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Predawnvagabondさんのランス10の長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
ランス10
ブランド
ALICESOFT
得点
100
参照数
2323

一言コメント

堂々の完結

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・ランスシリーズ堂々の完結

30年近くをかけて10作以上が制作されたエロゲー史上屈指の長編シリーズ、しかもドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようにジャンルが同じだが世界観が違うゲームではなく、同一の主人公の作品が10作以上作られたというのは、ゲーム史全体で見ても稀なのではないかと思う。
シリーズ全作をプレイしているわけではないが、エロゲーマーとなった頃からプレイしている自分としては、宣伝文句の「ヤラずに死ねるか」はまさにピッタリの言葉で、やや大袈裟に言うなら自分の人生にとっての一つの節目とも言える作品だった。
シリーズが長いだけあって世界観が壮大で、魔人との戦争だけでなく、人類が苦しむ様を娯楽としている神々も何とかする必要があるのに、本当に今作で完結できるの?と疑問に思っていたのだが、完璧と言ってもいい形で物語は決着しており、読後感は素晴らしくよかった。

本作は人類と魔人の戦争を描く第一部と、その15年後を描く第二部に分かれている。
ランスシリーズの大まかなプロットや設定は1996年に発売されたSLG「鬼畜王ランス」の時点で作成されており、魔人がケイブリス派とホーネット派に分かれて戦争しており、最終的にはケイブリス派が勝利して、その後、人類圏に攻め込んでくるというプロットはその時点から作られていた。
鬼畜王ランスでは魔人圏も含めて世界を征服した後に、大量のエンジェルナイトが降臨してきて、人類を虐殺し始めるという展開が待っており、突然の出来事に大きな衝撃を受けたのを今でも覚えている。
本作の第一部はケイブリス派の魔人との戦争が描かれるのは予想通りなのだが、第二部があるのがそもそも予想外の上に、鬼畜王ランスとは全く違う形でのグランドエンドを迎えるので、期待通りの面白さの第一部と予想外の面白さの第二部の二段構成は、一作で二度楽しめるものだった。


・ランスシリーズらしさが凝縮された第一部

本作のメイン部分は第一部で、恐らく第一部のプレイ時間が全体の8割以上を占めることになると思う。
第二部はランスの息子たちが主人公なので、ランスが主人公の本シリーズでは妥当な構成だと言えるだろう。
流れとしては、人類圏に同時多発で侵攻してきた魔軍相手に、ランスの下に団結した人類が立ち向かうという王道展開だが、人類がサクッと団結できるのもランスのこれまでの冒険の成果だと考えると、プロローグの時点で胸が熱くなるものだった。
魔人を倒すことができるのはランス(と健太郎)だけなので、人類軍が魔軍を何とか押し留めている間、ランス率いる少数精鋭が魔人を倒して回るという展開になっている。
戦略ゲームっぽい設定ながら、本作はクエストを選択して攻略していくシステムとなっており、「準備フェイズ(クエスト)」、「作戦フェイズ(クエスト)」、「拠点フェイズ」の3つのフェイズでクエストを選択する形式となっている。
魔人との戦闘が主となる作戦クエストはそれぞれが長尺で、ノリや雰囲気も過去作に近い雰囲気となっており、どちらが悪役かわらかなくなるようなセコい手段や偶然によって魔人を撃破する展開は、過去作の短縮版と言えるもので、それがいくつも集まったものが本作と言えるだろう。
勿論魔人との戦いだけでなく、冒険がメインの作戦クエストや、会話シーンがメインの拠点フェイズでのキャラの掘り下げも楽しむことができる。
とにかくランスの、そしてランスシリーズの魅力が詰まっているのが第一部の魅力で、シリーズの締めくくりとして相応しいストーリーだった。


