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Predawnvagabondさんのイブニクル2の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
イブニクル2
ブランド
ALICESOFT
得点
96
参照数
662

一言コメント

エロゲ版の王道RPG

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・エロゲー版の王道RPG

ストーリーは正に王道RPGな内容で、田舎の見習い医師だったアレクの出世&世界を股にかけた活躍の物語となっている。
勿論、「it's eroge maker」を標榜しているアリスソフトの作品なので、エロゲーとしても楽しめる内容だった。
基本的には権力の中枢にまで食い込んだ悪の結社の企みを阻止しつつ、各国の偉い人たちと仲良くなるというお約束の展開なのだが、仲良くなる=セックス&お嫁さんにするということなので、エロゲーとしてもしっかりと楽しめる展開だった。
主人公アレクは英雄病という不治の病を治せる「メディカ」という唯一無二のスキルを持つのだが、スキルを使用できる対象は女性限定で、しかもセックスをしなければいけないという頭の悪い設定(褒め言葉)のため、アレクは治療の名目でヒロインたちとセックスをしまくる。
しかも、初めてセックスをした相手と結婚するという考え方が一般的なため、治療した相手とは大体結婚するので、ゲームが進むに連れてハーレムがどんどん大きくなっていき、エロがゲームを進めるための大きなモチベーションとなった。
ストーリーも最初は単純な悪の秘密結社にしか見えなかったイシュタムが、ストーリーが進むに連れてそのルーツや思想が判明し、単純な善悪の話ではなくなるので、背景設定や物語にも深みがあると感じた。
また、ワールドマップの随所にフィールド百景というポイントが用意されており、発見することで短い会話シーンを見ることができるのだが、普通の観光名所だけでなく、謎の古代の遺物や、過去の偉人ゆかりの場所などもあり、冒険している感があってよかった。

イチャラブイベントもきちんと用意されており、公式HPのキャラ紹介に載っているメイン嫁は勿論、サブ嫁も専用イベントが用意されている。
嫁イベントは条件を満たしていれば任意のタイミングでいつでも見ることが可能で、極端な話、ストーリーの先が気になるなら、全ての嫁イベントをラスボス撃破後に閲覧することも可能となっている。
嫁イベントはクオリティも高く、複数人のイベントを同時に見ると結構なボリュームがあるので、任意のタイミングで見ることができる仕様はよかった。
嫁イベント以外にも、ワールドマップの各所にあるハートマークに触れることで鑑賞できるいちゃらぶイベントも用意されており、人目をはばからないバカップルっぷりを堪能することができた。
それぞれの嫁イベントでは、該当の嫁以外のヒロインも登場することも多いので、しっとりした内容や、単純にイチャラブするもの以外にも、賑やかな雰囲気を楽しめる内容となっている。
また、それ以外にも談話室という項目の会話集もあり、これまでに判明した世界観のおさらいを行うことができる。
中盤以降は複数組織の視点での情報が入り乱れ、主人公たちが当たり前だと思っていた常識も曖昧になり、良くも悪くもややこしくなるので、手軽に整理された情報を読むことができるのはありがたかった。


・前作との繋がりについて

タイトルからも予想できる通り、前作と世界観の繋がりはあるのだが、イブニクルシリーズは、元は一つの世界だったものが、バラバラに砕けてしまったという設定があり、それぞれの世界のルーツを辿れば同じだし、価値観等も似ているが、前作と今作では別世界での物語となるので、本作単体でも楽しめる内容だった。
前作と共通で、かつ特徴的な設定としては、条件を満たさない人間が複数の異性(初めてセックスした相手以外)と肉体関係を持ってしまうと呪いの黒い指輪を強制的に装備させられてしまい、バッドステータスがついてしまうというものがあるのだが、今作では複数と関係を持つための条件が前作よりも緩くなっており、スキルを使用可能という条件だけで複数と肉体関係を持つことができるようになっている。
また、前作では黒い指輪を持つ人間に対する厳しい差別がしっかりと描かれていたのに対して(本作でも黒い指輪を持っていると隔離されたり処刑されたりするらしいが)、本作では黒い指輪という存在は重要なキーにはなるのだが、黒い指輪を持つ人間に対する差別が物語の焦点ではなかったこともあって、終盤を除けば黒い指輪を意識する場面は少なかった。
そのため、前作をプレイしている人間は、前作と同じようで少し違う世界観や、その成り立ちを楽しむことができたし、世界観の説明はきちんと行われるので、未プレイの人でも問題なく楽しめるようになっていた。
ただし、終盤で重要な助言をくれるQDとアーサーの二人は複数世界に存在しているので前作から続投しているし、続編が制作された時にも重要な役割果たすであろうキャラクターなので、本作単体ではなく、イブニクルをシリーズで楽しみたいという場合は、過去作との繋がりが今後重要になるのではないかと感じた。
エピローグ部分では今作と前作の両主人公の邂逅シーンがあるし、QDも複数世界を股にかけた何かを企んでいるような描写があったので、今後もシリーズが続くのではないかと思う。
個人的にはシリーズものを作る場合、ランスシリーズのように登場人物を共通としてしまうと、途中からシリーズを始めるのが難しくなってしまったり、プレイしていても色々と忘れたりするので、世界観だけを共通とするイブニクルシリーズの方式が無難ではないかと感じた。


