今どき「パンティ」は無いよなぁと苦笑しつつ、昔はこれが私にとっては卑語として効果を発揮していたことを思うと、あわれにしみじみと趣深い。
白輝学園で平和な日常を送っていた神志麻さくら(セレナ)とえりか(シンシア)姉妹。しかし、彼女たちの学園は突如、異世界から謎の攻撃に晒され、姉妹は分断されてしまう。学園生たちの生命を守りつつ原因を究明するため、先輩魔法戦士であるさくらは鏡島樹(エリクシルローズ)と、えりかは甘樹菜々芭(シンフォニックシュガー)とともに、それぞれ調査に乗り出した魔法戦士たちだったが、そこには敵の淫猥な罠が待ち構えていた。平和な学園は「感獄」と化し、魔法戦士たちに牙を向く。
「エクストラステージ2」と銘打ってはいるが、『魔法戦士エクストラステージ 10th Anniversary』(2012年9月)ではなく、『来てね! 魔法戦士の学園祭 ~FANDISCの乙女たち~』(2009年3月)の続編。今回はシリーズで微妙な存在感を放っていたディラックが敵役となり、ある「秘密」を知ったことから魔法戦士たちの力を利用しようとする筋立てになっている。
とはいえ、ストーリーはあってないようなもの。絶頂させたら洗脳が解けたりというご都合主義もマッハなので、笑いながら流すのが良いだろう。基本的にはセレナ・ローズのペアとシンシア・シュガーのペアがあちこちで怪人やら学生やらに無茶苦茶犯されるシーンがつなぎ合わさっただけのシチュエーション集のようになつくり。エンディングの分岐も存在しない。
「レムティアナイツ」(2008年)でひと区切りがついて以降も世界を広げ、2012年で10周年を迎えた「魔法戦士」シリーズは、古くは『たたかえ! プリンセス』(1999年)の系譜に連なる由緒ある変身ヒロイン凌辱シリーズで、関連作品の数や知名度の面から言っても、名実ともにTriangleの看板。私自身も第一作から大変お世話になってきた。それだけに、本作の低調さは、個人的に残念である。
何と言っても、全体的に「雑」。特にゲームの内容そのものと関係ないところでの雑さが目立った。
たとえば、立ち絵。本作は『来てね! 魔法戦士の学園祭 ~FANDISCの乙女たち~』(2009年3月)の続編という位置づけなのだが、立ち絵は使い回しである。表情バリエーションまで一緒。それなのに1枚絵のCGは刷新されているため、立ち絵と1枚絵(+パケ絵)が別人になってしまっている。いつものことと言えばいつものことかもしれないが、ほぼ100%使い回しというのは、端的に手抜きと言われても仕方あるまい。
また、テーマソングや魔法少女の変身ムービーも使い回し。この辺りは前作(『学園祭』)ファンへの配慮だったのだろうか。だが、ほとんどの素材が使いまわしなのを見た後では、単に手間を惜しんだだけではないかと邪推したくもなる。ムービーはせめて、解像度を作品にあわせるくらいはやってほしかった。
この影響なのかどうなのか、EXTRAにはCGとシーン回想のみで音楽再生が無い。加えて、CG・シーンのどちらにも魔法少女の変身シーンが登録されない(「学園祭」ではCGに変身シーンが登録された)。これは『魔法戦士エクストラステージ 10th Anniversary』(『EX1』)の時も同様だったので、低価格ファンディスクではそこまでサービスしない、ということなのかもしれないが、だとすればかなり不親切だ。
不親切といえば、ストーリーの説明。先に述べた通り、本作は『学園祭』の続編。さすがに5年も前のファンディスクの続きを克明に覚えている人は、そうそう多くあるまい。かといって、シリーズの前提や前作までの内容をまったく知らずに楽しめるものではない。にもかかわらず、そのことに対するフォローが殆ど無いのは、ちょっと苦しい。
ファンディスク扱いなのだから、わかる人だけ買えば良いと言われるだろうか。それはそうかもしれない。だが、これだけ長期間のブランクがあるのだから、作品本編なりマニュアルやHPなりでもう少しフォローがあってもよかったように思うし、事実そういう取り組みをしているメーカーはある。
たとえばEushullyは、『戦女神2』に、「1」のビジュアルノベルを添付した。これはまあ順当に考えて、より深く作品世界を知ってほしいというメッセージだろう。魔法戦士シリーズは、当時の『戦女神』に比べれば、遥かに長い歴史と複雑な世界を抱えており、それらを知ることでいっそう味わいが増すのは間違いない。なればこそ、多くの人が楽しめるように道を整備するのはメーカーの責務ではないだろうか。
新規のプレイヤーには敷居が高く、古参のファンも内容を忘れた人が多くて今ひとつ楽しめないというのでは、あまりに勿体無い。一応、昨年末に発売された『魔法戦士コンプリートディスク3』に収録されているのがせめてもの救いと言えなくはないが、本作はさすがにちょっとユーザーに対して不親切に感じた。
さて、使い回しが目立ったかと思えば、逆に変わりすぎて戸惑ったところもある。魔法戦士たちのキャラだ。細かいことを言い始めるとキリがないので1つだけに止めておくが、本作の樹(エリクシルローズ)は、「~ですわ」口調のお嬢様キャラで、一人称は「わたくし」。しかし、『学園祭』ではふつうの口調で、一人称も「私」だった。どういう事情があったのかはわからないが、一応前作踏まえてキャラ統一とかはやってもらいたいところ。