・ランスシリーズのエピローグと言える第二部

第二部は第一部から15年後のストーリーとなっており、上述の通りランスの子どもたちの物語で、主人公もランスの息子(二週目では娘も選べる)となっている。
シィルと志津香以外のランスの運命の女たちの子供が登場し(チルディの子供は幼すぎて冒険には参加しない)、それだけでなく、成熟して母親となったヒロインたちを見ることもできる。
ランスの子供が主人公だが、主人公は全く喋らず、基本的にプレイヤーが選択肢を選んで会話シーンでの主人公の言動を決めるという構成になっている。
選択肢は物語の流れには影響せず、その場の会話の内容が若干変わるだけのものなのだが、この選択肢が「主人公=プレイヤー」ということを強く感じさせるもので、選択肢によって破天荒(変な行動を取る)な主人公や、真面目で仲間思いな主人公などのロールプレイを楽しむことができた。
また、第一部(あるいはランスシリーズ)と比べると、キラキラとした少年漫画のような物語で、主人公たちが挫折や敗北を乗り越えて強くなっていく王道展開となっており、異常に濃いキャラクター性を持ち、性欲が原動力のランスが主人公の本シリーズとは色んな意味でプレイフィールの違う内容だった。

個人的な第二部の印象を一言で表すと「ランスシリーズのエピローグ」で、ランスたち(プレイヤー)が今まで作り上げてきた世界のその後を”まっさら”な人間として、ランスが主役となって冒険した世界を別視点で、そしてランスたちの足跡を辿りながら冒険するのは非常に楽しかった。
また、単純に強いだけでなく、世界が消滅してしまうために倒すことができない上に、人間が苦しむ姿を娯楽とする神々との関係についても納得できる形の帰着となっており、個人的には鬼畜王ランスでの魔人の力で創造神を眠らせる終わり方よりも好きだった。
ランスの子どもたちが主役の第二部ではあるが、当然ながら最後にはランスも登場し、美味しいところをしっかりと持っていき、子どもたちに偉大な(?)父の背中を見せつける展開も非常に熱いもので、ランスの「メチャクチャなのに何故かカッコいい」という魅力を最後の最後に見せつけてくれるのも素晴らしかった。


・ホーネット派魔人の出番が少ないのが残念

個人的な感想が大きく混じるが、本作のメインヒロインを数人挙げるとすると、「シィル」「サテラ」「アールコート」「クルックー」「リセット(第二部)」「志津香&ナギ(第二部)」あたりだと感じた。
各国の姫を筆頭に、過去作のメイン級のヒロインたちの殆どは自分が所属する国のクエストでの見せ場はあったが、国を問わずに登場する&重要な役割を担っているという点では上述のヒロインが特に目立っていた。
ランスの精神的な成長も見逃せない点で、相変わらずの唯我独尊っぷりを発揮して周りを振り回しつつも、子供たちに対する遠回しな気遣いや戸惑い、仲間たちに対する態度など、丸くなったなと感じる場面が多くて感慨深かった。
シィルのヒロインっぷりも半端ではなく、しばらく氷漬けで出番が少なかった分、今作ではランスとシィルの繋がりの深さを感じることができる展開が多かった。
メイン級のヒロインや野郎ども以外も、周回ボーナスの「何でもあり(宝箱からすべてのキャラ)」をオンにしないと入手できないキャラ以外には、それぞれ2~3回の会話イベントが用意されており、仲間にはなるのに存在感はゼロということがないのがよかった。
ケッセルリンクのメイド集が顕著な例で、いきなり8人ものメイドが登場するのに、ゲームをクリアする頃までには、名前はともかく顔と性格が一致するようになり、メイド同士の関係性も把握できてしまうあたり、埋もれないキャラデザや性格、そしてそれを印象づけるためのイベントの作り方は流石だと感じた。

以前から存在するキャラクターそれぞれに、数が多い割にはイベントがしっかり用意されているのは良かった反面、待望のホーネット派の魔人たちの出番が少ないのが残念だった。
サテラこそプロローグの時点からランスに同行しているものの、ホーネットは加入条件が厳しい上にランス(人類)に心を開くのは第一部の最後だし、シルキィとハウゼル(とサイゼル)は比較的早い段階から仲間にすることが可能だが、仲間になるタイミングはプレイヤー次第という仕様上、ストーリーには殆ど絡んでこない。
更にはシルキィとハウゼルはどちらかしか仲間にできない上に、途中退場させないためにはかなりの努力が必要と、ストーリー的にもゲーム的にもホーネット派の魔人は冷遇されていた。
鬼畜王ランスをプレイしていた人は勿論、未プレイでもこれまで名前は何度も出ていたので、期待していた人が多いであろうホーネット一派がこの扱いなのは酷いと感じた。
逆にケイブリス派の魔人はケイブリスを筆頭にキャラが濃いし、高性能なカードが多い上に仲間にすると途中離脱することもないので、印象に残るキャラが多く、まるで吉本新喜劇のような展開の戦いもあれば、逆に非常にシリアスな展開もあったりと、魔人によって様々な雰囲気のクエストを楽しむことが出来た。


