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SakuRambo_sonさんの天瀬島は色恋ざかり STARRY GARDEN の長文感想

ユーザー
SakuRambo_son
ゲーム
天瀬島は色恋ざかり STARRY GARDEN
ブランド
Liaison
得点
75
参照数
421

一言コメント

色恋ざかってるけど春じゃない、海に囲まれた離島だけど夏じゃない、卒業との兼ね合いなのか冬の離島が舞台の、かわいいキャラクターとゆるく楽しい日常を送りつつ恋をする、色恋真っ盛りな青春ゲー……でいいんだから思想を盛り込むなぁ! アナルにロリポップ突っ込んだりする尖ったシチュエーションなど、攻めの姿勢は大いに評価する。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

問題点のアナザーストーリーは置いといて、各ルートやキャラから。担当ライターの違いだけではないぐらいにそれぞれの温度差がある。



ヒロインがなかなかの個性派揃いの中、一人だけ常識人なので埋もれがちなのが千景。顔も声も性格もかわいいけど周りより目立つ部分がないのが。
顔面騎乗さんという強烈な呼び名があっさり埋もれるほど周りのキャラクターが強烈だから相手が悪かった。(ちょくちょくテキスト欄のキャラ名で遊んでくるの好き)
一般家庭上がりで主人公側に理解のあるヒロインなので、そういったところを活かして特別な距離感のヒロインとしてアピールしてくれたらもっと惹かれたかもしれない。

公式サイトによる設定ではロリポップが好きらしいのだが、舐めている場面はそんなにない。ロリポップの髪飾りだけじゃなくて実際に舐めてる立ち絵とかあると印象も強まったかと思うんだけど。
死に設定……かと思いきや、まさかのHシーンで大活躍!!!!いやぁ〜、アナルに飴突っ込むなんちゅうプレイが純愛キャラゲーで見れるとは思いませんでした!!!!純愛どころか凌辱でもそうそう見ないよ!!!!しかも4本!!!!
思い出したら勃ってきたな。これをやれるあまこい、評価せざるを得ないだろ。マニアックなプレイに定評のあるりえぞんちゃん。
一番「普通」なヒロインでってのがまた良いですね。他ヒロインもマニアックなプレイは何かしらあるが、アナルロリポップが群を抜いて異常。個性のない常識人とか言ってすまんかった。
これだけすごいことをやってくれたのにまだ望むのは恐れ多いが、それでももう少しだけ欲を言うならば、前にも突っ込んでほしかった。
キス中心の前戯から本番でも挿入れながらキスとか、手繋ぎデートからの手繋ぎセックスとか、アナルロリポップ以外のHシーンも流れが良かったね。

このルートからやったので、最後の超展開には唖然。
別に普通に間に合わせたり、舞台かオーディションか選ぶ決意描いたり、それでよくなかった?
このルートだけの話じゃないんだけど、幸せぱわーで奇跡が起きるっていう話にするなら、事前にもっとその設定をわかるようにしてほしい。リリヤが「幸せになると奇跡が起こせる」って明言してくれていたら、奇跡起こったー!二人の「幸せ」の力だー!ってなるんだけど。まだはっきりとした超常現象は何も起きておらず、リリヤの特異性も示されていない状態でのあれは、置いてけぼりの超展開でしかない。
本当に、そこさえなければ(なんなら超常現象以外の御都合主義展開だったとしても)普通のキャラゲーの普通の個別ルートで終われたのに。何故無駄なオカルトを入れた。

それからこれもこのルートに限った話ではないのだが、序盤で提示された物語の着地点は「世間知らずなお嬢様に男を教える」ことだったはずなのに、気がつけば演劇が話の中心になっていることの違和感が強かった。演劇を通して常識を身につけさせるていだったが、普通に演劇しているだけで常識を学んでいるようには見えない。
アナザーストーリーでの悲劇やチェーホフの銃の話があったことからも、スタッフが本当にやりたかったことは明らかに演劇だとは思う。ハーレムエロゲの導入としてお嬢様しかいない島への転入を描いたはいいものの、そこから本当にやりたい演劇へうまく繋げなかったような印象。
しかもじゃあその演劇はちゃんとやったのかというと、本番の描写が皆無でとても話の中心とは思えない出来。常識を学んでいるように見えない問題も、どんな脚本なのかはっきりしていない描写の薄さが原因の一つ。演劇モノにシフトするならするで、ちゃんと描ききってほしかったわね。
ところで演劇部の活動のことをボランティアと呼ぶことがしばしばあるんだけど、演劇しかしてないしボランティアじゃなくね?ただの演劇部の活動じゃね?

