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Planadorさんのはぴねす!2 りらっくすの長文感想

ユーザー
Planador
ゲーム
はぴねす!2 りらっくす
ブランド
ういんどみるOasis
得点
68
参照数
1339

一言コメント

お前は甘味料を直飲みする勇気を持てるか? 宜しい、ならばこの劇薬甘味料を直飲みしてもらおう――刮目せよ。いでよ『桐ヶ谷璃乃』。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 本編既プレイ者ならご存じの通りかと思いますが、璃乃は本編終了段階で糖度が他ヒロインよりずば抜けていたわけですよ。なので、本作各アフター始まる時点で、ある意味では既に各キャラのアフターを終えた時にあるべき糖度を、既に持っているわけです。
 そんな状態でアフターを始めてみるんだ! そもそも本編でだだ甘だった璃乃だぞ覚悟はいいな!?

 イチャラブ系作品の金字塔と言われる作品に、シリウスの「こいびとどうしですることぜんぶ」があります。ひたすら二人きりでイチャラブする、本作にも参画している保住圭先生による糖度が高すぎると評判の作品です。
 ――その上で。結論から申しますと。
 本作の璃乃アフターのイチャラブですが、その『こんぶ』が霞むレベルのそれでした。

 何がヤバいって、密度がヤバい。本作のアフターはどれも一時間前後のものなのですが、そこに数日間のイチャラブという濃縮果汁を、その状態のまま一気にぶっこんできます。
 で、全体の後半1/3ぐらいは魔法に関連したシリアスが入るので、残る2/3、正味プレイ時間40分程度に更に詰め込まれていることになります。

 そしてその凝縮された密度で襲い掛かる本編を上回る蛇口がぶっ壊れたイチャラブ。その内容は砂糖衣の砂糖とかいう生易しいものじゃありません。
 『こんぶ』は案外あっさりしてたんですよ。三温糖的な、スッと溶けてくちどけがそこまで悪くないものでしたので、私でも問題なくいいなぁと眺めていられました。
 対してこちらは、とにかく胃にズシンと来る。なんというか、イチャラブの質が「重い」んですよね。クリックをする度にズシンズシンと何かが溜まっていく心地がします。ちなみに私はリアルで胸焼け起こしました。
 そしてやることなすこと、全てが璃乃の和綺に甘えたい、甘やかしたいという欲求に直結するんですよ。

 まぁそればかりを求めると1/3を占めるシリアスがちょいと浮く感じを覚えるのですが。というか落差が滅茶苦茶激しくてなんともはや。
 ただ、鬼甘パートでもたれた胃には丁度いい青汁でもありました。ただ胃薬ではないので、求める方向性としてはちょいとずれるんですよね。あくまでそれは青汁で、苦みと共に胃の糖分を中和してくれるんだけど、根本解決ではないし一時的という。
 そして解決すれば本番のシーンが入ってそんでまたサッカリンか何かを流し込まれる心地を覚え始めたところで終わり。つ、辛いというか重い……。唐揚げ流し込まれるよりきついかもしれんぞこれ……。

 いやまぁ、正直書き方が悪い自覚はあるんですが、こういう書き方だと正直悪いもののように見えてしまうようには我ながら思います。
 ですが、純粋に糖度だけを求める人にとってはこれ以上の良薬はない。間違いなく刺さる人には刺さる甘さです。私は無事に糖尿病。

 とまぁ璃乃アフターの話はこんなところで、軽く他ルートの話も。

 何はともあれ単純に菜生アナザー以外はとにかく短いです。先述の通りですが大体どれも一時間かかるかかからないか。
 なので、基本的には公式HPの粗筋記述内容からは殆ど逸脱しません。そこを過ぎたら大体終わりです。

 で、個人的な減点ポイントなんですけど、魔法を使わない、又はマジックアイテムも絡まないルートが結構多い。魔法衣装を着る着ないもあるのですが、魔法関係が一切絡まないのは流石によくない。
 ちなみに魔法衣装を一切着なかったのは熾月。各ルートで魔法が一切絡まなかったのは花恋アフターと楓子アフター。

