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Predawnvagabondさんのウルスラグナ ~征戦のデュエリスト~の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
ウルスラグナ ~征戦のデュエリスト~
ブランド
アストロノーツ・シリウス
得点
92
参照数
1955

一言コメント

TCGというより、TCG風のRPGだと思う。それにしてもCG枚数の数が半端ない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

TCG+RPGという耳慣れないジャンルの本作だが、どちらかというと、TCG風インターフェイスのRPGとも言えるバランスになっており、大概の場合、レベルを上げれば何とかなるようになっていた。
ストーリーは単にTCGで頂点を目指すというだけでなく、異世界が出てきたりと、ファンタジーとTCGの世界観が上手い具合に組み合わされており、抜きゲーメーカーとしての意地が垣間見えるAstronautsのハイクオリティのHシーンもあって、素晴らしかった。

・続編ありきの終わり方

最初に言ってしまうと、本作はこの一本で完結するわけではなく、完全に続編ありきの終わり方をする。
基本的に、(無告知での)続編ありきの終わり方は好きではないのだが、本作はシナリオに満足できるだけのボリュームがあったため、余り気にならなかった。
また、世界観も非常に魅力的で、単なるTCGでのし上がって行くだけでなく、謎の異世界「メーア」が絡んできたりと、プレイしていてグイグイと物語に惹きこまれていく位に良かったので、これだけしっかりと作りこまれた世界観なら、続編に続くのもありかな、と思わせるだけのものもあった。
本作のTCGも、一般的にTCGと聞くと思い浮かべるような硬派なファンタジーの絵柄なため、異世界というファンタジー世界観との親和性も高かったのも、面白かった一因だったし、展開も早めで、早い段階でメーアが登場するので、序盤にだれることなく物語りに入り込めるのも良かった。
それと、続編ありきの終わり方ではあるものの、それはあくまで大きな世界観全体で見た場合の話で、例えば、主人公の父親の雪辱を晴らすという目的や、ヒロインとの関係などの個人的なスケールのシナリオは、本作中である程度の決着がつくため、もやもやしたものは、余り残らなかった。

更に、ラスボスを倒した後に、夏休み篇というしっかりとした尺のチャプターが用意されており、FD的な内容も用意されているのが嬉しかった。
大きな事件が一段落して、続編までの中休み的な部分のシナリオだが、Hシーンが多めに用意されており、ストーリーの内容もコミカルなものが多く、本編とは少し違った雰囲気でこちらも面白かった。
また、ハーレムエッチ(3P,4P)が用意されているのも嬉しい部分だった。

・まさにエロゲーの主人公と言える主人公

本作の主人公である彰は、勝負師である父親と幼いころから世界中を旅して、裏世界での賭け勝負などを散々経験してきており、常識的な教育を受けたことが無いという背景設定のため、かなり破天荒な性格となっている。
性格的にはデモニオンの主人公に近く、良い意味で尊大で自信家、そしてそれが単なるビッグマウスでは無いので、なかなかにカッコいい主人公となっている。
当然、一般的な倫理観も薄いため、デュエルで敗北してしまったヒロインを次々と食っていくのだが、釣った魚にもしっかりと餌をあげるタイプだし、最終的にはヒロインも主人公LOVEになるため、非道な印象は無かった。
また、裏世界での賭け事で生活していたため、かなりドライな考え方をするのだが、ヒロインに影響されて少しずつ変わっていく展開も良かった。
デュエルに対する姿勢も主人公の魅力の一つで、父親を嵌めた相手を倒すという目的がある割にはデュエルに対しては真摯で、どんな状況でも自分の置かれた状況やデュエルを楽しめる生粋の勝負師で、デュエルバカという形容詞がぴったりのキャラクターだった。

・豊富なヒロイン

完全な一本道のシナリオのため、どこまでがヒロインなのかカウントしづらいが、主人公とのHシーンのあるヒロインは全部で12人も登場する。
キャラクターのバラエティも豊富で、それだけの数のヒロインが登場するのに、似たような属性のキャラクターがいないのも良かった。
それだけのヒロインが多ければ、個別イベントはほとんど無いと思うかもしれないが、本作では個別イベントもしっかりしており、流石にヒロイン4~5人の学園ADVと比べるとあれだが、掘り下げもしっかりしていた。
ファンタジーな世界観なので、ファンタジーなキャラクターも4人ほど登場するが、見た目は人間と同じため、ヴィジュアル的には、危ない鎧を着た女の子程度にしか見えない。それだけでも、十分にファンタジー的かもしれないが、サキュバスとか獣人みたいなもう少し露骨なファンタジーキャラクターが出ても良かったんじゃないかとも思った。
個人的には、人間と交わることによりどんどん変わっていく監視者4人組が特に印象に残ったが、その中でも物語を通して大きく変わるキスキルが一番印象に残った。