千景が何故変な目で見られ始めたのかとか何を後ろめたく思っているのかとかさっぱりわかんねぇなって思いながら進めてたのに、最後が凄すぎて感想がそっちに持ってかれちまったな。
演劇に対して何か思うところがありそうなのに過去の掘り下げがないまま経験者のように振る舞ってたのも気になってたけどそれどころじゃないの出てきたからな。



顔面騎乗さんルートで望まずして耐性がついていたため、ゆかりルートと果歩子ルートのオカルト要素は驚くことなく受け入れられた。おもしろかったかはともかく。

ゆかりがちゃんと他ルートでも体調を崩しているから個別ルートで本題になる病弱設定がとってつけたように見えなくてよい。
下ネタばかりで余命短いとは思えないほど軽いゆかりのノリも、どこかで諦めて今を楽しんでいるような描き方をされているので、ふざけては見えない。
すぐセックスしたがるからHシーンばかりになりそうなのに、体調のせいでできず結果的に日常とHシーンのバランスがよくなっているのは意図したものなんだろうか。

とまあ設定の扱いはそれなりにうまかったと思うが、最後の快復は他ルートの奇跡を見ていなかったらまったく理由のわからないものになっていたのが惜しい。なんか快復したという御都合主義として受け入れられることを考えれば、明後日の方向にぶっ飛ばされる千景ルートよりはマシだが。
男との距離感を理解させるという話についてはろくに扱われない。最後まで下ネタである。

いきなり朝フェラで初Hシーンを奪っていくところと、母乳が出るところがよかったね。マニアックなプレイに定評のあるりえぞんちゃん。



果歩子ルートは真っ向からオカルトに斬りかかる内容なので、最初これやってオカルト耐性つけといた方が千景ルートも置いてかれずに済んだ可能性があるかも?ないかも。
意志が集まった石とかいうどっかのアカデミアで見たダジャレの話。解決はだいたい他ルートと同じ。

男慣れするという話は後半どっかにいくが、気持ちに気づいてドキドキする前半は想いを伝えられないもどかしさとか勇気を出した告白とかけっこう良かった。

石の影響があるからではあるが、この子下ネタしか言わないゆかりよりも遥かに発情しててたまげた。常に盛っててえっちだ。
日常シーンで頻繁に発情している一方、Hシーンのアブノーマルなプレイはアナルぐらいで、アナルは他ヒロインも開発されることもありマニアックなプレイに定評のあるりえぞんちゃんとしてはHシチュエーションの特殊性は弱い。
CG数も他より明らかに少なく、タイトル画面にすらおらず、果歩子にはあまり力が入っていないように見える。

服装に応じて髪型がいろいろ変わるのはかわいい。髪下ろしたときと普段とのギャップがとても良い。
立ち絵もとっても表情豊かでかわいい、姫瑠に勝るとも劣らず活き活きしていた。ゆかりの後ろに立ち絵隠れてる表現おもしろい。
F1音ダッシュ好き。ていうかF1以外も独特なSE多いよなw ドッゴッ! ドッゴッ!って鳴る心音とかw



これら3ルートと違い全くオカルト要素がないのが姫瑠ルート。
園花さんに頼りきりのお子ちゃまだった姫瑠が独り立ちをするお話で、ニノの話も含めて一貫して大人への成長が描かれていてよかった。ニノは五月蝿くてあまり好きではないけども。
一貫したストーリーからの、今までは頼るだけだった園花さんを目標として追いかけ始めたこと、そして別れを受け入れ笑顔で送り出すシーン、夢を叶えた園花さんが教員として戻ってくるという終わり方など、一番好きなルートだった。
傑作というわけではないけれどもこのルートは無難に良い出来だと思うので、他ルートもこの方向性で進んでくれていれば全然普通のキャラゲーとしてそれなりに評価できたのに。世間知らずのお嬢様という最初に読み手が受け取ったコンセプトとも合致しているし、本当に、これがあまこいに求められているものだったと思う。(絶賛できるほどのものではないし楽しめるかどうかは好みによるだろうが、方向性としてはみんなこれを求めていたのではないだろうか)

とまあ好きなんだが、せっかくの良いシーンで流れるBGMが、コミカルな姫瑠のテーマ曲なのが。
BGMタイトルがないので推定にはなるが、各キャラのテーマといえる曲があり、全体的にこれらが多用されがち。
特に不思議な雰囲気がキャラにぴったりのリリヤのテーマなど、曲自体は良い出来だと思うのだが、しかしテーマ曲だからといってクライマックスで流すに相応しい曲かどうかは考えてほしい。姫瑠のチョロさが表れた良い曲ではあるんだ、でも感動的なシーンで流れるには軽すぎるんだ……。

