SMEEの作風が見事に異世界ハーレム世界とマッチしていた。
・SMEEらしさを活かした異世界転移ハーレム
SMEEが得意とするコメディ・ギャグをメインとした異世界転移&ハーレムを扱った作品で、本作の世界観や設定がSMEEの強みや魅力を最大限に発揮できるものだったこともあり個人的には過去最高の内容だった。
一般的にハーレム展開があると言える作品は抜きゲーの他にはストーリー重視なものや、アリスソフトやエウシュリーのようにゲームパートがメインのものが多いため、本作のように通常の学園ものに近い感覚のハーレム作品は珍しかった。
自分のようにヒロインとの恋愛にフォーカスした個別シナリオよりも、共通ルートの賑やかさを維持した個別シナリオの方が好みの人間にはドンピシャの内容で、終始賑やかな雰囲気だった。
それだけでなく、ヒロインそれぞれの魅力も描写されていたので、どのヒロインも印象に残った。
また、エッチなことをするのも異世界で王となった主人公の重要な役目の一つのという設定のお陰で、ハーレムのための口実としてだけでなく、早い段階からエッチシーンを挿入することができるし、そもそも馬鹿げた設定自体がエロゲーらしさを実感できるもので面白かった。
SMEEらしいコメディ・ギャグのためにファンタジー世界をうまく使っているのも素晴らしい点で、ヒロインが分身したり、魔法で遊んだりと現代日本が舞台の作品ではできないシーンが多いので、過去作と似た作風でありながら、新鮮なギャグシーンの数々を見ることができた。
本作の大きな特徴の一つは、ハーレムオンリーの作品でありながらルート分岐が存在する点であり、ルート分岐のお陰でだれることなく最後まで楽しむことができた。
物語の構成は共通ルートにあたる部分の各チャプターで各ヒロインを掘り下げ、主人公とヒロインが理解しあい名実ともに夫婦となるまでを描き、その後の個別ルートの位置に全ヒロインと結ばれた後のハーレム生活を描いたシナリオが来る構成となっている。
共通ルートにあたる部分はともかく、ハーレムシナリオはストーリーらしいストーリーは少なく、異世界ハーレムの日常を切り取ってチャプターとしているため、恐らくダラダラとハーレム生活を見せられても途中で飽きてしまっただろう。
ところが、ハーレムに5つのコンセプトを持たせたことにより、内容に違いを持たせることができるし、プレイしている側も各ルートのコンセプトがわかっているため、そこを意識しながらプレイすることで、より各ルートの違いを感じることができた。
それぞれのハーレムは属性によって大なり小なり特徴があり、場合によっては現代日本(主人公の自宅限定だが)と行き来できるようになったり、住居を酒場に移したりと舞台まで変化するのだが、この点もファンタジー世界の何でもありの部分をうまく活用できている部分だった。
コメディ・ギャグ調の雰囲気は全てのルートで共通だが、ヒロインによる主人公争奪戦などの過激な愛情表現に主人公がタジタジになる正妻ルートや、イチャイチャ特化の癒しハーレム、酒場に住居を移して寮生活のような共同生活感を楽しめるリードするハーレムなど、ハーレムと一口に言っても色々な種類があることを実感させてくれる内容だった。
・魅力的な登場人物たち
本作の主人公は言いたいことはズバズバ言う性格、童貞をこじらせたが故の偏った女性観、ふざける時は全力でふざけ、シリアスなシーンでは急に真面目になる落差など、SMEEお馴染みの性格の主人公だった。
ただ、従来の学生や社会人主人公とは異なり、卒業を目前に控えた時期なのに阿呆みたいな言い訳をして就活すらしていないことが冒頭(異世界転生前)に発覚するため、屁理屈ばかりの何もしない人物に思えてしまい第一印象は悪かった。
しかしながら、物語が進んで主人公が異世界の国王となった後は印象が変化し、SMEE特有の言いたいことを臆せずに言うキャラクター性と立場がマッチするようになり、女子観察が趣味で嫁たちの機微にも敏感なため、ハーレムを作り、維持することにも長けているキャラクターだと感じた。
棚ぼた的に手に入れた能力や権力を笠にに着ることもなく、それぞれのヒロインたちと主人公なりに真摯に向き合うため、最終的には本作に相応しい主人公だと思えるようになっていた。
本作の主人公は名前を自由に変更できるのだが、非常に珍しいことにデフォルトネームが存在しない。
自分は名前を考えるのが苦手だし、自分の名前でプレイしたいと思わないので普段はデフォルトの名前でプレイするため、事前に決められた名前が存在しないのは少々困りものだった。
一応は自分で名前を決めるのが苦手な人のために「おまかせ(ランダム)」という機能があり、一般的な苗字と名前をランダムで作ってくれるのだが、ランダム名でプレイするのも少し抵抗があり、プレイするまでに結構悩む羽目になってしまった。
主人公への二人称は主に陛下や旦那様、お兄様やご主人様と、ヒロインや状況によっていくつかあったが、定番の二人称が存在しない幼馴染ヒロインの光からの呼びかけに違和感がなかったのは、流石幼馴染ヒロインに定評のあるブランドだと感じた。
SMEEの作品には幼馴染ヒロインがよく登場するのだが、異性の幼馴染との独特の距離感がうまく描かれており、幼馴染だからこその魅力を感じさせてくれる。