・絶妙なゲームバランス

基本的な本作の流れは、各ターンが「準備フェイズ」「作戦フェイズ」「拠点フェイズ」の3つで構成されており、フェイズ毎にクエストやイベントを選択するというもので、1週あたり最大で14ターンくらい(マニュアルによると最大16ターン)までこの流れを繰り返す構成になっている。
準備フェイズは各国の支援などの短めの戦闘ありのクエストや会話イベント、作戦フェイズは主に魔人戦を扱った長尺のクエスト、拠点フェイズは会話イベントを任意で選択するのだが、ターン数が決まっている上に時限消滅するクエストや会話イベントもあるので、難しいルートをクリアしたいのなら色々と考えて行動する必要がある。
4大国が同時に魔軍に侵攻されているので、プレイヤーはどの魔人を倒すのか、どの国を支援するのかを状況にあわせて選ぶのだが、ランス率いる魔人討伐隊の強化と、各国の支援はトレードオフの関係になっているものが多く、更には魔人に勝利する毎に敵が強化されるため、長期のプランを立てながらプレイする必要がある。
本作は周回前提のバランスで、考える要素が多い上にシビアなバランスなので、要領を得るまでは敗北を繰り返すことになると思うが、魔軍に勝利するENDだけでなく、ランスが死亡する人類敗北ENDや、ランスは生き残っているものの実質人類敗北ENDなども存在し、そちらは達成条件が簡単な上に周回ボーナスを得られる「CP」はもらえるので、敗北が無駄になることがないようにデザインされている。
CPが貯まっていくと、「入手時点でカードのレベルがある程度上がっている」、「経験値を多くもらえる」などのボーナスが付くので、魔人討伐隊の強化をスピーディーに行うことができるようになり、最初は実質負けイベント扱いだった戦闘に勝利できるようになり、1ターンで魔人同時討伐ができるようにもなる。
各国に派遣されている魔軍は二人の魔人と一人の大将軍という構成になっており、魔人が前線で無双の強さを発揮し、大将軍は後方で魔軍を指揮するという役割分担になっているので、魔人討伐隊はそれぞれの国を解放するために最大で3体の大物を討伐する必要がある。
単純にケイブリスを倒して人類勝利ENDに到達するだけなら同時討伐や国を解放する必要ないのだが、勝利ENDも種類によっては4大国を解放する必要があり、その場合は1ターンにつき1体の魔人を討伐していたのでは到底間に合わない。
そのため、負けイベントを覆して勝利し、同一ターン内で二人目の魔人に挑戦する権利を得る必要があるので、CPを使って魔人討伐隊を強化できると言っても、超えるべき壁も高くなっていくので、ボーナスを得ても簡単になるわけではなく、むしろボーナスとこれまでの知識を駆使する必要があるので、一般的な周回ゲームのように周回数を重ねていく内に消化試合と化していくということはなかった。

