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ViviAlhazerdさんの恋×シンアイ彼女の長文感想

ユーザー
ViviAlhazerd
ゲーム
恋×シンアイ彼女
ブランド
Us:track
得点
98
参照数
7202

一言コメント

こういう作品が出るからエロゲはやめられない、星奏√が叩かれているからといって、絶対に敬遠してほしくない作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

星奏ルートが叩かれている理由は理解しているが、個人的には星奏ルート+TRUEルートがあってこそ、この点数。
もし仮に星奏ルートがサマフェスのライブの後、星奏が音楽より洸太郎を選び、そのまま姿を消さず、ハッピーエンドとなっていたなら、きっとこの作品に対する評価は80点前半になっていたと思う。
確かに作品のコンセプトである、学園、王道という道から外れていたが、それを気にすることができないほどに、終章は惹き込まれ、感情移入した。
全て終わった後の余韻は今年一番の作品だった。
EDが耳に残り、BGMの音楽鑑賞を二時間ほど聴きながら何もできなかった。


この作品は主人公である洸太郎、そしてメインヒロインである星奏の関係、想いを各ルートに照らし合わせ作られていたのではないかと思う。
彩音ルートでは、ずっと好きだったということ。
ゆいルートでは、二度目の別れの方がずっと辛いということ。
凛香ルートでは、相手が必要な人だということ。


星の音を聞きに帰ってきたという、五年前に転校した星奏。
再会を果たした彼女の中には、確かに洸太郎を想う気持ちが、ずっと潜んでいた。
そしてどこかで星の音を聞いて、目標を達成し、洸太郎を利用した形で再び別れる。
それから時が経ち、大人になって再開して、森野精華の転校と同時に星奏が必要な人だと気付く。
星奏もまた、洸太郎が忘れられず、好きなままでいた。
そしてまた恋人同士になるが、再び行方を晦ます。


TRUEルートで登場する森野精華は、おそらく昔の星奏と同じ立ち位置に居るが、正反対の人物として思います。
自分と向き合う時間が必要でこの町に来て目的を達した、自分を取り戻して去った精華と、言葉にできず逃げるように去った星奏。精華のおかげで洸太郎は再び星奏を追いかけることを始めた。

ただ一言、好きだという言葉が伝えられず、手紙に記した洸太郎。
それを十数年越しに言葉にして一緒に居てほしいと伝えた。

応えた星奏が再度、洸太郎の元から去ったのは、誕生日の日に読んでいた手紙のせいだろう。
そして、ここからユーザーの想像で色々な結末を迎えることができるようになっている。
誕生日の手紙の内容、星奏が肩代わりした借金、補償の結末、二度目の手紙でもう絶対に洸太郎の前に現れないと誓った星奏、最後の公園のベンチのシーンで現れた星奏は現実なのか、または洸太郎が夢見た妄想なのか。

二度目の手紙で、どうしても言葉にできないことがあると書いていた星奏、これはおそらく事務所の肩代わりした借金のことではないだろうか。
これ以上利用したりしない、といったことを手紙にも書いていた。
借金が膨大な金額であり、洸太郎に迷惑をかけられない、だから二度の転校に続いて再度、行方を消したのではないかと思う。
そして洸太郎は星奏を取り戻したいから、如月先輩……如月さんの伝手を使って出版社に就職して、グロリアスデイズを取り上げる。
そしてグロリアスデイズの元メンバーの吉村さんから、星奏の過去について聞き、星奏が一人で抱え込んだことを知る。それでも、不安を抱えながらも星奏のためにがんばると決めたからやり続ける洸太郎。
そして星奏が再び音楽業界に復帰したことを知るが、補償を終えるほどの曲は作れなかったような文章。
それから洸太郎が書く三冊目の小説。刊行後に出かけた公園のベンチで現れた星奏。

ここら辺が個人的にものすごく好きです!



この作品は、主人公の洸太郎がずっと星奏を追いかけ続けて、ちょっとしたことに全力になって、青春をした物語なんだと思います。

終章の最後の方で洸太郎が言った『俺と君は……似ているのかもしれません』
これを後のセリフとともに考えると、星奏は光太郎を想いながらも、いろんなものを犠牲にしながら音楽に対して全力で駆け抜けて、その先には寂しさだけが残った。そして洸太郎はそんな星奏を追い求めたがどこにもたどりつけなかった。だけど思い返すと、そんな季節はとても美しく輝いており、なにものにもかえがたい宝物であると。

本文中に『空想の中で空想の彼女が、空想の手紙を受け取っている。』とあります。
そして彼女、星奏がどんな顔をして、あの手紙を読んでいたのか、想像をしてみると。
それは星奏の心を揺さぶるほどではなかったけど、これまで苦しい時の中、彼女を一時でも、その手紙で慰められていたら、全ては、なにも、無駄ではなかったのだと。


二度目の別れから、いや最初の転校から、初めて渡した手紙からずっと。
彼女を想い、手紙を書いて、返事が貰えず、再会して、二度目の別れで本当に必要な人だと気付いた。
そしてずっと書けなかった二冊目の小説を書いて、また追いついたと思ったら離れていく。
色々と言われてはいますが、こういう心情の表し方などがとてもうまい書き方だと私は思います。

そして三度目の別れ。
しかし、ここで星奏は何も言わずに去ることはせず、最後の最後に心からの決心を込めて手紙を残す。
これはおそらく、星奏が音楽に対して全力ではなくなったからだと、私は思います。
今までは全力であるべきもの……音楽に対して、ただ全力で駆け抜けていったが、それがなくなったからこそ、洸太郎に二度と会わないと誓ったのだと。今まで、全力だった音楽に洸太郎を利用してきた星奏なりのけじめだと。


