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aoneko02さんの月に寄りそう乙女の作法2の長文感想

ユーザー
aoneko02
ゲーム
月に寄りそう乙女の作法2
ブランド
Navel
得点
83
参照数
847

一言コメント

√毎に異なるテーマの愛と成長の物語。確かな感動を与えてはくれたが物足りなさも…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

(参考までにプレイ順は 朔莉→パル子→ルミねえ→エスト でした。エスト最後なら他はどうでも良さそう)

プレイ後にヒロインだけでなく主人公も魅力的だったと思える作品は良いですね。

惜しむらくは、個別√の ”描写は丁寧ではあるがボリューム不足” 感、
ルミねえ√では割と良い関係になれた大蔵家関連が、正史となるであろうエスト√ではほぼノータッチ、
魅力的だけど攻略不可ヒロインが目立つ、など、いかにも前作のような続編前提だと思えるところか。
エスト√ラストが心から素直に『ああ楽しかった!』とは思いがたい展開だったのも続編でより良い結末を迎える為の布石に思えます。

一言で表すなら「確かな感動を与えてはくれたが物足りなさが残る作品」といったところ。惜しい…というかもったいないですね。


他作品と比較するのはあまり好ましくはないけれど、同じライターさんのシリーズものですし良いでしょう。
というわけでシナリオをあえて前2作と比較するならば、ルナ様≧りそな>エスト>>メリル>今作他>前作他といった印象でしょうか。
メリル√が前作他と別枠なのは私の趣味です。結構良かったと思うんだけどなぁ…

エスト√も好きは好きなのですが、最も印象深いシーンが才華くんに完全に食われてしまっているんですよね。あのシーンはずるいですよ。
私の好みで言えば主人公が強く輝くのは大変望ましい展開なのですが、
作品のイメージ的にはやはり主従としての魅力をこれでもかというほど魅せつけて欲しかったように思います。

センター以外の個別に関しては、力技っぽさも感じるものの前作個別と較べるとかなり良かったのではないでしょうか。
個人的に明らかに苦手なタイプだった朔莉やパル子も、終えてみれば好きになっていたのですからさすがです。
朔莉√では一途で献身的な愛を。でも変態。
パル子√では人生の理想も辛さも楽しさも分かち合える心からのパートナーとしての愛を。
ルミねえ√では深い家族愛を。
そしてエスト√ではその高潔なる主従愛を。 …ほんとか?いや、きっと大丈夫。
それら√毎に異なる愛の形とそれぞれに成長を描いた良い内容でした。
特に朔莉の一途な愛には心打たれました。共通終わるくらいまで「この声なかなか慣れないなぁ」とか呟いててほんとすんませんっした!
ルミねえは…そうですね、天使でしょうか。おかしい、私は姉キャラには興味なかったはずなのに…一体何が起こっている。

ただ本当に物足りない。もう少し先まで語るべきでしょう。
やることやったらさっさと終わってしまったという印象ですね、エロい意味ではなく。


Hシーンについては…うん、ちょっとアレですね、ギャグですね、全体的に。
BGMは全体的に高水準。特別ずば抜けた曲は…あるような…ないような…まぁでも全体的に好きです。過去作で聞き覚えのある曲があるのも○。
グラフィック面は、主人公やサブキャラクター達のCGもそこそこあり、質的にも綺麗ですし良かったのではないでしょうか。


前作とのリンクについては、そもそもが前作主人公夫婦の息子が主人公の物語ですので、世界観はそのままに20年程度経っただけですね。
しばしば前作登場人物の情報も出ますが、前作主人公やメインヒロインは直接登場はせず、立ち絵も声すらもありません。
残念に思う方も多いかとは思いますが、これは恐らく本作プレイ後に前作をプレイする方へのネタバレや年齢的なものを感じさせない配慮なのでしょう。

ですが、前作の主人公とヒロインの魂は主人公の中に確かに息づいており、
前作への思い入れによって主人公の強い想いへの共感度も変わると思いますので、やはり前作をやってからプレイすることが望ましい作品です。
やってないと困るということはありませんが、より感動が深まる、ということです。


最後に重ねて言いますが、
面白かったけど物足りないので続編希望!

…まぁ言われるまでもなく制作側も(本作がコケたりさえしなければ)最初からそのつもりだったのでしょうけれど。