それぞれの魅力的なキャラクターの流儀をまとめた短編集、と言ったほうが正しい。物語ありきではなく人物ありきの目で見られれば良作であろう。
『彼女たちの流儀』というタイトルではなかったらおそらく60点~70点の間の作品だったと思う。
『生き様』という言葉を使うほど血なまぐさく泥臭いものではなく、『様式』という言葉を使うほど
軽いものではない。
ちょっと洒落ていてそれでいて真剣であって、そして明るさとノリと重さがあるもの、それが『流儀』
この言葉の微妙なニュアンスと作品のキャラの掘り下げ度が見事にマッチングしている作品だと思う。
私が作品のタイトルに感心するのは大きく分けて2パターン。
『ゲームをプレイし終わってそのタイトルの意味を理解する』
『ゲームをプレイする上でプレイヤーにいい意味での先入観を与える』
今回のタイトルは後者のほう。このタイトルによる先入観が無ければおそらく掘り下げたが足りなさ過ぎる、
過去の描写が無さ過ぎる、主人公がへたれすぎて納得いかない等々の拒否感が出てしまったかもしれない。
そう、これはあくまで『彼女たちの流儀』なのだ。
いくつかのシナリオで胡太郎と彼女たちが結ばれたりするが、胡太郎のほうはまだ100%彼女たちを愛しているとは
言えない。ヒロイン達の過去はなにがあったのか、もちろん誰もが想像が付くと思うがそこに深く触られることは無い。
それはすべてメーカーの故意的なもの。
HPのキャラ紹介をみてそれは確信できる。
テンポの良さ、プレイ時間(全部で10時間程度)の割には満足感が得られる作品だった。
シナリオライターというよりはプロデューサやデザイナーのほうが褒められるに値すると思う。
物語全体としての完成度ははっきりいって穴だらけであり完成度は低い。
しかしながら魅力的なキャラクター達の流儀というものは十分に伝わってきた。
メインヒロインの鳥羽莉だけではなく、他のサブキャラもその点では十分だと思う。
以下、数点ケチをつけると
・EDテーマ『true eternity』鳥羽莉の心情を的確に表現した名曲だと思うのだが、全キャラのエンディングに流すのはどうか?
・おまけシナリオはご都合主義と作品内で謳っているがそれを差し引いても無駄。
流儀にはご都合展開も何も無い。状況によってその人物がどのように感じ、どのように行動するかが重要。
鳥羽莉が胡太郎を同族にしてしまうのは鳥羽莉の流儀に反しているのではないか?
もし、そういうことがあるとしたらおそらく15年後の鳥羽莉ではなかっただろうか?