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PredawnvagabondさんのWIZARD LINKSの長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
WIZARD LINKS
ブランド
筆柿そふと
得点
92
参照数
5137

一言コメント

魔法少女モノに催眠や近親相姦という筆柿そふとの得意とするジャンルがうまくマッチしていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・数度の延期を待ち続けただけの甲斐のある作品

魔法少女という筆柿そふととしては初めてのジャンルではあるが、催眠や近親相姦を得意とする筆柿そふとらしい作品となっていて、魔法少女というジャンルとブランドの特色をうまく融合させることに成功していた。
ブランドがフラッグシップタイトルを謳うだけあって、平均的なフルプライスのボリュームを凌駕しており、ストーリーはちょっと物足りなかったが、それ意外のゲームボリュームに関しては非常に満足度が高かったので、ブランドのファンにとっては内容、ボリュームともに満足出来る作品だった。


・近親相姦、催眠モノのメーカーが放つ魔法少女作品

筆柿そふと、あるいはその前身のBLACKRAINBOWといえば、近親相姦や催眠ジャンルの作品を数多く作っているメーカーだが、本作は魔法少女という一見すると近親相姦や催眠とは関係が無さそうなジャンルの作品となっている。
ところが、筆柿そふとがフラッグシップタイトルというだけあって、魔法少女モノに催眠や近親相姦という、筆柿そふとの得意とするジャンルだけでなく、同性愛という新たな(過去作でも多少は扱われていたと思うが)背徳感を煽る要素をもしっかりと混ぜ合わされた内容となっていた。

本作ではそれらの要素を実現するために、抜きゲーとしては多くのキャラクター数が登場し、キャラクター同士の関係性も手の込んだものになっている。
主人公が二人とも女の子というのが最たるもので、標準的な男女の組み合わせの場合は二人の関係に焦点が当たりがちだが、「基本的」にはお互いは親友で、お互いの家族まで含めての交流があるので、同ジャンルの他作品よりも登場人物が多めとなっている。
更には親友という言葉だけでは言い表せない感情を主人公”ひかる”に対して持つ同姓の旭、旭に憧れるひかるの弟”ゆずる”や、ひかるに密かに想いを寄せるゆずるの親友の大悟など、登場人部が多いだけでなく、相関図も非常に凝っており、”魔を差す”悪魔たちが大活躍出来る地盤もしっかりと整っている。

主人公の二人について述べると、魔法少女であるエレナは悪魔に付け込まれないために無感情に徹しようとして、他者を遠ざけようとする典型的な魔法少女の性格で、対して、悪魔が見えるという部分を除くと一般人であるひかるは思いやりがあり、困っている人を放っておけない、悪く言うとお節介という対象的な性格をしており、エレナはひかると交流を深めることにより、どんどんと良い方向に流れていくという、魔法少女モノとしては性別を除けば王道的な組み合わせになっている。
また、お約束の展開で、悪魔たちはエレナの強みでもあり弱みでもあるひかるとその家族を(ルートによっては)先に堕としてしまい、エレナとその母であるリディアを堕とす布石にされてしまう。

個人的に嬉しい点としては、母親ヒロインが二人登場する部分で、特にリディアはメインキャラの一人として扱われるので、シーン数も多くて嬉しかった。
ゆずるを筆頭に男キャラもそれなりの数出てくるが、悪魔二人に関しては、直接的にエロい事をするシーンは皆無で、更には、ジャービスに至っては噛ませ犬ポジションで、プロローグ時点で退場してしまう。
他の男キャラもゆずるを除くとエロに関わることは少なめで、大悟に至っては1回だけ、ひかるの父親の愛妻家である正は登場回数はもっとあるが、扱いが酷いシーンが多く、悪魔か魔女に操られて妻以外の人間と関係を持ったり、ルートによっては家族にマゾペット扱いされたり、ルート問わず粗チンとバカにされるという不遇なキャラクターとなっている。
反面、ゆずるはルート問わず美味しい思いをするキャラで、ゆずるのハーレムルートや、魔を差された状態とはいえ、旭と関係を持てるルート、正規ルートでも恋人(?)ができたりと、裏の主人公のようなキャラクターだった。


