TSの醍醐味を余すところなく押え、ボリュームも満点。Hシーンの濃度もバッチリ。その一方でシナリオ・設定がしっかり練られていて、諸要素に対する説得力も十分。初心者から上級者まで多くのファンを納得させるだけのクオリティを持った、TSモノの決定版です。絵に拒絶反応がなければ入門用としてもオススメ。そこから自分の好みに合ったシチュの作品に手を出していくといいかもしれません。
Xチェンで有名なCROWD以外では、久方ぶりとなるフルプライスTSゲー。
マスターアップまでが駆け足だったり、OHPのリンクがおかしかったり
体験版が出なかったりと、正直不安要素が満載だったのですが
蓋を開けてみればバランスの取れた、とても上質なTSエロゲーでした。
あらすじは大学生の郁巳が、教授の危険な実験に巻き込まれ意識不明に。
翌朝目を覚ましたら、教授の娘さんと瓜二つの女の子になっちゃった!
というもの。鉄板中の鉄板ですね。
プレイしてみると服装、おしっこ、身長差など、やはりTSならではのお約束を
網羅しているのが分かります。
本作一番の特徴として、女性特有の状況や心理描写を丁寧に書いている点が挙げられます。
おしっこを例に取ると、おしっこをしたという事実だけを書いてハイおしまい、というのが
この手のゲームでは一般的ですが、尿が膀胱に貯まる感覚や、どこに力を入れていいか
分からないという苦悩、出した時の感覚、その感想などなど、事細やかに書かれています。
おしっこだけでなく、一事が万事そんな状態です。
加えてバリエーションも多種多様。POVを見ていただければ分かるとおり、TS娘ならではの
Hシーンが多種多様に取り揃えられていますが、それ以上に男女差に戸惑い理解する主人公を
描いているのが本作。
もちろんHシーンも懇切丁寧な描写がありますので、そのボリュームや推して知るべし。
フルプライスということを考慮しても、とんでもない質と量を誇っています。
にしてもライターさん、これだけの男女の差異を調べるのにどんな取材・調査したのでしょうかw
同じく精神の女性化についても十二分な表現がされています。
一般的な精神女性化の書かれ方といえば、Hして女に近づいたとか、生活するうちに慣れてきた
などがセオリーですが、本作で使われたのは並列世界の復元力、矯正力。
主人公が意図せず女の子になった事で因果の事象が崩れ、修正するために異物の矯正
あるいは破棄をするといった展開です。
簡単にいえば、自分が女の子である事を意識すればするだけ、仕草や雰囲気も女性のそれへ無意識に
矯正されるわけですが、自分の意図しない所で無意識にアイデンティティを変えられる恐怖と快感を
出すには、最適ともいえる手法でしょう。
女の子に染まっていく自分に戸惑う主人公が、違和感なくいい感じに書かれています。
注意しないといけないのが、この設定をある程度理解しておかないと、各TSシーンの魅力が
大きく減じてしまう点。単純にボリュームがあるのでエロシーン以外スキップでも実用性はありますが
なんで女の子っぽくなったのか、なんで男らしさを取り戻したかなどが不明瞭になってしまいます。
主人公の心の動きと合わせて読み解き、世界の復元力に翻弄されるTS娘を余すところなく
堪能するのがベストでしょう。あいまいみすとは、シナリオを読んでこその抜きゲーです。
個別ルートの一部にマニアックなシーンがあるものの、前半部分は明るくお手軽なTSゲー。
グラ方面がNGでなければ、興味を持った方が一本目に購入するには最適の作品といえます。
ハードな場面が嫌いな方は、個別は真菜とひかり(ただし赤選択肢は立ち入り禁止!)のみ
プレイすればOK。それでもフルプライス作品として十分満足できるはずです。
以下、個別シナリオについてぐだぐだと。ネタバレ注意。
前半が初心者向けのライトな展開なら、個別ルートは物足りない方々にとっての本番ポジ。
物語の〆役を担う真菜シナリオ以外は、いずれもマニアックなお約束を押さえたものばかり。
前半同様描写のクオリティも高水準。ツボにハマるシーンがあれば十分満足できる内容です。