・TCG+RPGというより、TCG風のRPG

本作はストーリー的にはTCGものなのだが、作中の登場人物たちが言うような、カードの強さがプレイヤーの強さを決めるわけではないという旨の発言に反して、実際はデッキ構成や戦略よりも、カードのレベルの高さの方が重要だった。
デッキ構成はリーダーカード1枚、ガーディアン6枚、スペルカード30枚という構成になるのだが、リーダーやガーディアンのレベルの方がスペルカードの構成よりも大事で、ほとんどの場合行き詰ってもレベルを上げれば何とかなってしまうバランスだった。
スペルカードの内容はオーソドックスなものしかなく、実際に使用するのは10種類くらいで試行錯誤する余地は少なく、せいぜい相手のデッキに合わせていらないカードを抜いて、他のカードを引く確立を上げるくらいしか、デッキを弄る余地が無かった。
一応、リーダーやガーディアンカードにはそれぞれ属性が設定されており、無属性以外は弱点属性を持っているので、相手の属性に合わせてメタデッキを組むことも可能だが、いくら弱点属性でもレベル差が大きいと勝てないので、レベルにモノを言わせてごり押しした方が早い場合の方が多かった。
特に、一番使用されるであろうリーダーカードのキスキルの属性は闇という、光属性とはお互いに余ダメージが上昇するという仕様のため、闇属性(光属性)は他よりも、ごり押しがしやすい属性だった。
また、ゲームの仕様が先行側=プレイヤーが圧倒的に有利な仕様になっており、1ターン目で最大限ダメージを与える戦略を組んでしまうと、どんな状況でも使えるということも多かった。

・デッキの吟味を阻むレベルキャップ仕様

本作ではデッキ構成よりもレベルの方が大事ということで、有用な新規カードを入手しても、事前にレベルアップする必要があるため、相手に合わせてほいほいとデッキの構成を変えるのが面倒なことになっている。
とはいえ、敵のカードレベルと自分のカードレベルの差が大きければ大きいほど、レベルの低いカードは経験値が大量にもらえる仕様になっているので、デッキ全体の再構成となるとともかく、1,2枚のガーディアンカードを入れ替えるくらいならば、気軽に出来る。ただしそれも中盤までの話である。
本作のカードの最大レベルは50なのだが、最初は25で頭打ちになるように設定されている。
リーダーカードはストーリーの進行で全カード一律でレベルキャップが5ずつ開放されていくので、特に問題は無いのだが、肝心のガーディアンカードのレベルキャップを開放するには、それぞれのカードのコストに合わせたスタークォーツという合成素材が必要となっている。
スタークォーツ1枚につき、レベルキャップが5ずつ上がっていくようになっているので、終盤で例えば45くらいまで上げるならば、各ガーディアンにつき4枚のスタークォーツが必要となる。
一応それなりの数が手に入るので、2~3デッキ程度なら大きな問題も出ないのだが、例えば、監視者4人に合わせて4属性のカードデッキを作ってしまうと、数が足りず面倒なことになってしまう。

狙ってスタークォーツを出すとなると面倒で、ドロップ率は体感で5%ほどなので、例えば終盤でデッキを完全に再構築するとなると、24~30枚のスタークォーツが必要となってしまい、何百戦もフリーデュエルを繰り返す必要が出てくる。
自分の場合、ラスボスのイクスジール戦で、デッキを完全に再構築する必要が生じたのだが、4属性のデッキを作っていたためにスタークォーツが足りず、大体5時間ほど浪費する羽目になってしまった。
デッキを再構築するたびに何時間も浪費するレベルキャップ仕様は、デッキの試行錯誤を大きく阻害する、TCGとしてはあるまじき仕様だった。
また、一部の敵というか、事実上ラスボスであるイクスジールの性能が壊れており、普通は回復の手段が極限られているリーダーユニットのHPを必殺技でガンガン回復する上に、問答無用でこちらのガーディアンを戦闘不能にするスキル持ちという、とんでもない理不尽な敵となっている。
弱点属性をつくとか、スキルカードで攻撃をいなすとか、そういう次元を超えた強さで、かなりメタなデッキを組む必要があるボスで、そのデッキのために何時間も浪費するハメになってしまった自分としては、正直これを考え付いた製作スタッフやGOサインを出した人間は悪乗りしていたとして思えなかった。