・せっかくの設定が活かされていないキャラクターも

登場人物が多く、関係性も複雑な本作では、色々な設定を盛り込みすぎたせいか、メインキャラクターの3人を除けば、設定を活かしきれていないと感じるキャラクターが多かった。
特に顕著なのがゆずると旭の二人で、ゆずるの場合は姉のひかるに対する劣等感、旭の場合はエレナに対する嫉妬という、悪魔なら放っとくわけ無いだろうと思える設定をスルーしたのはどうかと思う。
他にも大悟の場合は、ひかるに対する恋心に付け込まれるという展開はあるものの、ひかるの母親である蛍を一回犯すシーン+悪魔に魔を差すために逆レイプされるシーンがあるだけで、せっかくボイスに立ち絵までつけて登場させたのに、活躍はそれだけ?と感じた。
また、ストーリーの方もおざなりで、思わせぶりな台詞がいくつかあったのに、そのまま放置されたり、正規ルートはいきなりの超展開でサクッと終了したりと、抜きゲーとはいえ物足りない部分が多かったので、もう少しストーリー面にも気を使って欲しかった。
また、公式HPから自分が想像していたストーリーとはちょっと違うというのも正直なところで、もう少し重厚というか、ストーリーにも力が入っているかと予想していたのだが、本作はあくまで普通の抜きゲーの範疇のストーリーでしかなかった。


・筆柿そふとの集大成的なHシーン

Hシーンの数は全部で69回と、フルプライスの抜きゲーとして満足のいくボリュームになっている。
内訳は複数でのシーンが多い上にレズもあったりと、かなりややこしいのでキャラ毎にカウントするのは難しいが、体感的にはエレナとリディアが大体同数くらいで、二人とほぼ同程度に蛍、次いで旭が多いように感じた。
意外と言えるかはわからないが、ひかるは少な目で、更には彼女単独のシーンが存在しないので、エロ方面に関しての存在感は旭以下だった。
見た目が女性の二人の悪魔に関しては、イレーネが3回で、オルフェナが多分2回となっていて、杖の魔女のヤエルとアクサは二人合わせて5回ほどとなっている。
猥語修正に関しては、ピー音が気にならない程度に一瞬だけ入る。
シーンの尺に関しては、バラつきが大きいため、一概には言えないが、それも回想に入れるの?と言いたくなるようなシーンもあったが、逆に長いシーンはかなり長いので、実用性という点に関してはとても高いと思う。

魔法少女モノとは言っても筆柿そふとの作品なので、本作でも催眠術のような認識操作や、文字通りに悪魔の囁きで常識を歪めたりといった展開が多めとなっている。
また、近親相姦モノも得意なブランドなので、悪魔の手によって少しずつタブーに対するボーダーラインが下がっていく過程は、背徳的な雰囲気もしっかりと出ていた。
他にも、ターゲットたちが知らぬ間に周りの人間を陥落させて、搦手で徐々に追い込んでいくといった、ジワジワと侵蝕していく展開も多い。
杖の魔女は何でもありのチート級の能力を持つくせに、防御は紙というキャラで、大体のルートではエレナやリディアよりも先に陥落するので、その能力を戦闘よりもエレナとリディアの調教のために振るう機会が多かった。
そのため、エレナとリディアの二人に関しては、調教された後に記憶を封印されて、本人は清純な体のつもりなのに、いつの間にか調教されてるとか、衆人監修の前で破廉恥な格好をさせて羞恥攻めにする展開もあった。
内容そのものに関しては、非常に多岐に渡るため、大雑把な傾向を述べるのも難しいが、操られている見知らぬ男に犯される(輪姦される)という展開は魔法少女モノとしては少な目(いくらかはある)で、常識を改変されたり操られている家族や親友などの身近な人物に性的なことをされるというものが多く、襲われる側も嫌がっているというよりも、驚きや戸惑いが大きいというシーンが多かった。
陥落後のシーンが思っていたよりも多く、ゆずるハーレムルートがその最たる例だが、陥落と言っても悪堕ちみたいな感じではなく(それに近いのも少しはあるが)、本人たちは正常なつもりでも、常識が歪められているという形での陥落なので、他の魔法少女作品の悪堕ちと違う、如何にも催眠作品らしい陥落の仕方だったので、悪堕ちに興味が無い自分でも楽しめた。