■真菜・ノーマルEND
元の体を取り戻せる唯一のルート。男に戻れるTS物語の王道を行く内容で、比較的普通の
エロゲーっぽいシナリオです。特徴的なエロシーンは少なく、双頭バイブぐらいでしょうか。
過激な描写は一切ないため、ビギナーも嫌悪感なく見られる、安心できるシナリオでもあります。
でも唯一の男ルートですし、半端でなく完全に戻って欲しかったです。
一方NO WAY OUTルートとされているノーマルENDっぽいやつは、真菜シナリオからの派生。
いくみがチョンボした結果、元に戻れなくなる展開です。こちらも戻れないENDの〆としては
無難ですね。その後が気になります。
■祐志
相手が親友ネタ。TS的ステレオタイプの親友で、あれこれ悪戯を仕掛けてきます。
そのうちお互いが本気で惚れだしてまうところまで、全てが王道ですね。
常に男にヤられるためプレイヤーは選びますが、心理描写の運びは相変わらず見事です。
ただこの展開なら、別のロープライスものですが「最強不良が~」の方が楽しめました。
心理描写はあいまいのが丁寧ですが、女に染まる過程やコス関連、H濃度は最強不良のが
見ごたえありましたし、何よりくっついた後の甘い描写があるのがミソ。ボテ腹EDってのも
共通で、祐志シナリオが好きな方にはオススメです。
■透
個別ルート序盤に透(男)とのHシーンがあるものの、以降は比較的大人しめ。
TS娘が増えてのドタバタ展開です。女体化時にあれこれ戸惑ったいくみに対し、楽観的で
その場のノリを楽しんでいる透は、また別方面のTS娘として楽しませてくれます。
見所は真菜・彩乃を混ぜたプールシーンや入浴シーンなど。Hシーンは透の性格を生かした
要素が少なく物足りなさを感じますが、最後のTS娘同士によるレズシーンはなかなか。
特に貝合わせからの黄金噴水は必見。つーかCG気合入りすぎですw
初心者TS娘同士の絡みは、エロゲーだと何気にレアかもしれませんね。
■彩乃
最後の選択肢で赤を選ぶと、H相手が男の自分に。対自分を入れてくるとは想定外でしたw
ライトTSスキーの嫌悪感を抱く要素トップ3には入るであろうこのシチュ。ですがお互い
超ノリノリです。郁巳になった彩乃は男の征服感に酔いしれますし、いくみも嬉しそうに
チンポ咥えこんでいます。いきなりカオスな世界に突入です。
乱れ方も他Hの比ではなく、アヒンアヒン言っちゃってます。
今までが女の快感に翻弄されていたのに対し、何か吹っ切ったような乱れっぷり。
自分が他人になった事で、元に戻れなくなったのをより意識したのでしょうか。
ちなみに赤くない選択肢は彩乃がフタナリに。こちらは比較的ソフトな描写です。
もうひとつの見所は、いくみが個別ルート中最も女よりな性格になる点です。
口調や声にまでモロに影響して、エピローグでも女の子しちゃっています。
共通ルートも含め、男と女の雰囲気を使い分けた声の演技が本当に上手いのですが
彩乃シナリオはそれが最も楽しめる物語。犬飼あおさん、グッジョブです。
■ひかり
バイなお姉さんとのHがメイン。真菜シナリオとは趣を異にする、レズレズな展開です。
見所はひかりの心の動き。序盤から悪乗り全開でいくみを弄ぶタチの悪いレズ姉さんですが
実は全て郁巳のため。シナリオを読み解いていくと、男だった郁巳のことを本当によく
見ているんですよね。好きだった、というのも頷けます。
終盤戻れなくなったいくみに対し、姿や性別が変わっても愛してるといいつつも
一瞬だけ涙を見せる彼女。
自称バイですが、女の子同士に抵抗がないだけで、実際はノーマルなのでしょう。
だからこそ、教授に続く2度目の失恋に涙したわけで。それでも個人としての郁巳が
好きだから、途方に暮れるいくみに対し、あえて愛していると告白するんですよね。
エピローグにおいても、それが見え隠れしています。他キャラEDと違い恋愛描写がなく
いくみを唯一マスコット的な意味で可愛がっているんです。
それを見てると、いくみに相応しい男が現れたら、ひかりは快く祝福するんじゃないかなぁと