・ゲームシステムは前作からの踏襲

続編ではないとはいえシリーズものだけあって、本作は前作のゲームシステムを踏襲している。
前作の詳細なゲームシステムは失念してしまったので、細かい部分の比較は行えないのだが、前作と似たプレイフィールの比較的オーソドックスなコマンド式のRPGとなっている。
スキルを使用するのに要求されるポイント(BP)が、各ユニットの行動順が回ってきた時に1回復し、最大で5までしか保有できないのが面白い部分で、殆どのスキルは消費BPが2以上のため、ボス戦などでは如何にBPを管理するかが勝利への鍵だった。
また、BPは宿屋での休息やアイテム使用なしで回復するため、スキルの連続使用はできないものの、一般的なRPGのような長期的な(次の宿屋までの)マネジメントは必要ないのだが、回復スキルが存在しないため、HPの方で長期的なマネジメントが要求されるバランスになっている。
本作の回復リソースはアレクがMPを消費して使用するスキルに限られており、MPは最大でも10までしか成長しない上に、例えば、理論上では一番MP効率の良い、パーティ全員のHP35%を回復スキルの場合でもMPを2消費する。
MPの回復は宿での休息の他、フィールド上にあるMP回復ポイントでも回復できるのだが、回復ポイントの数は少ないため(大体のボス戦前にはHP/MP全回復ポイントがあるため、万全の状態で挑める)、回復リソースは非常に限られていると言える。
そのため、意識してレベルを多めに上げていれば別だが、雑魚戦にも気を使う必要があるバランスになっており、被ダメを抑えるように立ち回らないと、何度も宿屋に戻る羽目になってしまう。
しかし、一部の状況を除き、転移魔法でノーコストで手軽に街に戻れるので、レベリングをしていたと思えば、何度も宿屋に戻るのは大きな苦にならなかった。
ただ、雑魚戦にも気を使う割にはエンカウント率は高めな印象で、オート戦闘機能もあるのだが、通常攻撃を繰り返すだけの仕様で殆ど役に立たないため、雑魚戦の多さは少し面倒に感じた。
難易度は低くはないが、ある程度レベリングを行えばボスも含めて大きく苦戦しないバランスになっていたが、ラスボスは例外で、急に難易度が上がったと感じた。
かなりの回数の試行錯誤をした末に、運もあって撃破できたのだが、ストーリー的に一番盛り上がっているタイミングで何度もやり直したり、レベル上げに引き返したりするのは萎えるので、個人的にはラスボスの難易度を急激に上げる手法は好きではなかった。
また、さらなる強敵に挑戦したい人向けには、ワールドマップ上には倒す必要のないボスが随所に配置されているので、増々ラスボスの難易度を上げる必要がなかったのではないかと感じた。


・やや面倒くさい英雄病システム

本作で新たに追加された要素として、英雄病システムがある。
英雄病は英雄病という一つの病気ではなく、病気にかかりやすく、そして治療困難なスキル使用者の症状を総称するもので、英雄病と一口に言っても様々な種類の病気がある。
ストーリー上での重要な設定であるだけでなく、ゲームシステムにも英雄病は落とし込まれており、戦闘を行う度に英雄病深度というゲージが増えていき、100%になるとヒロインがランダムで病気にかかるシステムとなっている。
稀にプラス効果もある病気もあるが、基本的にはマイナス要素ばかりで、プラス要素のある病気もマイナス要素の方が強いので、病気になると治療する必要がある。
一時的に治療するには宿屋で休息すればいいのだが、撲滅する(再発しないため)には街に戻り、ホスピスで詳しい症状と治療に必要なアイテムを調べ、その後、アイテムを採取しに行くという流れになっている。
単に戦闘しているだけで、ヒロインは勝手に状態異常になってしまうのだから面倒なシステムではあるのだが、その分、病気を撲滅した時には治療したヒロインのステータスを伸ばせたり、嫁イベントを見るために必要な「カルテ」が手に入るので、基本的には苦ではなかった。
ボーナスを割り振れるステータスには、クリティカル率や連撃率などのレベルアップでは上がらないステータスも上げることができるので、一回ボーナスを割り振った程度では体感できないが、ある程度ボーナスを積み重ねると、体感できる違いがあるのもよかった。
ただし、終盤の長丁場のダンジョンや、転移魔法を一時的に使用できない状態で複数の英雄病に罹った時には、HP回復手段が限られていることもあって、大きなストレスを感じた。
また、現在のチャプターで治療できない病気には罹らないように配慮されているのだが(例えば、3章をプレイ中に4章以降でしか行けない場所に治療アイテムがある状態)、逆に3章の終盤でしか行けない場所に治療アイテムがある病気には、3章の序盤でも罹ってしまうので、その場合、しばらくは治せない病気と付き合う必要があり、面倒に感じた。
当然だが、無限に病気に罹るわけではなく、各章で発生する病気の種類は決まっているので、積極的に戦闘を行い、羅患する病気を都度撲滅していれば、各章の終盤では英雄病には罹らない状態になる。
フィールド上の赤トゲ(敵とのエンカウント)に全部触れる、多めに戦闘をこなす自分のプレイスタイルだと、各章終盤では英雄病に罹らない状態になっていた。
結局の所、英雄病システムはやや面倒くさいシステムではあるのだが、撲滅すればリターンもあるし、シュールな症状の病気が多く、病気関連の会話は面白かったので、もう少し調整してほしいと感じた部分もあったが、個人的には嫌いではなかった。
また、英雄病のせいで状態異常になる代わり(?)に、状態異常攻撃をしてくる敵は非常に少なく、ピヨリ(1ターン行動不能)、毒、石化程度しか状態異常は存在しなかった。
ピヨリは敵味方共にメジャーだったが、毒や石化は一部のボスとザコ敵が使用してくるだけで、こちら側の治療手段もアレクのBPを消費する単体治療スキルのみのため、敵からの状態異常攻撃を意識することは少なかったので、英雄病前提のバランスになっていると感じた。
それだけに、状態異常効果付きの全体攻撃を使用してくるラスボスの理不尽さを強く感じてしまったのだが・・・。


