あんまりシコれなかったけど、しこりは残りました。
友「OYOYOってさあ」
私「ん?」
友「痴漢ゲー好きだよね」
私「いきなり何や。まあ好きだけど」
友「じゃあ、実際に痴漢とかやりたくなるわけ?」
私「えっ…………。ソ、ソンナコトナイデスヨ?」
友「マジで?」
私「マジマジ。超マジ。私が好きなのは痴漢ゲーであって痴漢ではないよ。痴漢ゲーが好きだから痴漢をするというのは、未来から来た青狸ロボが好きだからって、頭に竹とんぼ刺して、ζ゚<I can fly. するような短絡的思考でゴザイマス」
友「その喩えの意味は分からんが、そういう性癖があるから好きなんじゃないの?」
私「(痛いところをつきやがって……)分かった。正直に言おう。痴漢力があればなぁと思ったことは、ないわけでもない」
友「うん? ……あるってことね」
私「おう。でも、やると捕まるやん」
友「そうね。じゃあ、捕まらないならやる?」
私「いや、ポイントはそれだけでもございませんで」
友「ほう」
私「わたくしめはゴールドフィンガーを持っておりません」
友「……何?」
私「超絶テクでもいいんだけど。それで女の子をイかせてメロメロにして性奴隷にするような」
友「無理だろ」
私「そうね。つまり、そういうこと」
友「ん??」
私「だから、そういうの含めた一連の痴漢ゲー的展開が好きなのであって、単純に痴漢行為が好きなのではない」
友「なるほど。ゾンビ映画好きだからって、ゾンビに襲われたいわけでも、自分がゾンビになりたいわけでもないみたいなことか」
私「だいたいそんな感じ?」
◆型破りなゲーム
みたいなアホな会話を先日していたわけですが、痴漢ゲーをプレイしているときの私は、自分が痴漢行為をしたいというより、痴漢という卑劣で背徳的な行為によって堕とされる女の子を見て愉しみたいという感じがあります。
また、その愉しみの中には当然、痴漢ゲー独特のお約束みたいなものを見る、ということも含まれます。お約束というのはたとえば、主人公のフィンガーテクでヒロインが潮吹きまくるとか、満員電車の中で射精や放尿しても気づかれない、みたいな。現実の痴漢がどんなことやってんだか、私はさっぱり存じませんが、服の上からおしり撫でるだけとか、そんなショボいのはノーサンキュー。ある程度お決まりの「型」みたいなものへの期待みたいなものはあるわけです。
本作はタイトルのとおり、催眠モノであると同時に痴漢モノでもあります(後にこの問題については触れますが、今はとりあえず話をすすめさせてください)。で、催眠モノも痴漢モノも、それこそ黎明期から続く長い歴史を持ったジャンルであり、さっき言った「型」が隠然と存在しています。
もちろん、必ずしもそれに倣う必要はないのでしょうが、定番のものを作るにせよ新しい作品を目指すにせよ、「型」を把握していないと心許ないのは間違いありません。しかし本作は、その辺りを分からずに、結果として杜撰な「型破り」をしてしまった感があります。数々の痴漢モノを生み出してきたインターハートさんの作品に対して言うことではないのかもしれませんが……。
◆迷走する主人公
ゲーム開始と同時に、何の脈絡もなく、ひろし君(主人公)は言います。
「俺にとって痴漢は青春そのものだ」
かっけEEEEE!! 痴漢求道者キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! しかもネット上の知り合いからは「あなた様は痴漢の才能の塊のようなお方」と賞賛される豪の者です。これはもう当然、卓越した痴漢の技でバッタバッタとヒロインをなぎ倒す……のかと思いきや、その高い痴漢スキルはいまひとつ作中で発揮されません。
じゃあ、何をするのか? タイトルからお分かりですね。そう、催眠です。ひろし君は、催眠を使ってヒロインを操るのです。痴漢が青春ちゃうんかい。しかも、その催眠術の使い手は「サソリ」という女マジシャン。他力本願寺もびっくりです。