戦闘部分やクエストのシステムに関してはランスクエストに近いのだが、それをランス10の世界観、ゲームバランス用に大幅に変更したものになっている。
基本的に7人のパーティを組んで敵と戦闘するシステムなのだが、今作にはそれぞれのキャラ(カード)に所属の概念があり、例えばJAPANに所属しているカードを二人同時に配置することはできない。
また、リーダーとして配置されている7人以外も戦闘には参加しているという設定のため、それぞれのリーダーのステータスは「(リーダーのステータス*5)+配置されていない同所属のカード全部のステータス」となる。
カードのレベルアップに必要な経験値は指数関数的に増えていくため、特定のキャラばかり育てていると、対応力が低くなるだけでなく、ステータスも低い部隊となってしまうので、脳筋スタイルは本作では使えないようになっていた。
ただ、ある程度カードのレベルを上げると、同一キャラの他カードの入手フラグが立つ(?)上に、レベル自体はカード別ではなくキャラ別のため、メインで使用するキャラはある程度決めておいた方がいいと感じた。
他にも、クエスト中はランダムエンカウントで無制限にレベリングできたランスクエストに対して、本作はクエスト毎に戦闘できる回数が決まっているので、誰をどの程度まで育てるかを事前に計画しておく必要があるなど、一般的なRPGに近いシステムに、カードゲームっぽい仕様や戦略ゲームっぽい仕様などを上手く混ぜ合わせてあった。
広く薄くキャラを育てる必要がある本作だが、クエスト中や会話イベントで入手できる「食券」をクエスト後に使用することにより、「その周回で得た総経験値の半分」を選択したキャラに与えることができるので、入手したばかりのキャラや今までレベリングしていなかったキャラを、第一線で活躍できるレベル(大凡で主力キャラの8割程度のレベル)まで一気に上げることができる。
ただ、食券を使用できるキャラはランダムに5人選ばれる(クエスト終了直前でセーブしてリセマラは可能)ことや、一度に3枚までしか保持できないので、こちらも使用するキャラは吟味する必要がある。
また、討伐隊のステータスは上に書いたように、所持している全てのカードのステータスが影響するため、一人か二人程度の低レベルのキャラをリーダーとして編成するだけなら大して弱体化はせず、魔人相手でも何とかなるくらいなので、多数のキャラを使用するのが苦にならないバランスになっていた。
装備品の概念は存在しないこと(アイテムカードはあるが所持しているだけで効果発揮)や、戦闘のやり直しが簡単なのでメンバー選択を間違ったと気づいたら簡単にやり直せることもあって、数が多いカードの中からパーティを組み直すのが苦にならないのもよかった。
戦闘自体のバランスも素晴らしく、単純に攻撃力を上げれば何とかなる場合もあるが、ターン中に行動のために消費するAPはパーティ共通なことや、同じスキルを連続使用すると消費するAPが増加することもあって、バフやデバフ、状態異常を上手く組み合わせないと厳しい戦いが多かった。
また、上述したように周回ボーナスを使用すれば負けイベントを覆すことができるのだが、その場合は戦闘回数が大きく減ってしまい、レベリングの機会が大幅に減ってしまうのに、1ターンで魔人を2体討伐するために一気に二段階敵が強化されるので、高周回でも最後まで緊張感のある戦闘を楽しむことができた。


・楽しくなってくるのは3週目以降?

本作のゲームバランスやレベルデザインは上述したように絶妙なものになっており、コンシューマーゲームも含めて上位に位置するものだった。
しかし、周回前提のバランスのため、初週は実際以上に難易度が高く感じられ、その上、周回ボーナスを除けば周回する度に最初から育成する必要があるので徒労感も大きかった。
特に前二作の「ランスクエスト」や「ヘルマン革命」が周回でどんどん部隊を強化できたことや、本作がコレクション欲が刺激されるカード方式なこともあって、リセットされてしまうことに対する抵抗感が強かった。
ある程度ボーナスポイントが貯まってくると、ボーナスの効果を体感できるようになり、今まで倒せなかった敵に対抗する光明も見えてくるのだが、そこに至るまでに「自分は本当にこのゲームをクリアできるのだろうか」という考えがよぎることが多く、二週目をプレイしている時はギブアップすることすら頭によぎってしまった。
三週目以降は諦めて攻略サイトを参照したこともあるが、負けイベントに勝利できなくともボーナスの違いを実感できるようになったこや、有用なスキルや戦術を学んだこともあり、徐々に本作の醍醐味を味わえるようになっていった。
個人的にはもう少しとっつきやすくしてほしいとは感じたが、本作自体が一見さんお断りに近い状態な上に、プレイヤー側もとっつきやすさよりもやり込みを求めるタイプが多いと思う(完全に個人の予想)ので、本作に限って言えば問題ではないのかもしれない。