 その内の楓子アフターですが、正直これが一番の片手落ち。というのも、魔法がないというのもですが、何より「子作りしましょうと迫られて」という粗筋なくせして単独のシーン数がなんと一個。
 いやー、私自身は正直エロシーンを最初はじっくり読む口ではないので、「ヤってる形跡があるなら」程度の感覚なんですけど、これはそれもない。シーン自体は長いとはいえ、だとしても粗筋であぁ書いておいてこれはなぁ、ちょっとなぁ、コンセプト詐欺と言われてもなぁ。
 話自体は和綺の葛藤みたいなのもあって好きな部類なんですが、ちょいと産地偽装状態になってるのはどうなのとなった次第です。

 ちなみに禁欲云々でいえばそれこそ璃乃アフターもなんですけどね。というより各アフター共そもそも本番が少ない。本編攻略ヒロインは一回ずつ、瑞月・真白は二回。他に胸揉みとか手コキとかお漏らしとかが各キャラ会ったりなかったり。そしてそれらと別個で菜生アナザーに3Pが各キャラ各一回以上あります。
 でも見たいのは3Pじゃないんですわ。いやある意味本編グランドのアフターという意味では間違いじゃないのかもしれないんですけど、だったら別に4P以上があってもいいはずですし、多分1のりらっくすとかでやってたんでしょうけど、どうにも「まぁこういうもんだよね」的な惰性感があるというかなんというか。

 とまぁここまでちょいと酷評気味ですが、そんな中でも話として一番面白かったのは熾月アフター。
 マジックアイテムの発動をきっかけとして引き起こされるドタバタが、(謎に)緊張感をもたらし、(謎の)ハラハラ感と相まって、実にFDというような話の運び方をしていました。まぁ胸揉みのとこをシーン回想に逐一数えるのもどうかとは思うんですが、そこは置いといて。

 ちなみに、本編でルートがなかった三つのルートは全て本編グランドのアフターですが、前提条件として和綺は「最終的には好意を持たれてるヒロインから一人を選ばなくてはいけないしそれは早い方がいい」という思考をしています。
 で、その中でも瑞月アフターは、最初それを前提としていいのかと思うこともありましたが、瑞月はそれで正解でした。何って、ここは数あるヒロインから「千年の時を超えて基冬が羽璃姫を選んだ」ことに他ならないからなんですよね。
 その上で、ラストの「お兄ちゃんとの子供を授かりたい」というのが想いの成就としてあって、そういう意味では一番前向きになれる話でした。

 そして菜生アナザーですが、これが一番のメインです。ところで男の娘系作品やらんので素で知らんのだが、絵面的にはホモセが入るのってこういうのやる人には合うのキレる人いないの教えてエロい人。
 ともあれ、これだけ二~三時間ぐらいの長さだったわけですが、菜生の補完としては十分なルートでした。ラスト近くの和綺らとの出会いや長い付き合いに至るまでの話は個人的にはとても見たかったものです。そうか、璃乃の魔法特訓以前からの付き合いだったんやな……。

 とはいったものの、その尺の内の数割は先述した通り3Pのシーンなわけですが、率直に言ってそれらの突っ込み方はうまくありません。これなら素直に各ルートの本番のシーン数を一つずつ増やしてくれた方がよかったです。
 初代はぴねすをやってないので「そういうものだ」と言われたらそれまでなのですが、そうだとしても、アフターが一時間かかるかかからないかの密度でそういうとこに本腰入れられてもなぁ……というのが本音。
 かといって和綺が「お前ら全員俺の嫁だ!」と吹っ切れて7Pとか始めるわけでもないですし、個人的にはどっちつかずで実に中途半端になっちゃったなという印象。アフター拡充か、そういう吹っ切れ方か、本編グランドアフターとして各々掘り下げるのに特化するかしてほしかったですね。

 ということで、結局は案外各ルート毎に差が激しいということにはなるのですが、本作の一番の特記事項はやはり璃乃アフターの『こんぶ』を超越した鬼甘イチャラブ。
 仮に本作未読の人がいらっしゃるなら、それを一度経験するために本編+本作をやってきてください。あれは経験だ。そう経験するものなんだ……。
 尚、糖尿病、胸焼け、その他糖分過剰摂取による健康被害の苦情は承りませんので悪しからず。