・前作から大幅に安定化したグラフィック

本作のCG枚数は大ボリュームの118枚(117枚かもしれない)となっており、プレイ時間の長い作品であるにも関わらず、CG枚数の多さを実感できるボリュームだった。
アリスソフトの常で、立ち絵は変化せず、メッセージウィンドウのフェイス画面だけが変化するのは少々残念だったが、メインヒロインにはいくつかの立ち絵が用意されていたこともあり、不満は感じなかった。
CG1枚1枚は特別にクオリティが高いというわけではないが、エロゲーでは余り見ないタイプの原画で、独特の魅力があった。
前作も原画担当者は同じで魅力はあったのだが、安定していないCGが多いのが残念な点だったのに対し、本作では原画が大幅に安定化していた。
それでも、立ち絵の表情等を基準として考えた場合、ちょっと違和感のあるCGもいくらかあったが、前作に比べるとグラフィック面での魅力は大幅に増していた。


・設定を活かしたエッチシーンあり

シーン回想がCG回想と一纏めにされているため、本作のHシーン回数をカウントするのは難しいのだが、ストーリーやゲームパートだけでなく、エッチシーンも満足できるボリュームだった。
大凡で全体の3~4割程度が任意のタイミングで発生させることができる(ストーリーに直接関係のない)エッチシーン、残りがストーリー中に発生するエッチシーンという配分で、そのため、大ボリュームのエッチシーンを、ストーリーのテンポを乱されることなく楽しめた。
任意で閲覧できる嫁イベントは各章の最初で開放されるため、普通に英雄病を撲滅しながらプレイしてカルテを所持している場合、丁度切りが良いタイミングで見ることができるのもよかった。
ただし、総ボリュームはすごかったものの、各シーンの尺は短めなものが多かった。

前作よりも回数は減ったものの、本作にも一部のキャラとサブ嫁に陵辱イベントがある。
ただし、明確な陵辱イベント(ヒロインが主人公以外に犯される)は3回だけだった。
「もしかして、これ陵辱されるんじゃね?」と思った展開はそれ以外にも何回かあったのだが、良くも悪くも前作よりも少なかった。

本作のエッチシーンの多くが治療目的のセックスのため、必要に応じて病状に対応するので、シーン内容がバラエティに富んでいた。
痒いのを我慢させつつ、自身で掻かないように体を縛った状態でエッチしたり、マグロ状態でのセックスだったりと、本作の英雄病の設定を活かしているのは面白かった。
とはいえ、大半の病気の症状はエッチに影響を及ぼさないもののため、病状による特徴的なエッチシーンは少数で、それ以外のシーンはノーマルなものが殆どだった。


・システム周りに大きな不満なし

本作のコンフィグやシステム周りに大きな不満はなく、設定したい項目は概ね設定することができた。
ウィンドウサイズの変更が可能なだけでなく、フルスクリーン時に非アクティブで最小化するか否か(デュアルモニター対応)を設定することもできる。
唯一の不満点はボイスの音量設定についてで、ボイス全体と女性ボイス、男性ボイスの三種類しか設定できず、キャラごとの音量調節はできなかった。
ちなみに、ボイスについてだが、前作同様にフルボイスではなくパートボイスとなっている。
イチャラブイベントやメインストーリーが大きく展開する場面などの重要なシーンは基本的にボイス付きなので、不満は感じなかった。


・まとめ

ゲームパートとストーリー、そしてエッチシーンの全てが楽しめる作品で、正にエロゲー版の王道RPGの内容だった。
ストーリー上で重要な設定である英雄病は、ゲームシステムだけでなくエッチシーンにも影響しており、世界観を堪能することができた。
ゲームパートはオーソドックスなコマンド式RPGだが、ラスボスを除けば、戦術を考える必要はあるが、大きく詰まることのない丁度よいバランスだった。