シナリオの仕掛けは面白かった。ところどころ描写が冗長なのが惜しい。
Favorite作品は初。
夜の世界の雰囲気作りは背景、BGM、テキストともすごく良い。
列車で参禅町にやってくる冒頭からそれだけで凄く引き込まれる。
ただ、学園とかの現実世界でのコメディパートは正直退屈で、もっと薄くてもよかった。
同じシーンをいろんな視点から繰り返し描写するような演出が多く、効果的な場合もあるけど、大抵は冗長だったと思う。
Hシーンについてはないほうが良さそうなルートが多かった。
特に姫織とクロは無理やりねじ込んだ感がある。
各ルートとも、書いたらそれだけでネタバレになりそうなシナリオトリックによる仕掛けがあって、それは面白かった。
以下、各ルートについて感想。
クリアした順に。
・千和
恋愛ルートとしては一番丁寧だったと思う。
ただ主人公の行動はいただけなかった。全校放送が辛い。
なぜエロゲ主人公は全校放送で想いを伝えがちなのか。
こういうの共感性羞恥をえぐられる。
安易に千和の勇気を踏みにじっちゃったのは主人公の未熟さを見せるためだから別にいい。
不満点はないでもなかったけどナハトのおかげで概ね良いルートだった。
夜の怪物であるナハトが妙に可愛い。
さくらもゆで一番好きなキャラは?って聞かれたらたぶんナハトと答える。
・姫織
ヒロインとしては一番不遇。
どっちかというと姫織よりも前半の幼女パートのほうが良い。幼女の友情が尊い。実質十夜ルート。
前半の十夜パートで盛り上げすぎたためにその後の姫織パートに蛇足感が出てしまった。
キャラデザもね・・・マロマユどうなの。あんま可愛いと思えない。
・ハル
ここからがっつりタイムパラドックスが関わってくる。
この辺から話がややこしくなりまくるので、バランス考えたらハル√が一番良かったと思う。
前半は兎蛙姉弟のお話。
兎蛙パートについては、智仁姉に何が起きたのかなど、後半はよかった。
姉の乗る列車を追って叫ぶシスコンのシーンもいい。
ただ前半の学園祭は正直イマイチだった。ここだけ作中通して一番辛い。
曲も用意してないのに一週間前にライブ強行を決定する強引さや
嫌がるハルたちに無理やりやらせる割に自分は何もしないという身勝手さで、ここだけで智仁の好感度がガタ落ちしてしまった。
せめてこういうときは智仁もノリノリで女装してライブに参加してほしい。
締め方は良かったと思う。
後半でようやくハルの出番。
姫織ルートみたいな二部構成なので、またルート前半で盛り上げすぎみたいにならないか心配だったけど、こちらは杞憂だった。
序盤の引き込みから魔法の生成、そしてやり直しへと、話の引き込み方が上手くさくさく進む。
時間遡行や並行世界とかも出てきて話の構造はややこしくなるけど、まだ把握可能な範囲。
あらゆる可能性をつぶしてたどりついた結末を見ると、ここが真ルートでいいんじゃねって感じになった。
・クロ
主人公が参禅町にたどりつく前が描かれるお話。
ここからさらにタイムパラドックスがややこしくなる。
前半は主人公のヒーローであるましろと過ごした大雅の話で、ここまではまだ話を把握できる。
この辺までは、よくこんなややこしい話作れたなと感心していた。大雅についての仕掛けも上手かった。
後半でようやくクロのターンが始まるんだけど、ここからが辛かった。
話の構造のややこしさもだし、クロがこの期に及んでもまだ報われないのかってのが見てて辛い。
けっきょく一番可哀想な最初のクロは、
未来への呪いを受ける→ハル√を傍観して終わり→夜の世界で目の前で少年を失う
→助けを求めた未来の大雅は夜の世界を忘れる→ようやく希望を見つけたとこで死亡
となってしまうので可哀想すぎ。
そして、この続きで、またクロが主人公の人生を傍観するだけの役目を強いられてしまう。
ハル√の裏でやってたことなのに、また同じことの繰り返し。
最終的には報われるにしても、そこまでの過程が長すぎた。
ただ、それはそれとして、クロとましろの中の人である夏和小さんがすごかった。
夏和小ルートとしてはすごく良いと思う。