泣けなかったのは何故だろう・・・
自分の誕生日を入力までしたのに、私はラストで泣けなかった。
泣きゲーを狙っているのならこれは致命的欠陥だ。
設定自体は、大体最初から、いかなる形であっても「現実ではない」という予想は出来た。
そして、その設定にSF的視点で突っ込んではいけないというのも途中で把握した。(最後に確信した)
つまり、ネタばれ前の各ルートの突拍子もない展開(殺人ウィルス、氷河期など)は各エンド前の味付けに過ぎないと割り切る必要があり、「疑似現実(自体の意識=カサンドラ)」「人工意識」という根幹も詰めの部分まで気にした時点で楽しめなくなる。
また、最初の(疑似)哲学問答は使い古されたもので、ただ、物語への興味を惹かせるようなものでしかなく深みはない。
だから、これも突っ込んではいけない。
キャラの個性は各ヒロインとも立っているのだと思う。
あまり他ゲームでは見ないタイプを揃えた。
ひきこもりニートに弱々ツンデレ、中二系現実主義。
だが、何故、そういう人物になったのかの描写が弱いので、そこまで魅力を感じない。
こう考えていくと泣けなかった要因は様々だが、泣けなかった原因はまず本作の主人公にある。
序盤の性格と最後の方の「皆を現実に戻すんだ」的な性格にはギャップがあるし、何よりこの手のゲームとしては主人公の魅力に乏しい。無個性タイプであるが、内面の描写の希薄さというテキストの問題もあるだろう。
また、感情表現も豊かでない。
これだったら、陶也の方がまだ魅力的である。
次に、私の感性の問題でもあるが、序盤の緊迫感に比べると、各エンド、オーラスともに悲壮感や緊迫感に欠ける。特にオーラスは駆け足に感じた。(これから消えるというのに・・・)
これにはCGのへぼさも一役買っている。
更にメッセージ性という点でも疑問が残る。
「あなたが思っているより世界は優しい」「厳しい現実か優しい疑似現実か」
というメッセージを載せたいのであれば、この物語の描写と展開では説得力不足であろう。
疑似現実との比較で「世界(現実)」を出すのであれば「世界」の方を鮮明に描かなければならないし、むしろ疑似現実の方が厳しすぎた。設定上、現実での主人公(解放前)の奮闘ぶりが描かれないし。
(対策協議会―各ヒロインのその後も投げやり。特にミカ。何故かグラビアアイドルの描写だけ)
最期はあざとさしか感じなかった。お涙ちょうだい的なものと帳尻合わせ.。
そんな印象しか受けない。