくなる。堅物な委員長タイプではなくて、周りから好かれる愛嬌のあるタイプなのが良かったかなと。特にちょっと面倒くさそうな友達を用意してきてくれた点もポイントが高い。
特にるなの方は適当な感じに見えてとても友達想いであり、彼氏との進展を聞きつつも、時たま響花の後押しをしてくれるなど、良き相談相手としての役割を担っていた。流石は10年来の親友といったところか、二人の馴れ初めについても気になる所だが本作のメインはやはり主人公と響花ちゃんの恋愛にあるので我慢。
私が本作で良いと感じたシーンはわりと序盤に合って、それは二人で手を繋ぐシーン。初めて同士故にお互い何をしていいかわからず、とりあえず手を繋ぐことになるわけだがそれすらもぎこちない。初めての手繋ぎは小指だった。それが次第に全部の指で触れあえるようになって、最後には恋人繋ぎもできるようになる。これだけ手繋ぎに熱意を注いだ作品は中々無いと思う。こういう所を丁寧に描いてくれるのは本当に嬉しい。
そして、手繋ぎすらぎこちない二人はえっちについてもやっぱりたどたどしくて、お互いのオナニーを見せあってからえっちをしようなんて素っ頓狂な考えに至ったりもする。だがそれでこそだ、”はじめて”らしさを充分に感じられた。初めてなのにすぐえっちができて、すぐ喘ぐようになるその辺の作品にはない魅力がこの作品には詰まっていた。
彼女が今の自分になった経緯なんかも興味深くて、その話を最後になってまた持ってきたのは良かったなぁと。ずっと姉の背中を追いかけて、姉みたいな「特別な人」を目指していた彼女は変わったわけだ。特別じゃなくていい、当たり前みたいに主人公の隣にいられる恋人でありたいのだと、あのシーンで二人の関係がより近づいた気がした。
タイトルの如く一貫して一途且つ初めての恋を見せ続けてくれた事に深く感謝する。そして、二人の幸せがこの先も続くようにと願うばかりである。