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apple0812さんの9-nine- ゆきいろゆきはなゆきのあとの長文感想

ユーザー
apple0812
ゲーム
9-nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと
ブランド
ぱれっと
得点
79
参照数
288

一言コメント

終わりの勢いで押し切られた感 3作目終了時が一番ノッてた

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

2日で全作遊んだので色々曖昧 駄文失礼

ここのつ 愚直に恋愛やってていい 選択肢とフラグ、作品の性質をもっともうまく活かしてる作品だと思う

そらいろ tnzknk演技が良い...最終的にセフレ以上恋人未満みたいなきっぱりしてない関係性で終わっていくのも好き
     能力の描写としては少なめだけど、単純に実妹ヒロインとして巧い気がした 実はこれだけ結構前にやった

はるいろ 単体で見ると一番完成度が高いと思う とうとう物語の幕が上がり始め、わかりやすく打倒すべき敵が現れてくれて、ここまでの要素をしっかり回収しつつ、本作の味も出しながら綺麗に〆る 何ならこれが正史でもよかった
Hシーンがエロい おっきいことは良いことだと思います、夢とか色々詰まってそうだし、ヨシ

ゆきいろ 評価を大きく分けてそうな最終章 掴みはよしで、少々面倒くさいところはあれど、疑似タイムリープで全ての精算を目指す  それまでデレも少しもなかったのに縮地並のスピードで大火力を与えてくるヒロインに「こんなの実質ボルメテウス・サファイア・ドラゴンじゃん...」みたいな感じになってたけど、夏和小ボイスが可愛かったのでおーけーです。 

ただここからの詰め方が賛否両論何じゃないかと勝手に思う

まず疑似END演出からのループ イーリス側の視点で描写を挟むとかしてないので、必要性が感じられない
そもそも彼女の設定はかなり曖昧なところがあって、「数百年頑張ったのでいろいろ超越しました」と後から語られても、プレイヤー視点だと当然説得力はなく、その説得力のなさ、不都合な主人公の三人称がこの作品最大のユニーク性であることを加味しても、正直わかりづらいの一言で片付くレベルの欠点だと思う

次 ラスボスくんの思想の話 自分が割とサイコの部分があるというか、少し敵側に感情移入できる部分もあった中で、「暴力の恐怖によって相手の思想を屈服させる」という「外道である敵が、主人公に対して行った行為」で、決着が決まったということが一番解せなかった Charlotteみたいな能力山盛りセットも、別世界線からの手助けという半ばチート行為も、それはライトノベル的な性質が強いこの作品では容認されるべきものだと思う。
ただ相手側にも信念があるというか、fateで例えると言峰綺礼のような「異常を自覚している非人間」を、結局右フックで殴って終わりというのは自分が求めているストーリーの奔流とは違ったのかもしれない 好みの話ではある。

ちょっとSF的な話

ループもの近頃すっごく多いよね というか昔から多いか。 自分は今作を遊びながらアメイジング・グレイスだったり、Charlotteだったり、結構いろいろな作品を思い出したり、思い浮かべたりしていた。
この業界の中でもこの題材を使ってるものは多い(サノバウィッチ,さくレットetc...) けど、パレットはその中でオリジナリティを、第9の主人公、視点の飛躍を可能にする異能力とVN特有の地の文が織り混ざる視点を掛けて9-nine-とした。

だからこの作品のプレイヤー視点というのはすごく曖昧だ。世界線の枝としては間違いなく存在しているが、それを誰が観測しているのか、そもそも観測していないのか明言されていない。 タイムリープ自体も記憶だけ「跳ばす」と表現しているけど、実際何をやっているのかは語られてない。 よくわからないのだ。
最後にプレイヤーの視点が映すのは、ゆきいろの数ループ目に枝分かれした、希亜trueに二人の意思が上書きされた、もしくはそこでまた分岐した世界になるわけだが、理屈でいうと他のいくつかの枝でもハリポタの分霊箱的に主人公が偏在して、あんな感じに一生イチャラブを繰り広げているはずだ。 ただそれを垣間見ることはできない。 絶対的に存在しているのは赤い空間の9-nine-とそれに語りかけるソフィアのみ。
だから最後どういうふうに、誰に、感情移入したら良いのかプレイヤーは迷子になってしまうし、もはや無限分のいくつかになってしまった、ヒロインと結ばれるいくつかの枝に対して、どういう視座を持って向かい合えばいいのかよく分からんくなる。 少なくとも自分はそうなってしまった。 最初に出てきた主人公が最後まで頑張るのが好きなのだ。
 

SFとしてグチグチ文句を言うつもりは微塵も無いし、作品ごとに個性が確かにあって、何よりも堀江晶太の曲はどれも素晴らしかった。 主人公応援組からのジ・オーダーで絶妙に冷めながらプレイしてたときもdear my wakerが流れたときはもうどうしようもなくテンションが上った。つくづくチョロいなとは思ったが。
最後に歩いてきた道を振り返ってみると、短文感想みたいになってしまうのだけど、過程を楽しむのがエロゲだし、少なくとも払ったお金分の時間は自分はよく楽しませてもらった。
何だかんだ自分の心の機敏を感じながら十数時間楽しんだ経験は結構久しぶりな気がして、俺はこのゲームを遊んでよかったなと思っている。 

つばす絵が好きな人、途中まで遊んだけど止めている人、夏和小おっかけ、そしてこんな脳内垂れ流しみたいな駄文をここまで読んでくれる気概のある貴方には、このゲームを遊ぶことをちょっとオススメしてみる。