ただただ期待はずれ
正直最終作であるにも関わらず、今作は文句しかない。文章として書き起こすことが億劫である為、今回は箇条書きの形式で進める。
・黒矢 尚織の動機が全く理解できなかった
・真崎が最後まで未散を子供として認知しなかった(その癖本人は紫とイチャイチャって、あまりにも冬見が不憫。ここのこじれた関係はしっかりとケジメをつける描写をするべきだったのでは)
・ステラと六識の因縁という物語として、必ず描写しなければならない内容をいれなかったこと
・カルタグラ、虚と続いてまたもや双子トリックを取り入れたこと
・主人公の言動が理解できない。(黒矢 尚織が自分の子供を誘拐していると知りつつも、野放しにし「ある意味で信用している・・・」って意味が分からない。実際に人を殺している彼のどこが信用できるというのか)
・存在理由がわからいようなキャラクターが多い
・ただでさえ少ないHシーンのほとんどが百合(そもそも回想すら存在していないって、やる気すら感じられない)
・シリーズを通して最後まで紫のHシーンが描写されなかったこと(無駄にバッドエンドの数が多いのだから、入れることも出来たろうに)
・魚住があまりにも報われない(主人公は魚住の気持ちを知った上で、散々杏子と関係を持っておきながら、最後にポイって。杏子も杏子で色々あって魚住と結婚しました~ってあんま舐めんな)
・朽木 文弥がかなりの異常者であることがわかるが、trueで野放しにされているため安心できない
・天才であるはずの六識との、あっけない決着
・既読スキップがまともに機能していなかった(合間合間に挟まれる特殊な演出が、未読にも関わらずスキップされてしまう為。修正パッチも存在しない)
・前作、前々作でもいわれているが、相変わらず今作も推理パートの際当たり判定が極端に小さい手掛かりが存在する
・周回するごとに新しい文章が解放されるが、都合上同じ展開を何度も見させられる
・雰囲気重視で中身を感じられない一部の文章
そもそも今作はアダルトゲームであるにも関わらず、エロ要素を極力省こうとしている印象を強く受けた。例として「Hシーンで毛布により乳首や性器を見ることができない、見えてもごく一部」、「ヒロインが裸であることを示す為のCGでも臀部しか見ることが出来ない」「そもそもHシーン枠数が3つ程度しか存在しない」等々。このシリーズはシナリオ重視でエロ要素は飽くまでおまけであり、自分もエロシーンに期待しているわけではないが、アダルトゲームという媒体で販売しているのならば、最低限の責務を果たすべきだろう。過去作ではこういう事は無かったことから、今作ではエロ要素を省くという意識が明確に感じ取れるが、本格を目指すのならば他所でやってくれ。
などなど
この作品に対するネガティブな意見をだらだらと書き連ねたが、正直これらはまだ自分の中で何とか受け入れられるものである。このゲームへの評価を地に落としたのはラストシーンである。このゲームのテーマは『星は巡る』『春が訪れる』から受ける印象通り、停滞していた時間が動き出すこと、抜け出せない妄執から解放されることであり、一定して『変遷』についてであった。しかしラストシーンの描写で主人公は、成長した色羽の姿を見て冬子の面影を見る。これにより漸くパラノイアから解放されて・・・このような描写であるが本当に理解が出来なかった。冬子へのパラノイアから解放されるのならば、そこに冬子の面影を重ねることはせず、色羽と冬子は全くの別人として描き切るべきだっただろう。二人の見た目は似ているとは云え、そこに冬子の面影を見る事は、まだパラノイアに囚われている証左に他ならない。その上冬子は特殊な環境で育った為、浮世離れした性格になるのは頷けるが、色羽は幼少期に事件に巻き込まれたとはいえ、平穏な家庭で穏当に育てられたにも関わらず冬子と同じような口調になっているのが本当に腑に落ちない。シリーズとして続いた集大成としてこのような演出にしたのかもしれないが、うがった見方をすればユーザーの顔色を伺うような過剰な演出にも感じられる。ラストにふさわしい感動的な描写にしたのだろうが、物語の成り行きとしては見当違いも甚だしい。主人公にとって冬子が死んでしまった点は報われないと思うが、唯一彼女が残した子供という最大の形見があるのであれば十分報われたといえるだろうに。
このシリーズがある程度の知名度を受けていたのは、この業界では珍しいサスペンス・ミステリー風の内容であったからであり、その内容に対する評価もやはり、飽くまでアダルトゲームという枠組みの中での評価だったわけで。なにを勘違いしたのか本格を目指そうとした結果駄作となったのがこの作品。この業界から抜ければこのクオリティを越える作品なんて巨万と存在する。昨今のイノセントグレイのアダルトゲームという媒体から脱却し、本格を目指すような動態は今すぐにでも考え直すべきである。