前作よりも更に面白かった。
・様々な価値観がぶつかり合う燃えゲー
陰謀渦巻く前線の特務部隊に配属された新米兵士のアシュレイが、過酷な運命に翻弄されながらも必死に生き抜く様を描く本作は、単なるサクセスストーリーではなく、様々な価値観がぶつかりあうテーマ性を持った作品となっている。
英雄に憧れる主人公が確固たる信念を持っているのは勿論だが、それ以外のキャラもしっかりとした価値観を持っており、それぞれのキャラクターの思惑や思想が複雑に交錯しぶつかり合うのが面白かった。
バトルモノを盛り上げるのに必須の魅力的な敵キャラもしっかりと登場し、しかも単純でわかりやすい悪役ではないので、それぞれの主張のぶつかり合いが燃えるものになっていた。
また、部隊となる街は三国が睨み合う三つ巴の状況で、その上にどの組織にも所属しないケルベロスの存在や、同勢力内での睨み合いもあるので、マクロ的な視点も複雑で面白かった。
ヒロイン三人は所属する勢力が違うため、それぞれのルートでの展開も大きく違うので、最後までダレること一気にプレイすることができた。
ストーリー重視の作品の場合、作品を最大限楽しむためには攻略順序に気を払う必要のある作品もあるが、本作の場合はトゥルールートは三人を攻略するまでロックされているし、お互いのルートのネタバレを含んだりはしないので余り気を使う必要はないのだが、レインルートは他ルートよりもスケールが壮大なので、レインルートは後回しにしたほうがいいと感じた。
勿論、ストーリーだけでなく戦闘描写も素晴らしく、テキストだけでなくエフェクトや効果音などの演出も素晴らしかった。
本作の戦闘時の詠唱はギリシャ神話が元になっているものがメインで、元ネタも含めて厨二心を刺激されるものだったので、戦闘を盛り上げるのに一役買っていた。
また、前作の「シルヴァリオヴェンデッタ」では全くマッチしておらず非常にうざかった戦闘時のボーカル付きBGMだが、今作もBGMにボーカルが入っているものの、戦闘シーンにマッチするような曲になっていたので、今作ではむしろ戦闘シーンを盛り上げてくれる存在となっていた。
反面、日常シーンのBGMではボーカルが悪目立ちしてる場面もあったので、ヴィジュアルノベルのBGMにはボーカルが無い方が安牌なのではないかと思ったが、前作に比べると格段に良くなっていたし、何よりも新しいことに挑戦するというのは非常に大事なことだと思うので、本作のBGMは総合的には評価できるものだったと思う。
・前作プレイは必須
本作は明確なシルヴァリオヴェンデッタの続編となっており、単にストーリーや登場人物のバックグラウンドを理解するだけでなく、背景にあるメッセージ性を解釈するためにも前作のプレイは必須だと感じた。
舞台となる街が前作とは違うため、前作のキャラは主人公と意外な設定が明らかになるクジョウ姉妹しか登場しないが、それ以外も裏では暗躍したり、今作の登場キャラと繋がりが仄めかされたりはするのでプレイしていないともやもやしたものが残るだろう。
また、世界観に関してもおさらいレベルのものなので、本作からプレイしていると世界観に慣れる前に物語が佳境に入ってしまうのではないかと思う。
反面、前作の主人公がアシュレイと因縁深く、不倶戴天の敵として殺し合ったり、逆にピンチには力を貸したりと美味しい場面で活躍するので、前作プレイヤーには燃える展開が満載だった。
他にも、物語上で重要な鍵を握る人物たちの成り立ちに前作のラスボスであるヴァルゼライドが深く影響を与えていたりと、シルヴァリオシリーズ第二部という言葉が相応しい作品だった。
前作では設定だけが語られていたものの、登場の機会が(殆ど)無かった聖教皇国や商業連合国が今作では登場するのも嬉しい点で、本シリーズの独特の世界観を更に深く知ることができた。
総じて、前作の英雄とは、そして人間とは何なのかというテーマを更に突き詰めた作品なので、公式HPでは「前作未プレイでもすんなり物語を楽しむことができます」と書かれていても、前作を先にプレイするのは本作を楽しむ上での必要条件だと感じた。
・ストーリー上意味のあるHシーン
本作のHシーン数は全部で7回で、内訳はメインヒロイン三人が2回ずつ、ノーマル(バッド?)エンド代わりのアリスが1回となっている。
各シーンの尺は本作のようなジャンルとしては意外なことにたっぷりとあった。
それだけでなく、性行為がストーリー上で重要なターニングポイントとなっており、「特定の人を愛する=英雄としての資格を喪失」となり、主人公はヒロインとの性行為の後に新たな壁にぶち当たることになる。
ストーリー重視のゲームでは形式的なものになりがちなHシーンだが、本作はそれをストーリー上のギミックとして組み込んでいるのが面白いと感じた。
性行為の内容自体には特筆するものはないのだが、主人公をシーン中に喋らせないためにテキストが独特で、主人公が自身を俯瞰的な視点で観察しているような官能小説に近い文体だった。
本作のCG枚数はCG鑑賞モードでは130枚となっているが、同一CGなのに服装が違うために別扱いとなっているものや、枚数としてカウントするのは微妙なもの、前作からの流用などを除くと100枚くらいだった。
グラフィックはボリュームだけでなくクオリティ面も文句無しで、戦闘シーンの素晴らしさは演出だけでなく、豊富なCG(全体の約6割が戦闘シーン)による部分も大きかった。
・相変わらずスキップできないエンドロール
本作のコンフィグ関連は基本的には優れており、細かい部分まで設定できるだけでなく、キーボードの1~0とマウスジェスチャに任意の機能をアサインすることができる。
また、ウィンドウサイズも自由に変更することが可能で、次の選択肢までジャンプ機能もキーボードショートカットにあるので周回プレイも楽々だった。
戦闘エフェクトのボリューム設定は少しややこしく、ムービー扱いになっているエフェクトが多いので、ムービーと効果音の両方の音量を調節する必要があるので最初は少し戸惑った。
また、バックログを開くときにログが表示されるまでに2秒ほどの間があるのはややストレスに感じる要素で、他にもエンドロールが各ルート別扱いでスキップできないのも不便だった。