開幕直後は当たりキツそうであまり好きになれなそうだったが、性格チョロチョロお股からもちょろちょろなぽんこつお嬢様であることが発覚してからは、一、二を争うかわいさだった。
ぼっちだったこともあり、お友達がたくさんできてとっても楽しそうなのが微笑ましい。部長と同じく表情が豊か。
また、姫瑠が出てくる場面では、常に一緒にいる園花さんの落ち着いた大人の魅力も味わえる。姫瑠をからかったりするかわいい一面もあり、遥の部屋で粗相をしてしまう(してない)子供っぽさもあり(ない)、メインヒロインズよりも攻略したいメイドさんだった。オナシーンに参戦したんだから本番3Pとかやらせてくれてもよかったじゃん……。
アナザーストーリーによると、エンディングの先も遥含め3人で過ごしているらしいし、絶対一度ぐらいはヤってると思うんだ。姫瑠と園花さんとの爛れた生活が見たいよ〜。姫瑠同様園花さんもマニアックプレイはお粗相でイケるのでね。マニアックなプレイに定評のあるりえぞんちゃん。
ただ、仮に園花さんとのHシーンがあったとしても、あの原画でどこまでエロく描けるかという問題はあるが。立ち絵は普通にかわいいのに、CGヤバくない?いくら園花さんでもちょっと厳しいかもしれない。

姫瑠&園花は画力に問題があると思うけど、それ以外もCG枚数は少なく感じる。HCGは少なくないと思うんだけど、日常シーンがまあ少ない。
演劇が終わって部室で打ち上げするシーンとか、他のエロゲだったら絶対にCG入ってるとこだよ。
みんなでワイワイお菓子食ってる楽しそうなCG入ってるとこだよ。
顔面騎乗さんがロリポップ舐めてて、月城先輩と部長がお喋りしてて、リリヤがちょっかいかけて姫瑠がそのせいでギャーって泣いてて園花さんが苦笑しながらそれを見守ってて、ひつじが後ろで変なことしてて。そんなCGがあって然るべき場面だと思うんだ。
演劇も描写が少ないのをCGで誤魔化せた可能性とかあるかもしれない。
立ち絵そのもののかわいさや表情豊かさ、多用されるエフェクトや動きによる賑やかさのおかげでCGがなくても楽しいんだけど、さすがにCG欲しいなって思う場面はある。



閑話休題。

ヒロイン最後はリリヤについて。独特の喋り方やテーマ曲がクセになる不思議ちゃん。喋るだけでおもしろい。
冬なのにノースリーブなだけあって、ちゃんと脇コキもある。マニアックなプレイに定評のあるりえぞんちゃん。

ただ、描かれる姿は所詮「不思議ちゃん」の域を出ず、とてもじゃないがオカルティックな存在だなんて思わないので、唐突に超常設定を持ち出されても全くついていけない。
一応初っ端溺れてたりとか石のために森に入ってたりとかけっこう伏線張られてるんだけど、如何せん伏線の先にあるものが超展開なのでうーーーーん。結局何回も溺れてたのがどう石やら奇跡やらと関係あったのかわからんかったしな。
くだらんケンカもあったりで、一番つまらんルートだった。
もっと巧く描けていれば、あのビターエンドもものすごく心に刺さるものになったかもしれないが……。

場面転換が雑に感じられたのは、石の影響で記憶が飛んでるからなのかな。普通に下手くそな可能性も否定できないから判断に困る。

てかルートロックとかかけといた方がよかったんじゃないか。



個別の話から少し逸れてサブキャラについて雑感。
ひつじは五月蝿いだけでおもしろくもなかったので要らないと思う。凧揚げとかなんだったん?
母さんもプロローグ越えたら霊圧消えたね。
ニノも同様に姫瑠ルート以外では霊圧消えてたけど、姫瑠ルートでは重要な役割だったのでギリセーフ。





ここまでなら、「変な超展開でやらかしてるけど、まあキャラゲーとしてはよくある内容」で済んだ。

アナザーストーリーで語られたことは、まず演劇における悲劇と、チェーホフの銃とやらについて。前者はアナザーストーリーが相当な不評を買っている理由であり、後者は何を意味していたのかよくわからない。

長くなりそうな悲劇の話を後回しにしてチェーホフの銃について先に述べると、この話が出てくるのは「石」についてリリヤが語るシーン。
石がなんなのかとかを語ってはいたんだが、それは既に果歩子ルートなどで知らされていることなので、もうチェーホフの銃でいう「意味が無いのに存在する設定」ではない。それ以外にも心当たりはないし、一体あれは何のことを指していたんだろう。
いや、ひつじやら母さんやら鳥やら存在意義が無いと思うものはいくつもあったんだけど、それはアナザーストーリーを経ても結局要らんままだったので、何のことだったんだよと。わからん。

悲劇については、なんでも演劇には悲劇が多いらしく、その理由が「登場人物の人生を最後まで描いているから」らしい。
その他の媒体では幸せのピークで終わらせるのに対し、演劇はさらにその後の楽しくない物語も描き続けるから、悲劇になりがちなんだと。へぇ。



「あまこい」でも、ハッピーエンドとして見せられた個別ルートの後には実は悲劇が続いていたそうで、その先の辛い顛末をわざわざ教えてくださった。



はぁ!?