余談だが、ストーリー中で散々チート的な扱いをされる、アンノウンと呼ばれるキスキル達だが、実際の所、他のキャラクターのリーダーカードと比べて特別優れているわけではないどころか、お前らのカードのほうがよっぽどチートやんけ!と言いたくなるようなリーダーカードも結構見かけた。
また、話の流れ的にアンノウンカードが使えない状況でも普通に使えるという、矛盾した事態もしばしば発生していた。
確かに、いきなり他のカードを使えといわれても、それなりに育成していないとどんなカードも使えないということを考えると、詰みかねない状況ではあるのだが、それだったらそもそもそういう話の流れにしなければ良いのでは?と思った。

・カードのソート性は良し

TCGということで、ゲームが進むとかなりの数のカードを所持することになるのだが、本作はカードのソート性は優れており、レベル順は勿論のこと、属性、種族、コスト、入手順と、必要だと思われる並べ方は全部用意されているため、カードが増えても目当てのカードが見当たらずにイライラするという事態は起こらず快適にプレイできた。
デッキも最大で10個まで登録可能となっているので、相手に合わせてデッキ構成を変えるというのも簡単に行えるが、先に述べたとおり、レベルキャップ仕様のせいで、一周で10個の登録欄を使い切るのは難しいだろう。
ただ、ソート性は良かったが、複数のデッキを同時に弄ることを考えられていない仕様で、複数のデッキを同時に弄る場合でも、デッキ毎にいちいちメニュー画面に戻る必要があるのは不便だった。
しかし全体としては、デッキ構成に関してのUIは悪くなかったと思う。

・イマイチ使えないオート戦闘

本作はダンジョン探索パートも用意されているのだが、一人称視点ではなく、見下ろし視点でキャラクターを操作する仕様になっている。
デフォルトでは、左クリックでキャラクターを動かしたい先をクリックすればキャラクターが移動、右クリックを押しながらマウスを動かすと(もしくはWASD)カメラ視点移動という操作になっている。
この操作性が悪く、思い通りに操作するには(敵シンボルを避けるには)それなりの慣れが必要となり、特にマウスだけでカメラもキャラも操作するとなると、かなりストレスが溜まる。
WASDでカメラを操作すると少しはましだが、個人的にはWASDでキャラクターを動かしたかった。
ただ、敵シンボルは積極的に襲い掛かってくるわけではなく、決まった進路を動いているだけなので、避けるのはそこまで難しいわけでもなく、接触しても普通に逃げられるので、望まぬ雑魚戦を強いられることはほとんどなかった。
まあ、ダンジョン毎の雑魚シンボルの数は多くないので、カード集め+レベル上げとして、駆り尽くしてしまっても大して時間はかからないので、そっちの方が色々と楽かもしれない。

対人戦はリーダーユニットのHPが多く、持久戦になるため難しいが、雑魚戦の敵リーダーはHPが少ないのもあって、オートモードを使うことが出来る。
オートモードは正直言って馬鹿だが、大体レベルが同じ程度の雑魚相手ならほぼ確実に勝てるので、操作が面倒ならオートモードに任せてしまうのもありだろう。
ただ、オートモードにしてもゲーム速度自体が上がるわけでは無いので、雑魚戦でもサクサクというわけには行かない。
むしろ、余分なターンをかけてしまうため、何らかの理由で数をこなしたいのなら、自分で操作する方が回転が速いため、あまり使用する機会は無かった。
また、一戦闘辺りにかかる時間は2~3分がせいぜいなので、オートモードに任せてAFKというのもせいぜいトイレ行ってる間くらいしか使えないという残念な仕様となっている。せめてゲーム速度が上がれば使う機会も増えたとは思うのだが・・・。


・ボリュームもクオリティも抜群のCG

本作のCG枚数は140枚という、ほぼフルプライス2本分のボリュームとなっている。
原画もM&M氏の単独(実際には二人組みだが)なので、複数のキャラクターが並んでいる状態でも違和感も無いし、なにより原画家のファンにとっては嬉しいことである。
塗りも原画とマッチしており、熟女ヒロインはやや黒ずんだ乳首だったりと、色んな意味で今作も期待を裏切らない出来だった。
また、ワイドモニターをフルに活かす構図が多く、逆に騎乗位のようにワイドモニター比に適用させ難い構図の場合、完全に90度傾けてワイド比の面積を使い切るという荒業も使っている。

