やさしさに包まれた世界観の綺麗な作品。心が温かくなる。
魔法が存在する世界に飛ばされてしまった主人公達が元の世界に戻るために魔法学校で切磋琢磨する作品。目的が目的だけに終盤ではしんみりしてしまう場面もあるが殆どはほのぼのまったりな学園生活を送る。ヒロイン4人の内、現実世界側の2人は割と現実的で堅実な展開、インブルーリア側の2人は魔法が当たり前の世界だけに多分にファンタジー要素を含む展開がある。自然な話の作り方と思うが、これを「何か地味な展開」「超展開で幻滅」どちらか一方で括ってしまうと途端につまらなく感じてしまう恐れがある。そう感じる人は世界観自体に拒絶反応を示していると思うので世界観に浸れない人には向いていない。ただ話の出来は個人的に亜泉とリア、日未子とエルナで明確な温度差があるように感じた。恐らく前者の秀逸な告白描画と個別ルートでのヒロインの直向きさが理由だろう。世界設定の関係でリア以外とEDを迎えた場合広い意味で必ずしも幸せな終わり方とは言えないし、いくつかある未回収の伏線の内の1つはリアルートにも関わる重要な事なのに何ら説明もなく終わってしまい消化不良な印象は否めない。因みに悪友がパンツとパンチラスポットに拘るのはご愛敬という事で。
解像度は800×600で最近の1280×720作品と比べれば見劣りするのは仕方がないが、背景はかなり細かく描き込んでいて綺麗。立ち絵とイベント絵は少し彩度が高過ぎる気がした。
曲は無難な作りだが特定の場面のみ使われる曲の中には画像と相まって良い効果をもたらしてくれる。歌4曲は単独で聴けばどれも良い出来で特にED曲は胸に来るが挿入歌だけは本来の目的で使われるエルナルートはともかくリアルートでは音量設定次第ではリアの声が聞こえなくなってしまい折角の場面が台無しになる可能性がある。
エロはリア2、日未子4、エルナ3、亜泉3。着衣が多く教室や図書館、果ては夜の寮の屋上等少々常識を疑う場所でする事が多い。メインヒロインが最も少ないのは話の展開を最優先にした結果だろう。亜泉でもいい雰囲気を崩さす最後につなげたいためか最後のエロは選択肢でカット可能な作りになっている。メーカーが何より話を大切にしている事が伝わってきて好感が持てる。日未子ルート後半の展開上コンシューマ移植はほぼ不可能と思われるので決してエロを軽視している訳ではない。また各ヒロイン最低1枚以上のパンツ絵が用意されている。
システムは吉里吉里2.31。ゲームエンジンが旧版のため描画処理のスレッド数等最新版で使用出来るいくつかの項目は設定出来ないが環境設定自体は一通り揃っている。画面効果の表示速度はスライダーで細かく変更可能、選択肢スキップも行える。但し後者は飛ぶ場面量が多いと時間がかかり、必ず2ndOPで止まるため2人目以降のプレイで煩わしく感じる。スキップは50~150ms位。大きな立ち絵が連続して切り替わる場面は遅い。
個人的に気になったのは一部のルートで前後の脈絡も補足もなく突然場面が飛んだり、文章では数日経ったと書いてあるのに実際の月日表示では10日以上経過していたりと細かなミスが見られる事。修正パッチで直せる範疇だと思うのだが何故直さないのだろうか。
久し振りにずっと世界に浸っていたいと思えた作品。続編やFDでなくても構わないので何らかの形で伏線の回収と、より明確な世界観の解る作品を作って欲しいと願うのはいけないのだろうか。一部の固有名詞に盗用が発覚したのは残念でならないが。