更なるツッコミどころとしては、ひろし君、このサソリを仲間に引き込む方法がなんと「餌付け」。貧乏にあえぐサソリにバイト代を払い、美味しい手作りの料理を振る舞うことで味方に引き入れるというのです。なめてんのか。
いやね、ストーリー紹介で「まずはあのグリーンアテンダント(サソリのこと)に接触をしよう」と書いてあったり、キャラ紹介で「私はあいつの奴隷となってしまった」とか書いてあるわけですよ。痴漢ゲーで。誰だって、このサソリとかいう女を痴漢テクで骨抜きにして支配すると思うんじゃないでしょうか。最低でも弱み握って脅迫でしょ。まさか料理テクでメロメロにするとは。奴隷って食事奴隷かよ。斬新さに眩暈がします。
そしてひろし君、自分の痴漢がうまくいかないとサソリを呼び出し、飯を作ってあげ、催眠術でターゲットのヒロインを操ってニャンニャンするという。完全に自分の失敗の尻拭いをさせています。もはやおむつ状態です。痴漢の達人じゃなかったンですか、あなた。
◆ブレるコンセプト
上のような主人公の迷走っぷりは、本作を貫く1つの問題に起因しているように思われます。それは、コンセプトのブレ。たとえば、この作品痴漢ゲーなのだとしたら、痴漢以外の力(催眠)に頼って痴漢を成功させるというのは、なんというか本末転倒です。もちろんそれだけ痴漢のシチュエーションを楽しみたいということかもしれませんが、最初の私と友人の会話にあったように、痴漢ならではの緊張感や雰囲気が、催眠によってスポイルされてしまいます。
また、催眠ゲーだとしたら、相手を操ってまでやることが痴漢どまりというのはいかにも小さい。もっと色々できるだろうと思うし、実際本作ではいろいろやるのですが、そうなった時に「痴漢は青春そのもの」とのたまうひろし君は、プレイの幅を広げる部分で足枷になっています。彼でなければ、もっと自由な視点と広い想像力で凌辱が展開できたのでは……と思ってしまうのです。
どうもこのあたり、何を見せたいかもよくわからないし、あるジャンルに対して何が期待されているかということもわかっていないのではないかと思います。つまり、主張もなければニーズに応える意志もない、ということ。悪い言い方をするなら、良い原画家さんを起用して、良い声優さんをあてて、そこそこ人気のあるジャンルで作れば売れるだろうというペラい考えが透けて見えます。
もちろんこれは私の勝手な解釈で、何かものすごいモチベーションのもとに製作された作品だったのかもしれませんが、結果としてはフラフラした作品にしか見えませんでした。
◆ひどいオチ
極めつけはオチの酷さ。これはもう何というか、筆舌に尽くしがたいものがありまして……。ネタバレなしなので具体的なことは言いづらいのですが、それまでの展開からすると「ハァ?」という感じです。
ひろし君はよく「痴漢哲学」みたいなものを語りますが、よくよく考えると一本筋が通っているカッコイイタイプではなく、それらしいことを言っていながらよく考えると実はたんにカッコつけてるだけというファッション哲学者タイプ。そういう意味で本作は割とギャグテイストが強いというか、『男塾』的な勢いまかせのネタとご都合主義のストーリーで展開していきます。
また、主人公が痴漢だったり催眠だったりをする内容ですから、どちらかというと凌辱をする側にフィーチャーした作品であると言えるでしょう。
しかし、本作のラストではいきなりそれがひっくり返るというか、もうわたくし、何が起こったのか分からずにポカーンとしてしまいました。何この残酷ショー。残念過ぎます!! インターハートに大いに不信感……は別に抱かなかったです。こんなもんといえばこんなもんなので。
とネタはともかくとしても、このラストはちょっとどうかなと思います。ドMの人ならアリかもしれないんですが、先ほど申し上げた通り、痴漢・催眠ゲーですからねぇ。ターゲットが違うような。BADENDかと思って見なおしたんですが、分岐もないしCG・回想とも100%になっているしで、悲しみの向こうへとたどりつきそうな勢い。