超弩級のCG枚数をおごる本作だが、それだけでなくTCGのグラフィックもしっかりと作られている。
カードの絵は本当にTCGっぽく出来ており、本編では大きな画像はエンドロールくらいでしか見れず残念に思っていたら、特典のヴィジュアルブックではある程度大きなサイズで見ることが出来る。持っているのなら是非とも一度は鑑賞してみるべきだと思う。

・バラエティ豊かなHシーン

CG枚数が多いということは当然、Hシーンの回数も多いという事で、本作では84回という、こちらもほぼ2本分の回数となっている。
回数だけでなく、1回毎の尺もかなり長く、前戯を行ってからの本番での2回戦3回戦ということもザラで、1回のHシーンで中出し、外出しの両方をやっちまうという絶倫ぶりを主人公は発揮してくれる。

Hシーンの種類も豊富で、ヒロインによってはバッドエンドの陵辱も用意されている。
バッドエンド陵辱のあるヒロインは4人で、鈴鳴、史帆、マリ、キスキルの四人となっている。
勿論バッド陵辱は、主人公がゲームに敗れたが故の陵辱ということなので、自分の力が足りずヒロインが犯されてしまった感が強く、寝取られ感も強い。
陵辱は他のキャラクターもあり、レアと摩耶の二人は不可避での陵辱イベントが用意されている。
また、理事長であるメトシェイラにも乱交イベントが複数用意されているあたり、製作者側の熟れたヒロインへの情熱を感じることが出来る。
綾にも陵辱シーンらしきものはあるが、怪しいキノコを食ってラリッた状態で見る幻覚なので、どちらかというとお笑い系Hシーンである。
他にも、演劇部である綾はボンテージや魔法少女、メイド服とかのコスプレHが多く、しかも服装だけでなくHシーンもしっかりとコスチュームの役になりきってという正統派のコスプレとなっている。
他にも、ラスボスのイクスジールとは成層圏でエッチして、最後は彗星になって落ちていったり、綾とのHシーンではコスプレの延長でいきなり歌いだしたりと、エロいだけでなく、笑ってしまうようなHシーンもいくつかあった。
史帆には寝取りシーンも用意されており、手すら繋いだことの無い元恋人の前でセックスをするという寝取りもの定番のシーンが用意されている。元恋人も何だかんだ言ってクズな人間なので、気分良く寝取ってしまおう。
ハーレムHも用意されており、3Pあるいは4Pのシーンが全部で5回あり。内容自体はオーソドックスだが、何よりもヒロイン達が主人公をめぐって張り合うというのが良かった。
また、主人公は相当なアナル好きで、各キャラクターに最低でも1回のアナルセックスが用意されており、また、ただアナルに突っ込むだけでなく、しっかりとほぐしてから挿入という流れなので、内容もしっかりとしている。ストーリー中で1回しかHシーンの無いイクスジール相手にまでアナルセックスを敢行する辺り、主人公のアナル好きは筋金入りである。

・コンフィグは可もなく不可もなく

ADV部分に関して設定できる部分は標準程度で、必要な部分はしっかりと設定できる。
ただ、コンフィグの効果音と、ゲーム中の効果音を別々に設定できない上に、バックログを見たり、メッセージウィンドウを消去するたびに大き目のボリュームでシステム効果音が鳴り、うるさかったので、コンフィグの効果音は別に設定できるようにして欲しかった。
また、Alt+Enterで画面サイズの切り替えができないのも微妙に不便だった(F12キーで最大化状態からウィンドウ状態にすることだけは可能)。
ゲームパートの方は、戦闘演出のon/offや、戦闘スピード、ダンジョン探索時のキャラクターの歩行スピードなど、設定したいと感じるだろう部分は設定できるが、戦闘スピードはもっと速い設定が欲しかった。


・まとめ

しっかりとした世界観に、尋常ではないCG枚数に尺の長いHシーンとADV部分の満足度は高かった。
ゲームパートはTCG部分が弱く、レベルに重きが置かれすぎていたので、TCG+RPGというジャンルを標榜するなら、もう少しデッキ構成などのTCG部分が占めるウェイトを大きくして欲しかった。