総じて、筆柿そふと、あるいはBLACKRAINBOWらしい内容が多いので、ブランドのファンには安定して楽しめると感じた反面、登場キャラが多い上にルートも複数あるため、一線を超える(堕ちる)のが早いと感じることも多かった。
この部分に関しては、フルプライスとはいえボリュームに制限があるため仕方のない事ではあるので、多キャラ多ルートにしてあっさり目だがバリエーション豊富な方が良いのか、ルートなりキャラなりを減らしてしっかりと描写した方が良いのかは好みの問題だと思うので、良い/悪いではなく、あくまで本作の傾向程度に考えておくべきだと思う。
ただ、出来る範囲内で最大限、堕ちるのが早いのに違和感が無いように作られていて、プレイしていて堕ちるのが早いなとは思ったが、違和感はなかった。
例えば、神代姉弟の二人に関しては、最初に悪魔の誘導により両親の営みを見せつつ、(恋人や伴侶に限らず)愛しあう者同士が性的な事をするのは普通のことだと悪魔が囁くことにより、近親相姦や同性間の行為に関するボーダーラインを下げ、その後の展開の布石としていたりと、背徳感重視の作品を多数作っているメーカーだけあって、その辺りは得意なのだろう。


・大ボリュームのCG

CG枚数は全部で128枚となっており、流石にフラッグシップタイトルと名乗るだけのことはあるボリュームとなっている。
その内の34枚程がエロに関係のないCGとなっていて、抜きゲーとしては戦闘シーン等のCGもかなり多めとなっているが、HCGだけでも平均的なフルプライスの枚数以上のボリュームなので、CGのボリュームに関して不満を抱くことは無いと思う。
キスや断面図のカットインも少数ながら存在し、また、陰毛も全キャラにある。
質の方も非常に高く、原画と塗りの両面で素晴らしかった。


・コンプリートするのは結構大変

本作のシステム面に関しては、可もなく不可もなしで、必要な機能は一通り揃っていた。
フルスクリーンは仮想最大化か全画面の2択から選べるものの、ウィンドウサイズは固定だったので、ウィンドウサイズも可変にするか、もう少しサイズにバリエーションが欲しかった。
細かい部分ではあるが、不満点としてはシステムSEのボリュームが調節できずオンかオフにしか出来ないことと、各キャラのボリュームもオンかオフには出来るがボリュームが調節出来ないことだった。

本作は選択肢の数が多めで、その割には選択肢を間違うと即バッドエンドとなるデッドエンド方式では無いので、自力でコンプリートするとなると結構な労力がかかる。
基本的には悪魔が誰を先に陥落させるかを選び、それによって展開が変わるというものなのだが、ルートを見つけるのはともかく、要所要所でHシーンが増えたりする場合もあり、そういうのを発見するのは結構大変だったというか、途中からは攻略サイトを参考にしてコンプリートした。
その割にスキップ機能がイマイチで、選択肢ジャンプが無いだけでなく、スキップ状態でも変身アニメーションがしっかりと入るためテンポが悪かった。
アニメーションに関しては、設定で動画演出そのものをキャンセルすれば大丈夫なのだが、その場合は設定を変更しなければ、普通に読み進めている時でもアニメーションは表示されなくなってしまうので、やはり選択肢ジャンプは欲しかった。