本作の幼馴染ヒロインである光も同様で、幼馴染らしい遠慮がなく安心できるやり取りや、時折見せる女としての顔、そして幼馴染だからこその葛藤がうまく描かれていた。
一般的な学園物の場合、実は幼馴染は昔から主人公のことを好きでしたというパターンだと、他のヒロインのシナリオでは幼馴染が報われなさ過ぎて胸が痛むことがよくあるが、ハーレムの本作の場合は共通ルートにあたる部分でお互いの初恋が実るため、心を痛めることなくプレイできた。
他のヒロインも濃いキャラクター性なだけでなく、打ち解ける前と打ち解けた後の印象が良い意味で変化するので、意外性もあって面白かった。
不幸な背景を背負っており、守ってあげたくなるヒロインと見せかけて実は一番たくましいキキや、主人公にだけは甘い顔を見せてくれるマルーなど、みんな魅力的だった。
また、ハーレム毎にコンセプトがあるため、ルート次第でヒロインの意外な一面を見ることができたり、逆に元々持っている魅力が強調されたりと、そういった意味でもルート分岐をさせたのは成功していると感じた。
・グラフィックは標準的
本作のCG枚数は85枚となっており、フルプライス作品としては標準的なボリュームとなっている。
本作の原画を担当している谷山さんは自分が知る限りではSMEEの作品でのみ起用されており、特徴もあるためにオンリーワンのグラフィックと言うことができるが、絵買いするほどの魅力があるかというと微妙なところだった。
ファンディスクを除けば谷山さんが担当する作品は本作が3作目となるが、最初の頃と比べると安定しており違和感のあるCGは非常に少なくなったが、それでも本作にも数枚は顔の造形等に違和感のあるものがあった。
とはいえ、本作のグラフィックがダメというわけではなく独自性もあるので、個人的には今後も谷山さんを起用してほしいと思った。
・ハーレムを実感できるエッチシーン
本作のHシーン数は35回となっており、内訳は各ヒロイン単独のシーンが3回、3Pが15回(各ルート3回)、6Pが5回となっている。
モザイクが大きめなのは残念な点で、必然的に性器が大きくなってしまうフェラシーンなどでは邪魔だと感じた。
逆に濡れた状態の下着やお尻の穴もしっかりと描写されているのはよかった。
ハーレムを前面に押し出した本作は、共通ルートにあたる部分でヒロインとの個別のエッチが、そしてハーレムルートでは3P及び6Pオンリーの構成となっている。
ヒロインとの一対一のエッチは甘い雰囲気はよかったものの、内容自体には特筆すべき部分のない普通のエッチだった。
本作の特徴はやはり何と言っても3Pが多いことで、全体の約半数が3Pを占めている。
ハーレムエッチと言えば、どうしても4Pや5P(全ヒロインとの同時エッチ)を思い浮かべてしまうが、そうなってしまうとヒロイン全員を並べて順番に挿入というありきたりなものばかりになってしまうので、オマケ程度のハーレムシナリオならともかく、ハーレムオンリーの本作の場合はマンネリ化しないようにしつつ、ハーレム感を出すのに3Pというのは丁度良いものだった。
3Pの内容はバラエティーに富んでおり、ヒロイン二人を並べて交互に挿入やダブルフェラなどのオーソドックスなものから、一人が挿入でもう一人はオーラルプレイという別々の箇所を同時に責めるプレイや、一人のヒロインを主人公ともう一人のヒロインが一緒に責めるプレイなどがあった。
また、ヒロインが協力して主人公に奉仕したり、主人公と一緒になってもう一人のヒロインを攻めるシーンを見ていると、嫁同士の仲の良さも実感できるのもよかった。
・システム面にはやや不満あり
本作のコンフィグは基本的な設定項目に加え、キーボードやマウスの機能割り当ても設定可能で便利だった反面、ウィンドウサイズが1280x720から変更できないのは不便だった。
残念だった点は選択肢ジャンプがまともに機能していないことで、選択肢ジャンプを使用すると結婚式当日(ハーレム分岐選択直前)までジャンプしてしまう。
しかし、本作の共通ルートにあたる部分には夜伽の相手を選ぶ選択肢が数回あり、選択肢次第で誰とエッチするかが変化するため、選択肢ジャンプを使用すると途中のエッチシーンを見れなくなってしまう。
夜伽シーンをコンプリートするためにはヒロインの人数分周回する必要があるため、実質的に選択肢ジャンプを使用することができず、通常のスキップ機能を使用して共通ルートを5週することになってしまい、それなりに時間がかかってしまった。
また、音声ボリュームに若干のバラツキがある印象で、ある場面ではピッタリに合わせたつもりだったのに、他のシーンになると音声ボリュームが小さく、あるいは大きく感じるということが何度かあった。
問題点はいくつかあったものの、選択肢ジャンプの件を除くと大きな不満とは言えないもので、総合的にはやや不満程度のものだった。
・まとめ
SMEEのギャグ・コメディ路線に異世界ハーレムものというジャンルが完璧と言える程マッチしており、終始賑やかな展開を楽しむことができたので、個別ルートより共通ルートの賑やかさの方が好きだという人には間違いなくヒットする内容だった。
コンセプトの明確なハーレムルートが複数あるのも素晴らしい点で、最後まで飽きずに楽しめた。