思えたり。恋愛対象ではなくなってしまった相手への無償の愛、とでも言いましょうか。
共に人生を歩むもよし。巣立つのを見送るもよし。そんなスタンスに見えます。
いくみにしても、ひかり個人を愛しているというより、女の子になっても自分の全てを
認めてくれた彼女を受け入れた感じでした。いくみは無意識に、ひかりは意識的という
違いはありますが、いずれにせよ真の意味で恋人にはなっていないんですよね。
なんか上手く書けませんが、この心の機微は本作屈指の名場面だと思っています。
そしてひかりシナリオ派生の陵辱ルートですが、応用編って多分これの事でしょうね。
一般的な陵辱・レイプものの嗜好とは、嫌々ながら嬲られ続け、人として悲惨な目に
あっているのに、最後は快楽堕ちしてしまうその過程を楽しむもの、だと思っています。
あるいは加虐趣味。サドってヤツです。
TS娘の場合、そこに違和感やら女性の快楽やらを混ぜこぜにして楽しむのが常道。
にしてはこのルート、陵辱としてはあまりにも淡白で生ぬるい。いくみも速攻で
堕ちて何の面白みもありません。
しかしそれは当然のことで、陵辱ルートのターゲットユーザーは
「陵辱・レイプされて、快楽堕ちするTS娘の心理描写を見たい人」ではありません。
「迅速かつ強制的にそれまでの自分を消され、女性としての意識を植え込まれる恐怖を見たい人」
です。
それまでも並列世界の復元力・矯正力を用いた精神女性化を書いていますが、あくまで徐々に
進行し、かつ世界の流れに身を任せた受身的なもの。「そんな状況になってしまったから仕方ない」と
自分を強引に納得させる事もできます。
ですがこのルートは、その選択がどんな意味を持つのか懇切丁寧に説明し、更に赤選択肢で
警告し、他の選択肢を与え、その上で強制的に心を変えられる世界に飛び込ませる、非常に
自発的な行為です。
強引・急激に自分のアイデンティティを消され、新しい自分を植え込まれる恐怖と快感。
また自発的にその選択肢を取らせる事・・・そういうのを望んでるユーザがいるんですよね。
つるりんどう氏がWebで連載されている小説「彼女の因果律」「Rites」等が好きな方には、最高の
シチュだと思います。(あちらは入れ替え系ですが)
赤選択肢を選んだら後は堕ちるだけ。いくみが陵辱されるのが当たり前の並列世界に
飛ばされ、嬲られレイプされです。シーンは2つのみでハードさは全くありませんが
肉体のレイプシチュはどうでもいいんです。
女として犯されてるという事実と「男とセックスするのが好きないくみ」という世界設定
による復元力・矯正力が、いくみの心を急速に・強制的に変えていくのを堪能するのが目的ですから。
自我レイプ、最高です。
そしてここまでやって和姦扱いなのが個人的には最高。
「世界は泡のように消え、肉体的なダメージは残らず、女性化した精神のみが書き換えられる」
というご都合な展開がグッジョブすぎます。しかも淫乱設定などは引っ張ってないんですよね。
どこまで都合いいんだ、という気もしますが。
ただ選択肢で、ぶっ壊れて元の世界に戻ったいくみを見たかったのもまた本音。あるいは
精神が侵食されすぎて、対人恐怖症レベルに陥った状態とか。BADのみよりはマシなんですけどね。
3回戦で更にハードに鬼畜に嬲りまくる展開は欲しかったなぁ。黒塗り赤字選択肢とかで(笑
最後に評価ですが、ニッチジャンルでここまでパターンを網羅し、かつ丁寧に書いた作品は
おそらく二度と出ないでしょう。和姦系TSモノとしてはエロゲ内はおろか、他メディアと比較
しても最高峰に位置するレベル。この時点で名作として評価しています。
加えて陵辱ルートが嗜好のど真ん中ストライクだったため+10点。
クセのあるロリなCG、キャラ別でボイス調整できないなど、減点要素も多いのですが
ごめんなさい、自我レイプ最高です。嘘はつけないw
それを抜きにしても、作り手の意気が伝わる素晴らしい作品だと思います。
全力で製作してくれて、本当にありがとうと言いたくなるエロゲーでした。