もっとも、樹は本来(「レムティアナイツ」時)本作のようなお嬢様キャラだったので、その意味では『学園祭』がおかしかったとも言えるだろうか。個人的には、『学園祭』は本編のパラレルワールド扱いだから微妙にキャラが違うのも納得していたのだが、繋がっているはずの世界観の中で変わるということは、「そういうこと」だったのかもしれない。
いや、Triangle作品で口調や何やらの細かいところに目くじらを立てても仕方ないというのは分かっているつもりだ。しかし、いくらなんでもちょっと度が過ぎているというか、ユーザーがツッコミを入れないせいでますます傾向に拍車がかかっているように感じるし、それは余り良いことではないだろうと思ったので、敢えてとりあげてみた。「魔法戦士シリーズにそんなとこ期待してないよ」という悟りを開いた方は読み流してほしい。
マイナスポイントを書いてきたが、プラスもある。特にエロ関連は、かなりパワーアップしていて、凌辱ゲー本来の役割を考えるとかなり評価できる。
Triangle作品は、2012年頃から塗りとシチュエーションが大きく変わり始めている印象で、ハードなシチュや肉感的な局部描写が増えた。新シリーズと目される『魔法剣姫 アークキャリバー』ほどではないにせよ、本作でもその傾向は健在。魔物や屑生徒を使った責めはだいぶグレードアップしていた。
また、表情も良い。特に夕暮ぱいろ氏のキャラ(セレナ・シンシア・正義女王)は感じているときの表情やイクときの表情が豊かになった。快感に耐える潤んだ瞳、快感に耐え切れず流す涙、だらしなく開いた口と、そこで糸をひく涎。かなりそそる。構図も全体的に練られていて、たとえば前作だとバックから触手に絡まれているときに、お尻だけが強調され胸が手で隠れていたりしたことが時々あったが、本作ではきちんとはだけた胸も見えるようにポージングが調整されている。差分で乳首が立たないあたりはちょっと残念なのだが、衣服やストッキングの破れ方など基本的な部分はきちんとしており、エロへのこだわりが感じられたのは良かった。
ただ、そうしてふつうの抜きゲーとしてのクオリティーが高まるにつれて問われ無くてはならないのは、作品の独自性ということではないか。本作を終えて、私はまっさきにそんなことを考えた。これには2つの意味があり、まずTriangleというブランドの中での、「魔法戦士」シリーズの独自性。次に、「魔法戦士」シリーズの中での、ある作品の独自性。本作は、この両方を欠いたまま、漫然と世に送り出されたようにも見える。
今回の作品をやって、ローズやシュガーはもちろん、登場して日が浅いセレナやシンシアでさえ、新たな魅力を発見できた気がしない。彼女たちを輝かせるような敵、魅力を引き立たせるようなシチュエーションやセリフとったものを、私はあまり感じ取ることができなかった。
魔法戦士シリーズは、長く続いている作品という、それ自体が大きな武器だ。タイトルに「魔法戦士」とつくだけでユーザーとも一定の内容理解を共有できる。変身ヒロインもので、一貫したシリーズを積み重ねてきた伝統の力は強い。
しかし、ふつうの抜きゲーとして良かった(=他の抜きゲーが力を入れているところで良さを感じた)ということは、裏を返せばこのシリーズでなければ味わえない満足を感じたわけではない、ということだ。これまでは、ふつうの抜きゲーとして押さえておくべきところがいまひとつでも支持層がつくような独特の魅力が出ていたのだが、そういう意味で「魔法戦士」でなければならない魅力で勝負できているわけではない。「アークキャリバー」でも、「MONSTER PARK」でも、あるいは他社の作品でも同じ褒め方ができてしまうのだ。
私の見る限り魔法戦士の魅力というのは、彼女たちの正義感や使命感が堕ちていく過程であり、日常の可愛らしさと戦闘の凛々しさと、凌辱されているときの淫乱さが打ち消し合うことなく同居するという「品のある(可愛らしい)淫乱さ」だったのだが、過程をカットしてHシーンだけをパッチワークするような作品の中では、あまりそこを強調し、活かすことができていないように思われる。
こうした問題は、長く続くシリーズには大なり小なりつきまとうものだし、ここを乗り切れば作品の真価が見えてくるようなところに、魔法戦士シリーズは差し掛かっているのだとも言える。停滞と変化という相反する要素を併せ持つ本作は、まさにその撞着ゆえに、魔法戦士たちにとっての課題を浮き彫りにしているのかもしれない。
どうもディラックを中心に「あちらの世界」と「こちらの世界」を巻き込んだ次回作があることを期待させるような終わり方だったので、ぜひとも次は、余すところなく彼女たちの魅力を引き出す壮大な花火を打ち上げてほしいと願っている。
CG差分無し50枚。
シーン数47(セレナ10、シンシア10、シュガー7、ローズ7、正義女王5、複数3、おまけ4、ED1)。
セレナ・シンシアのシーンはどれも使えたが、マイベストを挙げるなら、セレナがフタナリ化させられてセルフフェラをしながらオナニー絶頂するシーン。強がっているセレナが折れていく様子がチョロかわいくてとてもよかった。「く、くううっ、パンティ脱がしたら勝ちだとか思ってるんじゃないのっ……バッカじゃないのっ……」
この手の作品では、脱がされたら負けである。