余談だが、もし何らかのファンディスク的な作品を出すなら、もう少しカジュアルというか、プレイ時間の短いゲームを出してほしいと感じた。
以前は学生だったので長時間のプレイも全然平気だったのだが、シリーズと共に年を重ねていつの間にやら社会人になってしまったので、まとまった時間をゲームに割くのが難しくなってしまったからである。
「自分が一本のゲームにこれだけの時間を割けるのはこれが最後かもしれない」と思わせるだけの作品だったので、そういう意味でも記念碑的な作品だった。
これも完全に個人の予想なのだが、ランスシリーズをプレイしている年齢層は比較的高めで、自分のように、以前は学生だったが今は社会人なのでゲームに長時間割くのは難しいという人も多いのではないだろうか。
プレイ中にランスの成長した姿を見せられ、時間の経過を感じさせられると、自分もいつの間にか年をとったなと(成長したとは言わない)感慨深くなった。


・秀逸なBGM

アリスソフト全般でBGMは素晴らしい作品が多いのだが、特にランスシリーズといえばBGMの素晴らしさが有名で、本作もその評判に負けない素晴らしいBGMが用意されている。
BGMを手がけたのは、シリーズの看板役とも言えるShade氏ではないのだが、そんなことは気づかないくらい素晴らしいものだった。
回想モードには全部で74曲が登録されるが、過去作や「闘神都市」のBGMも含まれているため、サントラに入っている曲は66曲となっている。
ボス戦を筆頭に戦闘BGMが特に印象に残るのだが、プレイ後に聞いてみると冒険中のBGM(それぞれの国のテーマなど)も素晴らしいものが多く、クリア後に聞いているとプレイ中のことが思い浮かんで感慨深かった。
個人的には第二部の冒険中に使用される「New Sensation」が特に好きで、終盤の意外な場面でも使用されるのだが、それにより今までの冒険を思い起こさせるという演出が憎かった。
ランスのテーマ曲は初期の頃(ランス2くらい?)から「我が栄光」なのだが、本作には「Nostalgic」という我が栄光の”しんみりバージョン”とも言える曲が入っているのだが、ランスと付き合いの長いヒロインとのシーンでこの曲を流されると、ヒロインたちとの過去が思い起こされてしんみりした気分になってしまう曲だった。
もちろん通常のテイストの新しく作れた「我が栄光」も用意されているのだが、実際にプレイしていて聞くことができるのは第二部の終盤となっている。
待たされた分、我が栄光が流れるタイミングはランスの魅力が120%発揮されている場面ということもあって、曲の方も素晴らしく感じられた。

パッケージ版特典の「ランス アレンジコレクション」もファンにとっては嬉しい特典で、「我が栄光」や「Ontology」などのシリーズでも特に人気の高い曲のアレンジバージョンが入っている。
ゲーム中では、特に戦闘シーンのBGMは、盛り上げるために最初のイントロが重要だと個人的には考えており、事実、本作の戦闘BGMもイントロから勢いのあるものが多いのだが、アレンジバージョンは静かなイントロから徐々にアップテンポになっていくという構成ということもあり、作中で聞くのとは違った雰囲気のアレンジ版を聞けるのがよかった。
本編中のBGMはShade氏は関わっていないが、アレンジバージョンはShade氏が手がけたという点もファンには嬉しい要素だった。


・圧倒的な立ち絵の枚数

本作のCG枚数は全部で100枚となっており、第一部が84枚、第二部が16枚の内訳となっている。
フルプライス作品としてもかなり多い部類のボリュームだが、過去作と比べるとCG枚数自体はやや少なめとなっている。
また、第一部の方の85枚の内10枚はストーリーとは全く関係ない魔物娘たちの半脱ぎ状態で縛られているCGで、MIN-NARAKEN氏が原画を担当しており、誤解を恐れずに言えば水増しとも言えるものだが、クオリティ自体は高かった。
本作で何より圧倒的なのは立ち絵の枚数で、全部で400枚を超える圧巻の枚数となっており、主要な女性キャラには裸立ち絵(とカード)もしっかり用意されている。
ちなみに、カードの絵柄は基本は立ち絵なのだが、別バージョンは裸立ち絵だけでなく、過去作のイベント絵や立ち絵が使用されているものもあり、過去作をプレイしている身としては、ファンサービスと言えるものだった。
質の方は一言で表すなら「普通にハイクオリティ」で、違和感のあったCGもなく安定しており、塗りもよかったが、逆にCGを売りにした超ハイクオリティな作品群と比べると、特に印象に残るほどではなかった。
しかし、HシーンのCGでエロいことが終わった後の焦点のあっていない表情のヒロインは非常にエロくてよかった。