挙句、OHPではこれを「ハーレム」と称しておりまして……(「system」ページ)。こんなの絶対におかしいよ。
まあね、言いたくはないんですが、タイトルは『催眠パラノイア!』じゃないですか。でも、「system」ページではずっと「催眠パラノイ『ヤ』」って書いてるんですよ。初期の企画設定をそのまま放置してしまったのか、紹介ページは資料丸投げで何も知らない広報担当者が書いたのかとか、事情はわかりませんけど、そのあたりで少なくとも「OHPに書かれていることが真実とは限らない」という雰囲気の片鱗くらいは感じておくべきだったのかもしれません。
◆不親切なシステム
システムページの話になったのでついでに書いておくと、システムもちょっとイマイチという印象。後略ヒロインは8人いるのですが、途中選択肢や分岐の類は一切ありません。唯一、キャラを選択して誰のシーンから見るかを決めることはできるくらい。
しかし、1人のキャラを選ぶと立て続けにそのキャラのストーリーが進行し、2~3シーンが一気に展開されます。これはやはり抜きゲーとしては微妙でしょう。狙った娘が「ハズレ」だった場合にかなり長時間拘束されるし(スキップすりゃ良いかもしれませんが)、また、つまみ食いして少しずつ進めていきたい、というニーズにも応えることができません。
OHPに書かれている通り、各ヒロインに「前半」と「後半」があるのですが、全員ぶんの前半を終わらさなければ後半にはいけなかったり、妙な制限がたくさんついていて、しかもそれに何か意味がありそうでもない。1シーンごとに小分けにすればよかったんじゃないかなぁ。ともあれこの行動制限が、地味にストレスを高めてくれました。
また、各ヒロインの「終わり」方も結構バラバラで(個別EDが無いので単に「後略達成」くらいです)、キャラによっては異常に尻切れトンボな、スッキリしないかたちで終わります。本来予定されていたシーンを削ったのではないかと邪推したくなるのですが、どうなんでしょうね。
◆ダメなばかりではないけれど
散々不満点を述べてきましたが、完全駄作とも言い切れないのがまたモヤモヤするところ。
OP・ED曲はなかなか良かったし、りゅうき夕海先生の絵は非常にエロくて可愛くて、これ見られるだけでも得した気分はあります。個別のキャラやシチュエーションには光るところも多く、たとえば美月に「怒ると性的に興奮してしまう」催眠をかけて衆人環視の中脱衣させたり、マーチング服(バトン部の衣装)で青姦するのは個人的に好きです。
また、花鈴に自分を恋人だと思わせて寝とる展開とかはなかなか迫力があったし、ギャル系の竜胆が思っていることと逆の態度をとらされてしまう……というシチュは王道ながらいい味が出ていたと思います。
ヒロインについて言えば、日常描写が結構しっかりしていて、そのへんも良かった。邪魔にならない程度に彼女たちの日常が侵食されていく様子が、催眠と痴漢によって堕ちていく絶望感や頽廃的な姿に彩りを与えていました。
まあただ、やっぱりこれ痴漢じゃなくて催眠の良さですよね。タイトルでは痴漢って言ってないからセーフかもしれませんけど、そうするとOHPや作中での妙な「痴漢推し」はやっぱり不要だったんじゃないかという気がしてきます。
なお、攻略というか主人公がHするヒロインは全員処女(花鈴は血が出るCG無いけど、内心描写で処女だと言っています)。ヒロインによっては輪姦もあるので、独占でないとダメ! という人はご注意ください。
シーン数80。CG差分なし79枚。抜きゲーとしてはボリューム的にも少し物足りないところがあり。超弩級のストライクキャラやシーンがあれば別でしょうが、それもなく。2つ3つの良いシーンがあったというだけではやはり満足はしづらかったです。いっそ、2000円くらいのCG集でシーンは自分で妄想したほうが良かったかも……なんて思ってしまう時点で、残念な作品でした。