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Nus2014さんのRIDDLE JOKERの長文感想

ユーザー
Nus2014
ゲーム
RIDDLE JOKER
ブランド
ゆずソフト
得点
80
参照数
713

一言コメント

デモムービーが久しぶりの厨二くささだったのでいつもと毛色が違うかと思ったが、蓋を開ければいつも通りのゆずソらしいキャラゲー。キャラの可愛さはどの√も安定してる。推奨攻略順は特にないけど、あやせは後にしたほうがいい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

能力学園ものっぽいシチュのキャラゲー。
たぶんスタッフの誰かが「禁書(超電磁砲)みたいなの作りたい」とでも言ったんではないか。
内容としてはどちらかといえば能力物よりも潜入工作のほうに重点が置かれている。

エロゲの能力物だと能力発動時のCGを1枚用意して使いまわすのがよくあるパターンだけど、
今作の場合、能力発動時のCGはほとんどない(最後の最後で羽月だけ1枚あり)。
思い返してみると、デモムービーで能力発動してるシーンは全部アニメで、それっぽいCGは1枚もなかった。
能力設定はあくまでシチュ作りのための小道具であり、シナリオ上の重要性は低いという意思とも感じられて、ある意味潔い。

キャラの立て方は相変わらず上手くて、
キャラゲーとしてはケチをつけられる気がしない。

千恋から良くなってた点として一つあげられるのはキスCG。
第三者視点のじゃなくて立ち絵の延長みたいなやつ。あれは良かった。今から茉子ちゃんのも描いてほしい。


シナリオについては、もうちょっと頑張ってくれればもっとよかったのにと思わないでもない。
たとえば敵がしょぼいとことか。

せめて敵を能力者にはできなかったんだろうか。
せっかく能力物なのに、中ボスやラスボスが非能力者やニワカ能力者なんかでは寂しい。
能力者と非能力者の対立という世界設定にした時点でこうならざるを得ないんだけど、
それはそれで、能力者間でも融和派と敵対派の対立みたいな構図にしたり、いろいろできたように思う。

ただ、クソシリアスなガチ能力バトルはユーザー層からはそんなに求められていないというのもわかる。
根本的には、善人ぞろいでゆるい雰囲気の最近のゆずソフト作品とは
やはり世界観は合わなかったんではないかと思う。






以下、各√について雑感。



・あやせ

表の顔は完璧優等生、しかし裏では誰にも言えない秘密を持っていて、素は案外ゲーマーという、
サノバの寧々とめぐるを混ぜておっぱいを削ったようなキャラ。

Hシーンでもエロゲヒロインにあるまじき表情をしたりちんちんで腹話術始めたり、見てていろいろ面白い。
おっぱいの足りないヒロインは個人的にはそれだけで減点なんだけど、キャラはすごく面白かった。


シナリオについては、後半はシリアスな話になり
謎の大半はこのルートで解き明かされるんだけど、演出としてはあまり上手くいっていないと感じた。
理事長の子飼いなんていなくてよかったし、
あやせもこういう設定なら注射器ぶっさされるべきだった。
謎解きがカタルシスとしてあまり機能してなかったように思う。
コンプした後でも「全てを暴け――」はパットのこととしか思えない。


・七海

金髪妹でおっぱいでかいオナニーヒロインという、ゆずソフト的に鉄板な要素を固めてきたキャラ。
絵についても、こぶ先生が久しぶりに本気出してきた気がする。
いつも本気かもしれないが、100%中の100%出してきたみたいな意味で。
√を通じて、キャラについては手堅さを感じさせられた。

シナリオについては、これは風呂敷広げすぎたと思う。内閣とかマフィアとか。
千恋のVFBの座談会で「和風はちゃんとやらないとB級感出る」みたいなことがちょっと言われてたけど、
それは別に和風に限った話ではなかった。

√の途中で昔の七海の回想が入り、
暁たちと家族になってく過程が描かれてたけど、シリアスパートはこの延長でよかったんではないか。
家族の話をふくらませたほうが無難にまとまってた気がする。



・茉優先輩

一番真面目に「Riddle Joker」というタイトルっぽい話を描いてる√。
能力を使って射精コントロールしたり、セックスで能力が覚醒したり、
能力物のエロゲーでやるべきことをやってる唯一の√でもあった。
話の出来によっては真ルートといってもよかったと思う。

