面白いけどつり乙らしいのか?
後継作として、ひとつ下の代を扱う作品として拾うべき部分はしっかりと拾っていると思う。
だが、恵まれない生まれでされど服飾を学びたいという願いを持つ感情移入ができる主人公という面と、たおらかに柔らかく女性らしくでヒロインレースぶっちぎりのメイドという二面性がつり乙シリーズの面白さであったのだとしたら、今作はそこは損なわれていると思う。
主人公である桜小路才華の世界は根本的には内側に向いている。
デザイナーとして、美しき存在として、自他共にマザコンと認める程の母親への情景と、優しいが芸術家としては尊敬できないという父親とその人に対する性のコンプレックス(母譲りの性癖)が一人の中にある。
だから一人の人のための服が作れない、と服飾において第三者から指摘されそれに思い悩むが、そんなものは大切な人を見つけるというエロゲ的解決法でしかどうにもならないし、実際そうなる。
互いを肯定して、弱みを見せあって支え合って、寄り添う。
二人で一緒にいられるから強くいられるという遊星と月の関係性と比べると、主人公の恋人との関係性はひどく一般的だと感じられた。
ヒロイン達は月様を除く他キャラより今作のほうが魅力的だと思うし、面白叔父さんと化した衣遠お兄様、姪っ子に愛憎交じる想いがあるりそな総裁、その他変人キャラなど、一本のゲームとしては十分に面白い人間関係だと思う。
ただあまりにもタイトルに真っ直ぐであった前作に比べると、一段見劣りしてしまうのは自分だけだろうか。
遊星と月が直接登場することはないし、かなり意図的に前作とは切り取った話として作られている。
続編ではあるが、精神的続編ではない。
面白い作品であったとしても、俺がつり乙に求めていたものはこれだったのだろうかと、プレイ後暫し自問自答した。