ヒロインは良かったが、ボリュームとシステム周りに不満あり。
・殆ど活かされていない設定
「幼馴染や義姉と数年ぶりに再開」や「シェアハウスでヒロインたちとひとつ屋根の下」等の無数に見かける設定満載の作品だが、本作のヒロインたちはハイスペックだったり学園で人気者だったりと、それぞれが高嶺の花の存在で、そんなヒロインたち相手にモテモテ気分を味わえる展開だったので、使い古された設定とはいえ、設定自体は良かったと思う。
しかしながら、「シェアハウス」であることが強調されているのに、余りシェアハウスの設定がエロとストーリーの両面で活かされていないのが勿体無い作品だった。
共通ルートは非常に短く、各ヒロインの顔見せ程度のシーンと、本番のないHシーンが一回ずつ終わった後、直ぐに個別ルートに分岐してしまい、個別ルートでは他ヒロインの登場する場面も少ないため、全ヒロインとひとつ屋根の下で住んでいる雰囲気は余り味わえなかった。
個別ルートにしても、日常シーンやエロの絡まないイチャラブは極限まで削られており、なし崩し的に恋人関係になることも多く、学園モノ定番の文化祭イベントすら3クリックで終了してしまい、エッチしてたらいつの間にかエンディングという構成だったので、いくら抜きゲーとはいえ、もう少しヒロインの魅力を感じられる構成にしてほしかった。
敢えて本作の設定を活かした場面を挙げるとすれば、同居人にいつバレてもおかしくない状況でエッチをするシーンが多いことで、声を出してはいけない状況でエッチなことをするシチュエーションが好きなら刺さる内容かもしれない。
ただ、シェアハウス内だけでなく、学園でも同じようなシチュエーションでエッチなことをするシーンが多く、シェアハウスを強調するには弱いとも感じたので、いっそのこと、エッチしてるのがバレて3P突入とかがあれば良かったのにと思った。
もう一つ公式HPを見て期待していた要素として、それぞれのヒロインがどういった理由で主人公を好きになるかが書かれていることが挙げられるのだが、プレイしていてその理由を実感できるヒロインの方が少なかった。
彩は引っ込み思案だった幼少期に主人公が外の世界に引っ張り出してくれたお陰で、今の自分があると考えているため、主人公のことを好きだということは理解できたし、楓音は常に自分の先を行く主人公をライバル視していたのが、いつの間にか気になる存在に・・・というのも多少は感じることができた。
しかし、残りの3人は主人公を好きになった理由が曖昧で、冬華が「主人公の器のデカさに胸を撃ち抜かれた」だの、さくらの「甘えられる対象がいると弱い」などは全く感じられなかった。
リナは単に尺が短すぎるのが原因で、もう少しエロ以外にも力を入れていれば、「おふざけからマジになっていく」過程が実感できたと思う。
典型的な主人公ハーレムモノではあるが、それに明確な理由や過程を設定することで、不自然さや唐突さを感じずにハーレムやそこに至る過程を楽しめたかもしれないのに、その設定が活かされていないのは残念だった。
本作のもう一つの残念な点はテキストに妙なクセがあることで、ヒロインや主人公の台詞に(照)とか(恥)、挙句の果てには(しょんぼり)などと書かれていることで、物凄く違和感があった。
(照)とか(笑)みたいなのは、ト書きとして書くものであって、普通は地の文や声優の演技に織り込むものだろうと言いたいし、バカっぽく見えるのでやめてほしかった。
・ヒロインは魅力的
上述したように、本作は日常シーンを筆頭にボリュームが不足しており、設定も余り活かせていなかったのだが、それにも関わらず、ヒロインは非常に魅力的だった。
ストレートに好意を伝えてくる彩に、素直ではないが、呆れた風を装いながらもしっかりとお願いを聞いてくれる楓音、好意を言葉よりも行動で示す冬華、イタズラっぽく甘えてくるリナ、大人の余裕で包み込んでくれるさくらと、ヒロインはそれぞれに異なるタイプでありながら、どれも主人公に対する好意が非常にわかりやすいのが良かった。
行動が積極的なのも素晴らしい点で、他の女の子と少し親しげに会話しているだけで嫉妬して、近くに他の人がいるのにエッチなことをしてくるのも可愛かった。
また、短いながらエッチの前後の会話も、それぞれのヒロインのキャラクター性を感じられるものが多かった。
自分が一番好きだったヒロインは楓音で、ツンデレというよりは主人公をライバル視しているために素直になれないといった感じだった。
エッチの最中も素直になれないことが多かったのが、徐々に素直になっていく過程や、素直になれない時もやることは積極的だったりと、楓音の魅力を活かした言動が多かった。
それだけに本作のボリュームの少なさが勿体なく感じられ、ヒロイン同士のやり取りや、主人公とのエロの絡まない恋人同士のやり取りなどを通して、もっと色んな表情のヒロインを見たかった。
・頭身が高めのキャラデザ
本作のCG枚数は全部で70枚で、フルプライスとしてはやや少なめのボリュームとなっており、それを補う何か(テキストボリュームやCG差分、立ち絵のボリュームなど)があるわけではないので、物足りなく感じた。
差分も少ないため、最初からCG上では脱衣状態なのも残念だった。
更に、エッチシーン導入部のキスシーンなどをブラックアウトにして誤魔化していいるのも、ボリューム不足を目立たせる要因だった。
