伏線ゲーにも構成ゲーにも徹底しきれていない、「一シーン特化」ゲー。ご都合主義も結構ある。正直期待しすぎた。
伏線ゲー・構成ゲーという前評判が高かったので、そちらにかなり期待していたが終わってみたらそこは大して突き詰めていなかった。
・・というのも、拾っていない伏線めいた記述など沢山あり、物語の構成―設定という点でも甘い点が沢山あるからだ。
前者で言えば、タイトル-アトリビュート-が後述する一シーンには全く関係なかったし、後者で言えば記号文化の排除ではこの作品で描かれた街そのものが成り立たない(機械文明の設定が恣意的)、というツッコミを入れられる。
この作品の売りである絵画だって、敢えて説明の必要のない雑学だったり途中の選択の際にも強引な関係づけしかなかった。
【明らかに拾っていない伏線】
・公園のこと(設計者のことなど)
・ヨウジの身につけている天球儀のアクセサリー
・チベッタのミズキ先生
【未消化・矛盾めいたもの】
・食糧事情
・上下水道
・閉鎖された美術回廊と空く時間
・オーロラの逆鱗とは何だったのか
・ドラッグ全般(流行や幻覚・インスピレーション作用)
・ギドウがあのルートでのみ自分の作品を壊した理由
・大人があまり存在しないこと(卒業したら外に出るのにこの街を秘密にするのは無理)
・最終週でのスマホの試用(圏外では・?)
何より、
・リラとは結局誰だったのか(巻き戻しを観測できる存在)
が一番疑問として残った。
また、結局林檎を食べた「セーブ地点」はあまり意味のないもの(ユネが頑張れば越えられるって・・)だったし、黄金の林檎のご都合主義観が否めない。
これらのうち、私が読み落としたものがあるとしても、到底伏線・構成ゲーとして優れていないことは明白だと思う。
閑話休題。
このゲーム、サクヤの懺悔・告白シーンが全てで、そこで感動できなきゃ終わりなのだと思う。
だが、そこにはこの作品の無個性型主人公、その功罪両方が絡んでくる。
無個性(少なくともスケベとツッコミ以外、個性は消している)は記憶喪失という設定に都合のいいものだ。少なくともライターには書きやすいだろう。
だが、無個性であることは周回での苦労や信念、いや、執念が伝わりづらくなる。だから、ループという設定とは相性が悪い。いや、これは鬼気迫る描写が出来なかったライターの問題なのかもしれないが、あっさり周回でぃすぎ。
ともかく、主人公が薄すぎてサクヤのループにばかり目が行ってしまった。
そう。だから、このゲームでの主人公は(個性溢れる)サクヤといってもよいのだ。
何しろ、主人公よりループしているのだから感動しなきゃ「おかしい」。
のだが、サクヤの言動、この点に納得いかないと、感動もしないし評価も下がる。
そして、私はあのシーンにあまり感動しなかった。それまでの展開からサクヤが絡んでくることは予想がついたし犯人としての目星もついていたからもある。
それより何より、主人公へのミューズの多用・監禁は理解は出来ても納得はいかない。更に言えば、サクヤが主人公に惚れたタイミングが分からない。(ループのうちに情が深まったとしても)
結局、あの一シーンのための他の設定や(回収できた)伏線である。そこの見せ方がしっくりこなければ、可もなく不可もない評価になるのはしょうがないと思う。
この作品を楽しめなかった訳ではない。スケールが小さかったこと、悪役らしい悪役が存在しないことも人によってはマイナスだろう。。