脱出ゲームにサスペンスと恋愛を加味した作品の走り。今プレイすると流石にUIに難があるが面白さは今も変わらない。
幼馴染みのヒロイン梨代とバスで帰宅途中に乗用車との衝突事故で主人公は気を失う。目覚めると他の事故遭遇者と共に古びた屋敷にいたが、救出を待つ間に外へと通じる出入口が全て塞がれている事に気付き、他の者と共に脱出を試みる。
システムは屋敷の中を移動しつつ部屋の中をカーソルで調べてアイテムを入手して使用したり仕掛けを解いたりしていくのが基本。1つの仕掛けに対して複数の解法が用意されている場合もあり、それがヒロイン別のEDに影響する事もある。
大半のヒロインには最低1回は危機が訪れる。救出に時間制限はないが特定の行動を取ると時間が経過してしまうイベントが発生し死亡フラグが立つ。すると後のイベントで死亡が確定する。また主人公自身にも何度か危機は訪れ対処を誤るとゲームオーバーとなる。
各ヒロインにはEDが最低2つあり事件に深く関わるヒロインには真相に迫るEDが別に用意されていて、それを見ないと犯人の動機が見えてこない。逆に言えばそれ以外のヒロインのEDは見なくても差し支えない。
18歳以上推奨作品だけにパンチラ、下着姿、セミヌードが数多く登場する。対象年齢外の中学生なら当時おかずに使えたかも知れない。
操作はパッド以外にシャトルマウスにも対応している。文章スキップはないが連射パッドを使えば十分な速度(75ms位)で表示出来る。但し選択肢のあるイベントに注意。文章履歴を見る機能はない。
この作品の問題点について。大抵のアイテムは取るかどうかをプレイヤーが選択出来るがシナリオのキーアイテムだけは条件が整わないと「今は必要ない」と取らせてもらえない。逆に最初は背景のオブジェ扱いだった物が特定のイベントで取れるようになる。アイテムによっては小さく描画されているためにカーソルの判定が厳しくみすみす見逃してしまう事も。酷いものになると巨大な物体の裏側にアイテムが落ちているがカーソルが反応するのはほんの一部という事もある。下手をすればアイテムの存在そのものに気付かない恐れがあり、そういうものに限ってヒロインの救出に必須で質が悪い。しかし仕掛けの方は難易度が低く詰まる事は殆どない。ヒントが死亡フラグ確定後に入手出来るものもあるが。
各ヒロインのEDを見るには特定のイベントを見ればいいが、危機だろうが普段だろうがそんな行動は取らないような行動をしないと見られないイベントが意外と多い。ヒロイン毎の僅かな差異を除けば基本的に一本道のシナリオのため繰り返しプレイすると、どうしても効率の良い行動を取ってしまい益々イベントの発見が困難になる。また事件の核心に迫るヒロイン程EDが優遇されているため場合によってはクリアに不要なヒロインをわざと見殺しにしないとEDを見るのが困難なヒロインもいる。脱出後にヒロイン達と話しかけられる機会を設けているのだから複数人のED条件を満たしたら選択出来るようにして欲しかった。この優先度の設定が謎解きとは無関係に難易度を上げてしまった感は否めない。
最近ゲームをプレイしている実感を得られる作品が少なくなった。マニア向けの複雑なシステムを採用した作品か、猿のようにクリックするかオートで放置するだけの最早ゲームですらない作品に二極化している。この作品が評価される時代は二度と来ないのだろう。