ただテーマをちゃんと描いたことがプラスになってたかというと・・・どうだろう。
主人公とプレイヤーのリンク値はこの√が一番下がってしまったように思う。
特に、茉優先輩が「そう・・・」と一言だけ漏らした場面と、「俺は白衣を脱がせたい」と強調する場面において。
なんで白衣を脱がせる一択なのか。選択肢はないんですか。

√の導入で、明らかに茉優先輩が警戒してるのに潜入して捕まるんじゃなくて
「さすが茉優先輩かしこい!これは捕まっても仕方ない」みたいな流れにしてれば
多少は暁くんへの印象とかも違ってたんじゃないかと思う。

一番面白くなりそうな√なのに、話の見せ方やキャラの見せ方でなんか違うんじゃないかと感じる点が多く、
いろいろもったいなかった。



・羽月

恋文から始まる恋物語という、普通なお話。

キャラはあやせと同じぐらいに面白かった。
将軍様をリスペクトしすぎてるヒロインとか、どういう引き出しから出てくるのか。
時代劇ネタ以外でも、次に何言い出すかわからないとこが面白い。

敵キャラは結局しょぼいんだけど、作品的にはこれぐらいがちょうどいいレベルの敵キャラだったんではないか。
羽月以外のキャラも、特にあやせの使い方は良かった。

最後のほうの決着はあっさりではあるものの、
「ゆずソフトの能力学園ものならこういうの作ってほしいな~」というのを無難におさえた√だったと思う。



・千咲

サブヒロインという立場なのでボリュームは薄め。
その影響で後半のシリアスパートがなかったのはむしろ良かったという気もする。



・まとめ

序列つけると 羽月>他。

話としてはいろいろモヤるんだけど、ヒロインが全員素敵なので
最終的にはゆずソフトならこれでいいんじゃないかなという境地に落ち着いてしまう。そんな作品。





その他どうでもいいことについて。


・デモムービー

トランプ演出がかっこよかったけど、本編にはほとんど関係ない。
タイトルに「ジョーカー」があるつながりでトランプ演出しただけなんだろうけど、ジョーカーも話と特に関係ない。
この辺はいったい何だったんだろう。
企画当初は橘花学園に潜むジョーカーを探せみたいな話だったのが
制作過程においてなくなって、タイトルのジョーカーだけ残った、というような経緯なんだろうか。

ゆずソフトのタイトルが特に意味のない雰囲気タイトルなのは今に始まったことではないけど
今回のジョーカーとトランプは無駄にかっこいいので作中で使ってほしかった。


・声

本当にどうでもいいことだけど、チンピラの声の人下手ではないか。
シリアスパートがしょぼくみえる一因として、チンピラの演技が下手なせいなのはあったと思う。
男が全部ダメというわけではないので、その他男性というざっくりした区分けではなく、チンピラだけオフにしたかった。



・暁パパ

全体としては優しいイケメンなお父さんなんだけど、茉優先輩√だけはなんか胡散臭く感じられた。
暁と七海が「研究棟に忍び込んででも、何か成果を出さなくては」という考えになってたのが、なんだか暁パパの思考誘導に見えてしまった。

暁が「自分の意志で特班の一員になった」と作中で再三フォロー入れてるけど、
よく考えてみるとこれはマインドコントロールの常套手段なんではないか。

そういう目で見ると疑問になることが2つあって、
1つは、なぜ引き取ったのが暁と七海なのか。
能力のせいでネグレクト受けてる子はたくさんいるであろう中で、なぜ引き取られたのが工作員向きの能力持ってる2人だったのか。

もう1つは、「特班のことは家族にもできる限り隠さなければいけない」みたいなこと言ってたのに、
なぜ引き取ったばかりの暁と七海にあっさり話したのか。

つまり工作員向きの能力をもった行き場のない子を引き取って、特班のことも隠さず話して、
しかし特班の一員になることは本人の自主性に任せたということなんだけど、
なんか暁パパに都合良すぎじゃない? 本当に暁の意志だったの?


まあ設定の都合でそうなっただけで、脚本の人そこまで考えてないと思うよと言ってしまえばそれまでだけど、
特にフォローを入れなかったら暁パパが孤児を工作員に仕立て上げる悪人になっちゃうなーというとこまでは作ってるほうも気づいてそう。
1つぐらい暁パパがラスボスのルートもあってもよかった気がする。