ここで星奏は諦めたんだと思います。洸太郎を、全てを。
それを洸太郎は受け入れたが、まだ追いかけることを諦めなかった。
それでもまだ、もう少し、全力で言うんだと。
あなたに会いたい。あなたが好きです。
ここが終章のタイトル『けれど、それでも俺は、まだ、もう少し、全力で言います』になっている


本当に最後の場面はおそらく色んな想像ができることでしょう。

私は、洸太郎の三冊目の小説『お前はアルファコロン』で書いた、洸太郎の言葉、彼のささやかな恋が、星奏に届いたのではないかと思います。
『言葉はウソだ』
ウソにウソをいくら重ねても、心を震わすことはできない。それでも、何かになろうとして書き続ける。そんな洸太郎の想いが、星奏に届いたTRUEENDだったのではと、私は願います。





星奏+TRUEルートについて書いてたら長くなったので、ここから個別の評価

始めてすぐに音楽に惹かれた。
メインテーマからOP、BGM、そして挿入歌、EDとどれも今年のトップレベル。

メインテーマ
記憶×ハジマリ
東の空から始まる世界
GloriousDays
風の止まり木
名付けられた月曜日
風の迷い路
手をつないだら。
flower
とけかけの小豆アイス
ここにいるよ?
壇上のBlue eyes
We are alone
After the rain
小雨降る日の優しさ
虹かかる空の恋しさ

この辺おすすめなので、是非サントラと音楽鑑賞で繰り返し聴いてほしい。
サントラに全部詰めてほしかった……


次にCG
これは言わずともすべて高水準。
CGはキャラクターの描き方はもちろん、背景にも注目してほしい。
特に自然、桜などがあるシーンの背景は業界トップクラス。
星奏が見つけたという、町が一望できる丘のCGは今年で一番好きだ。



CVに関しては
凛香先輩だけ少し嵌まっていなかったのでは?、と感じることがあったが、悪いということもなく。
メインにもサブにも実力のある、有名な方々を集めていたので安心して聞けていた。


そしてシナリオ

共通√はダレることもなく楽しめる。
始めてからすぐに音楽、CG、立絵と良質なものばかりなので、初期段階で積むということはおそらく少ないと思う。


星奏ルート
星奏は↑に長々と書いてしまったので……
言えることは超可愛い!!きみしま青先生さすがです!!
元々、この作品の原画家のなかでは、きみしま先生が一番好きだったので個人的にシナリオと合わせて最高でした。


彩音ルート
彩音は三年前に一度、告白のラブレターを卒業アルバムに挟んで洸太郎に渡していたが、洸太郎は卒業後一度もアルバムを開くことがなく、手紙に気付かれないというヒロイン。
彩音からしたら告白したのに、何も返事を寄越さない、でも好きだという気持ちは変わらず、また昔のように友達に戻りたいと、服飾科から普通科へと編入までする一途なところがすごく良かった。
デレるとヒロインの中では一番悶えたと思う。
最後までイチャイチャしっぱなしで、おそらく一番人気が出るのではないだろうか。星奏の次、二番目に好きです。


ゆいルート
他校から花壇の世話をしに、よく主人公の学園にやってきていたが、その花壇が取り壊されることになり、撤廃のため着ぐるみで署名活動を行うなど可愛さとしては一番。
その花壇が三十年前に、ゆいの母親が創立した栽培クラブのものであり、形見と言ってもいいものだったのを、守れなかったシナリオは少し泣いてしまった。
そしてアルバムの写真からタイムカプセルの存在を知り、掘り起こして中の手紙を読んだときはさらに泣いた。
しかし愛美、ゆい、という母親が昔から決めていたという名前の由来が、最後まで判明しなかったのが少しもやもや感を残した。
シーンに関しては、本当に小さいので背徳感は良かった。
まぁこの作品全体に言えることだが使えはしなかった。
唯一の後輩ヒロイン、CV遠野そよぎという点から、ゆい目的で購入した人も多かったと思うが、そういう人たちはきっと、もっと楽しめたと思う。
語尾に『にゃー』など破壊力では一番だったが、個人的に愛美さんの方が好きだったし、三番目。

凛香ルート
全体を通して無難、個人的にはヒロイン四人の中で一番下。
恋カケの購入目的がサントラとキャラクターページで見た、凛香先輩の『生徒会長×いじわる』
つまりプレイ前は凛香先輩を一番楽しみにしていた。
しかし、やってみるとどうだろう、全然いじめてくれない……
足コキシーンなど、少し言葉責めなどあったが、日常に関しては全く物足りなかった。
選挙後の如月先輩との距離関係など、サブキャラの立ち位置を悪くせず、むしろ好感が持てるように書いたシナリオは良かった。
まぁ僕のような趣味でなければ、普通に良い先輩としてプレイできるのではないだろうか。



サブヒロイン
愛美さん、精華、菜子ちゃん、奈津子先輩も攻略してみたかった

愛美さん!!この人キャラクター的には一番好きです。
CVかわしまりのさんだし

そして精華!!!
まさかのTRUEで新キャラですよ!
これには驚いたし、尚且つとても良いサブヒロインだったので攻略できないのがとても悔やまれる。

菜子ちゃんはこういう作品だと実妹は厳しいだろうから、涼介あたり主人公にして攻略させてください、お願いします、まじで。


奈津子先輩は凛香、ゆいルートでとても好きになりました。
TRUEの大人verでの攻略をFDでおねがいしゃす!



え?志乃?いらない



以上長々と失礼しました。
私は文章を読むのは好きですが、書くことはとても苦手です。
そんな人間が書いた、他愛もない感想だと思ってもらえれば……

もしここまで読んでくれた方いたりしたら、ありがとうございます。