・不遇なキャラの多いHシーン

本作のHシーンの数は大体50回ほどとなっており、非抜きゲー(?)としては単純に回数だけで考えるとかなりのボリュームとなっている。
しかし、プレイ総時間から考えると頻度は高くないため、プレイ後に数えてみて初めて本作の回数の多さを実感した。
ボリュームそのものには不満はないのだが、ヒロインが多いだけに、極一部のヒロインを除けばHシーンが1回しかないのは残念に感じた。
シリーズ通してのヒロインであるシィルですらシーン回数は2回しかなく、本作のメインヒロインの一人と言えるサテラも1回しかなかった。
本作でランス以外による陵辱シーンは7回くらいで、正史扱いなのはウィチタ&カオルとリズナ、シルキィの3シーンで、リアとマジック、シーラと自由都市の数人の陵辱シーンは国を守りきれなかった時に発生するHシーンで、回避可能だし正史扱いというわけでもないので、前作でいうところのバッドエンド用のシーンと言えるだろう。
特に悲惨なのはリアで、マジックやシーラはランスとのHシーンがあるのに、リアのみはランスとのHシーンが存在せず、国が陥落した後の陵辱シーンのみとなっている。ランスが人類軍総統となるために一番貢献したのにこの扱いである・・・。
シリーズ通してのヒロインの一人である「かなみ」もひどい扱いで、ランスとのHシーンは一応あるものの、完全なるネタシーンとなっており、普通のHシーンは存在しなかった。
第二部でも主人公一行は絡まないものの志津香&ナギのHシーンは2回用意されており、片方は普通のHシーン、もう片方が陵辱シーンとなっていた。


・便利な「あらすじモード」

本作のコンフィグ項目は必要な項目は一通り揃っており、それだけでなく、デュアルモニターを意識した設定項目も用意されているので快適にプレイすることができた。
また、同じシーンを繰り返し見ることになる本作特有の機能である、一度見たイベントのあらすじが表示され、スキップするか否かを選べる「あらすじモード」は便利だった。
シーンスキップ機能自体は周回プレイが前提のゲームに搭載されていることは珍しくないが、あらすじが表示されるのがポイントで、膨大なイベント数がある上に、進行順次第でイベントの順序の入れ替わりが激しい本作では、もう一度見たいイベントを探すのも簡単ではないので、あらすじが表示されるともう一度見たいイベントだけを再生するのも比較的楽だった。
また、加入しているキャラ次第で会話に変化が出るイベントは、それに関してもあらすじに記述されるので、気づかない内に差分を逃すということが少ないのもありがたかった。
ただし、既読フラグ管理がガバガバなのは残念な点で、イベントの最初の1テキストを読んだだけでもイベント自体に既読フラグが立ってしまうので、「ひょっとして、一度もまともに読まないままスキップしてしまっているイベントが残っているのではないか?」と感じてしまった。
そのため、未読テキストが少しでもある場合はあらすじモードが発動しないようにできる設定も用意してほしかった。
セーブはスロットを選択してセーブする方式ではなく、セーブする度に新しいデータが作成される方式で、1スロットだけにセーブしていたため、詰んでしまい戻れないということがないように配慮されていた。
ただ、放置しておくとセーブデータがどんどん貯まっていくので(上限数はあるっぽい?)、たまに一括削除する必要があるのだが、重要なデータには★をつけて一括削除の対象外にすることもできるので、データ管理も楽だった。


・まとめ

難易度は高めなので、ゲームバランスの素晴らしさや面白さに気づくまでに大分時間がかかったが、一度そこに気づくと、本作のギリギリの戦闘や試行錯誤する面白さを楽しめるようになった。
ストーリーに関しては、不遇なキャラがいたことは少し残念だったが、大きく広げた風呂敷を見事に畳んだ内容で、ランスのカッコよさや、世界観の素晴らしさを堪能することができた。
大きな問題は、本作があまりに素晴らしかったため、クリア後の喪失感が半端ないことで、しばらく抜け殻みたいになってしまったことくらいだろうか。