やり込み要素どころかゲーム性も殆ど無い、読み応えのある素晴らしいストーリーが展開される訳でもないのに……
ただ読みたいというだけで共通ルート部分の最初から7周以上プレイしたゲームはこの恋春だけですね
「大好き」としか言いようのないゲームです。
まずシナリオ、感動的なシーンなど極一部にしか存在しません
他のシーンはなにをやってるのかと言えば、バカな真似をしているか、アホな事をやってるか
イチャイチャしながらバカな事やアホな事をやっています、つまり全編でバカとアホが乱舞しています
たまに少しは真面目な事をやったかと思えばその直後にまたバカな事をやってるというバカ山盛り
某海外レスリング団体の実況の言葉を借りれば「まるで幼児の遠足の様!」ですね
恋愛ゲームと言う自覚が薄いバカっぷりは、馬鹿ゲー界屈指の代物で
よくオマージュや時事ネタ、メタにそれ程に頼らずここまで馬鹿になれるものだと感心します。
そしてそれを支えるキャラ、サブキャラにネタ要因のバカが1~3人いたり
メインの1人ぐらいがネタ専のバカキャラな事はよくありますが、このゲームは困った事に
サブキャラからメインに至るまで全員バカです、単純明快なバカに、それよりは少しマシなバカ
変態であり更にバカというヒロインとは思えないバカと、よくここまで揃えたものだというバカ揃い
唯一の良心はカミ姉だけですが、残念ながらカミ姉も通常のゲーム判定なら余裕でバカです
つまりやっぱりバカしかいないのです、なんてこったい。
これだけバカが揃うと主人公はツッコミキャラなのでは?と思いたくもなりますが
これまた残念な事に主人公もツッコミはできるけどバカです、自分からボケるのは当たり前
ヒロインへの肉体言語的なツッコミや、気にしている所をザックリと切りこむなど
紳士的な造形が多いハーレムタイプ主人公にして、紳士的=女性上位の部分は少ないです
バカがボケればきっちりツッコみ、煽りを求めるならキッチリと煽る、芸人タイプですね
サブヒロイン、メインヒロイン関係無く男友達感覚で接します。
ただ、ヒロインをないがしろにするようなキャラでは無く
投げっぱなしがないようにヒロインに結構細かく気を配る部分もあります
ルート外のヒロインにもクリスマスとなればプレゼントを用意したり
弄ってはいけない所は弄らなかったりする節度はあるので、バカ主人公ですが度を越えてはいません。
本命のギャグについてですが、例えるならギャグシナリオに沿ってキャラが動いているというより
「今回のネタはこれ」という枠組みの中でキャラクター達が好き勝手に跳ね回っているようなギャグです
キャラが少人数のギャグではまだギャグの本筋に沿って動こうという気も見えますが、多人数になると
本命のAのラインで話は進んでいるのに、キャラ数人はまるで関係無い方向に脱線していたり
それの影響を受けて本命のラインの方も脱線してメチャクチャになったりで
「今や式場は大混乱です」状態になる事もしばしば、実にカオスです
この流れを阻止できるのは唯一神ならぬ唯一カミのカミ姉だけですが
カミ姉が率先して暴走していた場合や不在だった場合はカオスなままオチる事もあります。
その有様はかの名作「キルミーベ〇ベー」のようで、ギャグゲーの中でも結構異質かもしれません
他のギャグゲーで、それでも一応は萌えエロゲーなんだからヒロインを立てようじゃないかと言う所で
平気でそれを無視してギャグを優先するというパワーがあります
ゲームの体験版部分に当たる4月~5月上旬まで辺りはまだ普通の萌えギャグゲーをやろうという部分が見えますが
それを越えて「ぴえー」が合流する辺りで暴走がスタートして、後は飛ばしっぱなし
体験版がある意味では全く当てになっていませんね、体験版ぐらいのギャグを期待して買った人は
被っていた猫の皮を脱ぎ捨てた後の勢いに驚いたと思います。
飛び抜けたギャグを支える声優の方々の演技も見事なもので
相当力を入れたのか、本来力ある声優の方々をしてより素晴らしい仕事になっています
結構無茶な口癖、馬鹿すぎる台詞、癖だらけのメイン、サブヒロイン達の声=テキストが
「これしかない」と言えるぐらいにマッチングした声優の声と合流し、ギャグを一層盛りたてます
幼馴染のまんじゅうは特に素晴らしく、元ネタが他にある台詞ですら
「え?この台詞ってこのキャラがオフィシャルじゃないの?」ってぐらいにスムーズに台詞に落とし込みますよ。
ギャグだけだとあれなので一応萌え、イチャにも触れますと
このゲームはそこで手を抜くという事は無いです、ただイチャイチャし始めるとギャグが薄くなるという事が無く
ギャグは維持したままイチャイチャする様になります
そのアクセントとなるのが選ばれなかったヒロイン達で、根明なままで嫉妬したり
他のヒロインと付き合った後でも虎視眈々と主人公を狙っているのが複数いたりで
そこら辺が誰とも付き合わなかった頃とは別のイチャギャグを見せる要因になったりします
ヒロインによっては付き合った後で本人は結構大人しくなったりもしますが、廻りがちゃんとバカをやり続け
テイストはそれに引っ張られるので、急にゲームの雰囲気が変わってしまったという事はありません。
当然ゲーム全体がこんな感じなのでシリアスなどどこ吹く風
シリアスっぽい展開になってもバカテイスト丸出しで突き進むのですが
その馬鹿をやっている最中に、急にフッと季節の風が吹き込むのを感じる様な
その時、その瞬間を刻み込む様な空気が描かれる事があります、これはこのゲームのテイストの一つである
「青春」に関わった演出のようで、自分としてはかなり好きです
バカな連中とバカな事をやるだけの日常、しかしそれも掛け替えのない記録の一つであると
言葉少なにして感じられるような演出です、このゲームで数少ない真面目なシーンでもありますね。
他にも、ヒロインが本気で主人公になにかを求める様なシーンもあり
その時は普段はヘタレでバカな主人公もちゃんとマジになります
基本はギャグ通してるだけに、こういう所の真剣な感じが浮かび上がるのも良い塩梅だと思います。
ゲームのシステムとしては、カレンダーシステムというものがあり
一年を通して進行したゲームのフローチャートがカレンダーに記載、その日付を選ぶと
その日に起きたイベントの説明文が見れて、選択する事でイベント再生という
判り易いタイプのイベントシーンフローチャートシステムです
見たいギャグシーンを見るのにセーブデータを用意する必要が無い、という事でかなり助かりました。
あと、ヒロイン攻略はとある期日に「誰を選ぶか」だけで一発で決まるタイプなので
気にするヒロインを追い続けるという必要はありません、より駄目そうなギャグをバシバシ選択してOKです。
残念ながら、エロに関しては一世代前の萌えゲーと言った作りで
シーン数はその頃の代物よりは少し多いものの、それ程目を引くものはありません
個人的な、このゲーム唯一の泣き所だと思います。
ぶっ飛んだギャグの連発、ヒロインとしての品位なんて放り投げたヒロイン達
まるでギャグアニメのようなハチャメチャな展開と人を選ぶことは確かで、合わない人はとことん合わないと思います
なのでこれについては「おススメ」とは言えませんが、ただ一言何か言うべきとしたらやはり「大好き」です
明日で世界が終わると言われたら、多分これを頭からやり直し、読み終えてから最後の時を待つと思います。