エロゲーとしては少数派の頭身が高めのキャラデザが本作の特徴の一つで、新鮮さもあって個人的には好みだった。
表情にやや違和感のあるCGもあったが、クオリティは安定しており、ボリュームを除けばCGに関しては優秀だった。
・バレそうなシチュエーションが多いエッチシーン
本作のシーン回想数は全部で70回となっているが、実際にはCG1枚につき回想1枠のため、ラッキースケベや全くエロと関係のないシーンも回想数に含まれており、実際の回数は各ヒロイン7~8回+ハーレム4回となっている。
ストーリーらしいストーリーもないのにこの回数は、率直にって物足りなかった。
基本的にシーンの尺は長めで、大抵は二回戦まであったが、前戯のみで終わってしまうシーンもあり、最後は「その後メチャクチャセックスした」みたいな一言で済まされるシーンもそれなりの数あった。
個人的にはエッチシーンにBGVは必要ないと考えているのだが(勿論あれば歓迎するが)、それはクリックで音声を停止するかどうかを設定できることが前提の話で、クリックで音声を強制停止されてしまう本作ではBGVが欲しいと感じたが、残念ながら用意されていなかった。
プレイ内容は上述したように、バレそうな状況でエッチを行うシーンが多く、シェアハウス内だけでなく学園でのシーンも各ヒロインにあった。
誰かが通りかかって一瞬だけドキッとするという内容ではなく、他のヒロインや学園生と会話しながら、下半身だけをバレないように隠してとか、トイレの個室等の声を出せば直ぐにバレる環境などでのエッチシーンだったので、ちょっとしたアクセントというよりも、明確にそういったシチュエーションに興奮する性癖をターゲットにした内容だと感じた。
そのため、ヒロインが喘ぎ声を我慢する姿や、逆に自身(主人公)が平静を装う必要がある状態でフェラや手コキをされるシーンが好きな人には刺さる内容だと感じた。
個人的には余り興味のないジャンルだったが、ヒロインによってどちらが攻める側か変化するし、それ以外の部分に関しても内容に幅があったので、飽きずに最後までプレイすることができた。
エッチシーンの他の特徴としては、コスプレエッチが各ヒロインに用意されていることで、チア、メイド、バニー、レースクイーンなどの定番のコスチュームが用意されていた。
しかし、上述したようにCGの差分が少なく、最初から半脱ぎ状態なので、構図によっては肝心のコスチュームの存在感が薄いものがあった。
・お粗末なシステム周り
本作のコンフィグやシステムを一言で表すなら「お粗末」で、コンフィグ項目の乏しさだけでなく、バグらしきものも散見された。
昨今は当たり前に設定できるクリック(改ページ)で音声を停止するかどうかの設定ができず、クリックで音声停止を強制されるのを筆頭に、キャラごとの音声ボリューム調整ができないことなど、非常に不便だった。
以前はコンフィグ項目が少ないことを同人レベルなどと評していたが、同人ゲームも便利になりつつある現在では、同人レベルと評するのも同人に失礼なレベルだった。
単純に必須レベルの機能が1つ2つ欠けていただけで、普通はそこまで悪く言わないのだが、本作の場合は少しテストプレイしただけで発見できるであろう不具合もあったので、余計に印象が悪かった。
一つ目の不具合はバックログが適切に表示されないことで、最初のページは普通に表示されるのだが、スクロールしてログを遡ると文字が二重三重に重なってしまい、ログが非常に読みづらくなるものだった。
勢い余って1テキスト読み飛ばしてしまった程度の場合は問題なく使用可能だが、話の流れを失念した等でテキストを遡る場合は、ログを読むのに無用の苦労を強いられた。
二つ目の不具合はタイトル画面に遷移する時にブラックアウトしてフリーズするもので、タイトル画面に戻る機能を使用した時だけでなく、エンドロールからタイトル画面に遷移する時にもフリーズすることがあった。
ただ、毎回フリーズするわけではないし、タイトル画面に戻る時は基本的にセーブした直後なので、これは大きな問題ではなかった。
三つ目の不具合はウィンドウサイズをデフォルトサイズ以外に変更すると、タイトル画面を表示した時にタイトルメニューが表示されなくなり、何もできなくなるというものだった。
当然コンフィグ画面を開くこともできないので、コンフィグ設定データを削除するしか解決策を発見できなかったのだが、セーブデータも割と面倒くさい場所に保存されていて、探すのに手間取った。
不具合に関してはプレイヤー側の個別環境も要因となるので、全員が同じ不具合に遭遇するかは不明だが、少なくともバックログやタイトルメニューの不具合は、それなりの数のエロゲーを現在使用しているPCでプレイしていて初めて遭遇した不具合なので、制作側に一定の非があるのではないかと思う。
不具合以外にもクリック(改ページ)する度に、テキストウィンドウメニューが一瞬チラついたりと、詰めが甘い部分が散見されたので、システム周りには終始悩まされる作品だった。
・まとめ
ヒロインのキャラクター性やCG(キャラデザ)は良かったものの、エッチシーン、ストーリーパート共にボリュームに不満の残るもので、せっかくのヒロインの魅力をしっかりと楽しむことができなかった。
ボリューム以外にも、コンフィグやシステム周りの不便さや不具合等の不満点も多く、ヒロインに一定の魅力は感じたものの、全体的には残念な作品だった。