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andworldさんのISLANDの長文感想

ユーザー
andworld
ゲーム
ISLAND
ブランド
FrontWing
得点
73
参照数
926

一言コメント

設定だけでは名作にはならない。名作を意図的に狙ってしまったが故の凡作。(前半はどうでもいい前置き。後半にネタバレありの感想。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

<物語とは関係ないどうでもいい前置きを取り留めもなく>
・そもそも18禁でない理由が希薄
下ネタは多いし、性行為を匂わせる描写も沢山あるのに、(抜きゲーにはならないにせよ)非18禁で出した意味も分からない。アニメ化前提なのが理由とした個人的に気に食わない。
・大御所声優(田村ゆかり)の必然性
そうなると、田村ゆかりをキャスティングしたかったからというのも浮上する。
だが、演技の上手い下手はともかく、こういう作品に顔だししている大御所を採用するのはあまり評価できない。
これはゲーム全般に言えることだが、そうすることで声優をキャラに被せてしまうから。基本的にはPCゲームはPCゲームで声優を育んで欲しい。別に田村ゆかりは嫌いではないが、せめて、知名度のないもう少し若い人をあてるべきだったのではないか。或いは非公開。シナリオ勝負なんだからそれでいいだろう。
・ライターがロリコン
「ひまわり」の時も思ったのだが、ライターは確実にロリコンだ。
すると、ロリ系18禁の持つ悪いイメージを与えたくなかったが故の非18禁というのも考えられる。
(アニメへの悪影響を懸念)
それでも、最初にPC媒体のみで出すことで、結局何がしたいのかよく分からなってくる。
(作品にはアニメ化前提にするほどの自信があるけど、ライターの人気が出たひまわりはPCからだから、実績の乏しいライターの支持層的にPCで初めは出そうという戦略か。フロントウィングのグリザイアがどれだけ売れたかは知らないけど、いきなりコンシューマで出す余裕がないとも言える。)
・何故、カレンの容姿があれなのか。
どう考えても、グリザイアのみちると被る。

以下から少しネタバレ。
時間ものは多いけど本作だけに特有のギミックはないものと思っていい。

<若干、物語に関係する所>
・パロ・コメディ要素を盛り込んだゆえの物語への没入の阻害
メタネタ(作品中での自作品への言及)含め、要らない会話の流れも多い。全てがつまらない訳ではないけど、ニュータイプ演出はしつこい。
・閉鎖環境なのに生活感が感じられない
どっちを取っても、閉鎖環境なら環境全体の生活感をもう少し出せるといい。例えば、シュタゲは現実の秋葉を出すことで(卑怯だけど)それが上手く表現できていた。
・ライターの趣向
理工系の知識がある、又は、調べた、どちらでもいいのだけれど、
「こんなことも知ってるし盛り込めるぜ」
的なものが透けて見えて印象が悪い。遺伝の話などはともかく、他のは必要だったのか問いたいところもある。囚人のジレンマとか。そして、伝承・伝記の要素は最初は強く匂わせるものの(展開上やむを得ないとはいえ)消化不良。
終盤で選択肢に絡むところがあったとしても、だ。
・主人公が愚かで魅力なし
これが致命的。時間モノは主人公と一緒に色々な時間を行き来するものだから、主人公の魅力はないと物語が移入度が低くなる。
記憶が失われている→そこまで主人公の切実感や悲壮感が出せない。
のは仕方ないとしても、心情をもう少し描写できたはず。
悲劇を繰り返すって・・・いくら後にきっかけによってはで思い出すことはあっても、あまりに学ばない。
(グランド除く)

・唐突なバッド
これは以下に書くストーリーやゲームの設定にも関わってくるのだが、時に唐突なバッドエンドで困惑させられた。考察系であることをアピールしたいなら、確実に前に出てきたものかそれから確実に推測できるもので選択肢を構築しなければならない。
(この項で念頭に置いてるのは、いきなり、サラに刺されるところ。)

<全体的な感想>
伏線を含めた構成自体は秀逸だと思う。
(矛盾がないかとかはよく思い出せないですし、他の方が秀逸な考察を書いているので、それについては言及しません)
ただ、プレーヤーを混乱させておいて、というか主人公も混乱していて、時間の流れが逆。
となると、やはり、あまり面白みを感じなかったのはキャラの魅力の乏しさか・・・。
主人公は魅力なしの猪突猛進だし、最初に描かれたISLANDのリンネは性格悪く感じるし、サラに至っては(何故か歳不相応に知識が豊富過ぎるとともに)思い込みだけでいきなり主人公を刺す。
NEVERISLANDのロリンネは健気で可愛かったけど、最後の玖音(正体:ロリンネ)の言動は・・・。
他に魅力的なのは、駐在さん(ハリス)ぐらい。
ここら辺は魅力的な男性キャラクターを登場させるだけでも変えられた。
御三家のつながりも記述だけで、大して感じられない。

ここまで書いて思い出したのはRPGの個人的傑作ゼノギアス。
あれの方が悲劇感が強く、また、似たような人物配置が繰り返される輪廻(或いは循環史※)を上手く扱っていた。

※循環史について
オーパーツとかはともかく、氷河期→温暖化の繰り返しのなかで(或いは世界そのものが巻き戻っている?)という最後の種明かしの中で考えたのが、作中でも言及されている
卵が先か鶏が先か。
という古い命題。だが、
一番最初のリンネとセツナを救ってそこから脱するために、コールドスリープに入ってタイムマシンの完成を待つぜ!
というエンドに、何故??という疑問が尽きない。
玖音と一緒にタイムマシン開発じゃないの?最後は人頼み??
それで、ロリンネとの記憶と歴史を投げ出す???
しかも、タイムマシンが出来たとして最初の二人って把握できるの????

全てのりんねを救うと言って、目の前の彼女への愛はどこにいったのか。悲壮感も深い決意も感じられないと

循環史を取ると終着点がどこかでハッピーエンドがよく分からなくなる(脱したらその世界自体が想像不可能)ので言及が欲しかった訳で、モヤが残りまくりでこの点数。

読み違いだったらごめんなさい。でも、キャラへの感情移入はどうあがいても出来なく、物語に没入もできせん。
結局、設定だけ秀逸でもキャラクターも感情描写もないがしろにしたら、あまり魅力のある作品にはならないということ。一言で言えば、シュタゲとゼノギアスを足して3で割った感じ。