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Nus2014さんの創作彼女の恋愛公式の長文感想

ユーザー
Nus2014
ゲーム
創作彼女の恋愛公式
ブランド
Aino+Links
得点
65
参照数
648

一言コメント

クリエイター志望というよりクリエイターに学生のガワをかぶせたキャラたちのお話。絵は良かった。シナリオは共通の途中まではいいんだけど、個別は逢桜√以外はオマケで、逢桜√もイマイチで物足りなかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最近の有葉さんの絵でキャラゲーやりたいって10年ぐらい前から思ってて、
絵は期待通り良かったけど、
シナリオは自分には合わなかった。
クリエイター志望という設定のためか作中で既存シナリオを揶揄するようなメタなネタが多く、
それが無駄にハードルを上げてたと思う。

逢桜√が全てという設定なので、高評価になるかは逢桜√との相性次第。
自分の場合は他の個別で冷まされたうえ逢桜√も導入から合わなかったので全くダメだった。



以下、各ルートについて。評価は辛め。


・共通

5話までは良かった。
各登場人物のやってることが本職そのまんまなので
これ学生じゃなくて学生のガワかぶってるだけの20代以上だろみたいな違和感もあったけど
それを飲み込めば楽しめる。

でも共通で8話も使う必要あったんだろうか。
特に6話(桐葉の実家問題)と7話(エレナのスランプ)は個別でやれよという話に思えた。

共通が長くなった弊害で、主人公が恋愛について保留したり反応鈍くなることが増えてしまったと感じる。
2話の即告白辺りの主人公は良かったんだけど、7話ぐらいからなんだこいつってなってきしまった。



個別について

・桐葉

失語症の展開は安易で、回復方法は主人公のシナリオを見られるわけではないので全く伝わらない。
これなら実家問題を個別でやったほうがマシだった。

桐葉が一番魅力的だったのは共通2話だと思う。
裏表キャラは落差があるときが一番良い。

あと設定で割を食ってる気がする。
CNGの影響で主人公が気になってるヒロインがサブも含めて多すぎる。桐葉だけで良かった。
ヒロイン→主人公の関係性があるからこそ容認されるツンデレなのに、肝心な部分が薄められてしまった。

ルートでは特に触れられなかったけど、
交際発覚後に桐葉が主人公が関わる企画で大抜擢されてるとバレるほうが大問題になりそう。どう見ても枕。


・ゆめみ

ゆめみのスランプはそんなんで治るのという感じだった。
桐葉の√もそうだったけど、ライターの匙加減でどうにでもなる病気に頼りすぎない方がいいと思う。


・エレナ

Colorless先生だからってコンペの結果に割り込むのもいかがなものかとは思うものの、
このルートだけは病気がなかったので他よりは良かった。
一度特に理由もなく振ってる主人公が気に入らないといえば気に入らないけど、
攻略を後回しにすれば適度に忘れられるはず。




・逢桜

命を削って創作を続けることを選択した、というテーマ自体は、好みが分かれる部分ではあるけど、そこは別にいいと思う。
ただ「現実」を強調するのならもっときっちり描いてほしかった。

桐葉やゆめみの√がそうだったように、この√も病気の進行をライターの匙加減次第にしてしまっている。
結末が辛いという一点だけで現実を描けたつもりになってるだけで
けっきょく神の力で残り寿命を調整してる点が一番物足りない。
登場人物の判断基準も神の調整に影響されてしまっていて、
現実であるならドクターストップがかかったヒロインと温泉に逃避行してセックス三昧なんてやるわけがない。

現実を描くのなら、ASのシナリオは逢桜の手では未完成にすべきだったんじゃないかと思う。
周囲の心配を振り切って自分勝手に創作に没頭したけど時間切れになって何も残せなかった。
それでもこれはハッピーエンドだと言えたのか。
それで結末を綺麗に描けないのなら選択が間違ってたということでしかない。


また、ASが、逢桜がそこまでして書くような作品かというのも作中からは伝わらなかった。
結末を変えるためにプロット全部直すというのは一見すごいけど、その程度の思い入れしかない物語だったとも受け取れる。
そもそも最後までクリエイターでいたいというのなら彩坂桜の作品を書くのでも良かったと思うけど、
作家名義は逢桜にとって重要じゃなかったんだろうか。

逢桜からは「クリエイターであること」にはこだわってる割に「作品へのこだわり」は全く感じられなかった。
思い返すと創作を続ける理由について「それがクリエイターだから」は何度も言ってるけど、
「描きたい物語があるから」とはほとんど言ってない気がする。


・シナリオの都合で残り寿命を恣意的に調整していて、登場人物の行動基準もそれに影響されてしまっている
・逢桜が命をかけて作ろうとしている作品が逢桜にとってどういうものかがよくわからない

主にこの2つの点で、逢桜√は自分にはイマイチだった。


ASの大切さは共通ルートの段階で積み重ねていくべきだったんじゃないかと思う。
失語症や作画のスランプで企画が頓挫しかける、という辺りも共通でやったほうが良かったんじゃなかろうか。
逢桜√がこういう設定なら、もっと全体をこの√に集約するような構成にしてほしかった。
他のヒロイン3人が別にいてもいなくてもいい存在感だったのも残念。

他にも導入から「おばあちゃんのところにお見舞いに行ったら屋上で会った」という出来すぎた偶然なのがイマイチだったり
全体として合わなかった。




・良かった所

辛め評価ばっか書いたので良かった所も。

有葉さんの絵は良かった。過去作と比べても一番良かったんでは。
有葉さんといえば代表作は車輪の国やG線上の魔王辺りだけど、
当時はまだ微妙な野暮ったさが残ってて作品評価もライターありきだった。
でもこの作品についてはまず絵がいいぞと言える。

あとHシーンの3回目がやたら濃いところにはなんかこだわりを感じた。
ヒロインみんな目からハイライトが消えるまでセックスさせられる。逢桜までそうなるのは鬼畜ではあるけど。

それとキャラも良い。
ゲーミングお嬢様や雨星はなんで非攻略なのかわからない。



結局シナリオ以外は大体良かったと言える。
シナリオで個別をやっつけにせず病気設定にも逃げずあからさまな好意を「あれはどういう意味だろう?」で話を引っ張らず
逢桜√がゴールになるようにしっかり構成してれば自分の評価は違っていた。かも。