いやぁ〜、やりたかったことはわかるよ?
ハッピーエンドだと思った?実はその続きは悲劇なのでした!って驚かせたかったんだとは思うけども。
たとえばこれがウグイスカグラ?(やったことないからあくまで私のイメージしているウグイスカグラ)とかの作品だったなら、なるほどそうきたかぁ!って雰囲気もそう思わせられる技量もありそうなんだけど。あまこいはどっからどう見ても明るく楽しいキャラゲーだからそんなん来るとは思ってないし、不意打ちだったとしても全く技量が足りていない。

悲劇になった理由として、本気でやり切れていなかったから心残りがあったことがあげられていて、だからアナザーストーリーは、今度こそ全力で演劇をやろう!という内容になっている。

いや、本気じゃなかったとか思わなかったんだけど。どのルートもやり切ってなかった記憶ないんだけど。
これがさあ、なんかうじうじして迷って逃げて、でもなんとか掴み取ったハッピーエンドとかだったなら、まあたしかにってなるんだよ。
でもだね、別に個別ルートそういうんじゃなかったから。ちゃんとやってちゃんと幸せ掴み取ってたから(奇跡に頼ってはいたが、端から奇跡頼みだったわけでは全くない)。
だから、それをこの形で覆されることに納得は無い。
一応リリヤは茶化しているからただの妄想で本当はそんな世界線なかったのかもしれないが。
いっそ理不尽な悲劇とかだったらむしろ納得したんだけどな。

あっ、でも姫瑠と園花さんとの肉欲に溺れた三角共依存バッドルートだけは見たいですよろしくお願いします!

負の意志が集まってできた石を、「悪者のいない物語」にすることで無力化できるとかなんとかで、本気でやり切った結果真のハッピーエンドを迎えましたよ、と。
だったら個別よりもずっと真剣さを感じられるような「本気」を見せてほしかったんだけど。そんなに感じとれなかったよ本気。

でも、本気でやり切ることを描いた作品に対して、制作も長い延期を経ながらも完成・発売までやり切ったのは有言実行?で立派だと思いますよ。
CGが少なかったり間に合わなかったかのような実写加工背景があったりするが、本気でやり切ることが大事と言っているぐらいなのでこれも本気でやり切った結果のはずなのである。脱衣所も実写加工でいいから背景作ってくれよ、脱衣所で起きてるはずのできごとが全部室内背景か真っ黒背景でこんなにも脱衣所の背景が欲しいと思ったエロゲは初めてだよ。

あと悪者もいなかったことね?個別ルートに誰か悪者いたっけ?

悪意は石にとっては善でも悪でもないみたいな本編とあまり結びつかない善悪論もあったりして、演劇への想いも含めてライターの思想を出してしまったのかなって。
思想を出すなら重厚な構築のシナリオゲーとしてやってほしい。あまこいに求めていたものではない。

アナザーストーリーのエンディングは5ルート分のトゥルーエンドのようなものが連続でばーーーーーっと流れて情緒もへったくれもないが、これがそのまま個別のエンディングにくっついてればかなりいい感じだったんじゃないかなぁと思う次第。もったいない。



中身と関係ないところで、千景と姫瑠の描き下ろし特典がなかったのが買う前に残念だった。





思想的なアナザーストーリーとか一部クオリティが物足りないところとか欠点をたくさん挙げてしまったけど、みんな仲良しで幸せそうな日常会話とか、マニアックな攻めたシチュエーションとか、全体的に懐かしい雰囲気とか、キャラゲーとして見れる部分は十分楽しかった。
激しいツッコミよりも、こういう流し気味のぬるいツッコミをする主人公が好きなんですよ。



やりたいことや言いたいことはわかるけどそれを作品に落とし込む技量が足りていないが、形にできていれば心に響く可能性もあったんじゃないかと思わせるテーマ性、アブノーマルなシチュエーション、延期、たぶんイープロ(旧VA)系列、とラブデスを想起させるところがいくつかあったけど、関係あるのかな。さすがにないか。