恐るべし、竹井10日イズム
秋桜、姉3と同じように良いところと悪いところがはっきりしている珍しい作品だと思う。
好きな人にはたまらんだろうが、それを目的としていない人にとっては苦痛以外何物でも
ないかもしれない。
まずはシステム。
さすがにXPでは動かないとかそういうレベルではないが、それでも今時の作品としては
かなり悪い。
未読判定の甘さ、OPEDは飛ばせないし、特にOPに関してはその前の選択肢もキャラクター攻略に
かかわってきているので何度もみる羽目になる。修正ファイルがないと無限ループに陥る、といったバグもある。
また、OHPのどこにも書かれていないが、予想どおりにボイスは無い。
ダウンロード物、同人物ですらボイス付きが当たり前なこのご時世、作りとしては古臭さを感じる。
(まあ、このテンションの高いやつらを演じるにはドラマCD並の豪華声優を使わないと表現しきれないので
下手な声優なら無いほうがマシという考えもある)
音楽についても主題歌はともかくとして、BGMとしてみるとなんか昔のmidiっぽい曲を聴いているみたいで
あまり良いものとは思えなかった。
CGについても前作よりは改善されたが、とても青用途に耐えるものではなくあくまでエロはおまけである
と言わざるおえない。
以上、とりあえず思いつくだけ悪いところを並べてみた。
しかし、それを補ってあまりある魅力が本作品にもある。
それは愉快で楽しいキャラクター達(世界観)とそのキャラクター達によるお笑いあり、シリアスあり、駄々甘あり、
駄々甘あり、ほんのちょっとしんみりあり、お笑いありのシチュエーションだと思う。
数あるライターの中でも『笑いが取れる』『笑いを誘える』ライターは多数いれど、
『笑いを作れる』ライターははっきり言って竹井10日先生以外はいないのではなかろうか。
お約束ネタしかり、パロディネタしかり、声優を使った技しかり、それはそれで楽しいと思うのだが、
度を越えると『その作品』で笑っているわけではなくなる。使えば使うほど飽きが来てしまうのは
それが予備知識等から誘われた笑いであるからだろう。
今回のひまチャはそれらとは全く違う。秋桜を最初にプレイした時のあの衝撃はないけれど、気づいた時には
竹井ワールドにどっぷり漬かってしまっていた臭みの取れないキュウリみたいなものだ(意味不明)
上に書いたように『笑いを作る』ことが出来ているのだ。独特の言い回しといい、伝統である駄々甘でもいい、
それは何かの力を借りるのではなく、ほとんど全部自力で笑わせてあげようとしている努力と
それを思いつくどうしようもないほどに研ぎ澄まされたセンスを感じる。
カエルを殴ると『メメタァ』という効果音が鳴る、それと同等程度に恐るべきセンスだ。
文章と絵を見て、自分の頭の中にそのシーンを想像(創造)し、あれ?これ面白いじゃん、プッと笑えるのだ。
言わば落語のような面白さ。語り手の言葉を自分の頭の中に思い浮かべ、その言動に笑ってしまう。
魅力的で支離滅裂な選択肢も良いのだが、本質は上のような自分の頭の中で作られる笑い、というものにあるだろう。
だから作品中のそれぞれのキャラの思い入れが半端ではない。こんなにも、作品中のキャラが製作者に愛されている
ことが分かる。それを感じられたプレイヤーも同じ気持ちになろう。
これこそが、まさに竹井ワールドでありこんな世界があったらなあ、と思わせてくれる。
キャラクターについては時代や初見ということもあり、おそらくはどうやっても秋桜を上回ることはないだろう。
もはや伝説の主人公となった(自分の中で)新沢靖臣をはじめとして、お姉ちゃん依存症(弟依存症)の元祖
桜橋涼香ことすずねえ、2回以上言うなのカナ坊、ツルペタツンデレのはるぴー等といった最強メンバーに
比べてしまえばひまわりメンバーは劣っているだろう。逆にシリアス面では隠し設定が多く、それが
作品内で明らかにすることでシリアスの強化につながっており、トンでも設定ばっかりだがそれも含めて
『竹井ワールド』の魅力ではないだろうか。
最初は秋桜を意識してプレイしていたが、途中からはっきりいってどうでもよくなった。
秋桜は秋桜のよさが、ひまチャにはひまチャの良さがあるのだ。
『世の中色々つらいことがあるけど、楽しく笑っていこうよ』 この作品を通して竹井10日先生の想いが伝わってくる。