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Mistral0912さんのましろ色シンフォニー -Love is Pure White-の長文感想

ユーザー
Mistral0912
ゲーム
ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-
ブランド
ぱれっと
得点
100
参照数
1508

一言コメント

語る言葉をどう表現すれば良いか…それすら悩む程に綺麗で、微笑みの生まれる物語でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

半年を過ぎた今になってどうしてでしょうか。
巡り合わせと言えばそうですが、本当に出会えて良かった…
評価という評価をすべきで無い気がしますが、拙文をば。
尚、POVは桜乃主軸でした。かなり贔屓にコメントしてますがお許しを(汗)

【シナリオ】
主人公の性格を表すならば、「石橋を叩いて左右確認をして、邪魔にならないように渡る」でしょうか。
そしてその性格をなぞったかの様な、繊細な物語進行でした。
数ヶ月の出来事なのに、その1日1日を本当に色濃く塗り上げていく日々です。

一歩間違えば、少しでも周囲の人間が違っていれば…恐らくこの物語は成立しない。
全てが淡くて、壊れやすそうで…そして真っ白な世界。
時に激しく、時に深く。その世界を怖そうと、塗り潰そうと障害が立ちはだかる。
そんな壁を丁寧に、そして一生懸命考え抜いて乗り越えていくお話。

「周囲の空気」はよく分かる表現ですよね。周りに誰かが居ると、空気が動きます。
小さい頃の環境からそれを敏感に察知する様になった性格は損でもあり、得でもあり。
それにより周囲に気を配って生活する主人公の言動は、ぶれる事無く一貫しています。
だからこそ、この物語はこれ程綺麗で純粋だったのでしょう。

奇抜も奇天烈も、突然の悲劇も、奇蹟も起きません。
それがとても貴重で、そんな世界に触れられて良かった…本気でそう思えました。

…強いて言えば、この物語が生まれた事が奇蹟なんでしょうね。


【音楽/Voice】
前作さくらシュトラッセにてBURTONさんを絶賛した身としては狂喜乱舞ですっ。
冒頭の夜の公園で流れるピアノ「野牡丹の紫」を聞いた時、暫く聞き入っていました…

そんなBURTONさんが全曲を手がけているとなれば、勿論お勧めは「全曲」でしょう。
「野牡丹の紫」「清々しい笹団扇」「郭公薊な楽しい日々」…と、お勧めの枚挙に暇がありません。
殆どに渡り花の名前を添えているのは、曲自体が花言葉をテーマにしているのでしょうね。

橋本さんの「シンフォニック・ラブ」、あきさんの「さよなら君の声」
RIREさんの「キミイロミライ」も言う事無しです。
OP・挿入歌・EDの雰囲気をきちんと持っていて、ちゃんと聴かせてくれる曲です。

何にせよサントラは必聴です。イベント限定ではありますが…素晴らしいの一言に尽きます。
…? 瀬名さん? えっと……あはは……


登場人物+1匹の声も文句無しです。ぱんにゃ、本当にお疲れ様…(笑)
全員が持つイメージを、全員が声で完璧に表現しているのは脱帽としか言えません。
個人的には桜乃の声色、テンポが大好きです。のんびり、まったり。でも、優しい声。


【絵】
和泉つばすさん、流石ですね。純粋で綺麗、をしっかりと表現されてます。
綺麗に可愛く、儚く切なげに…見せるべき時に魅せてくれました。
一方でぱんにゃを筆頭に、おとぼけ顔もコミカルに描いてるのも素敵です。
イベント絵に関しては見惚れる、としか言い様がありませんでした。

兎に角安定してかつ、雰囲気をしっかり伝えてくれるなあと感じてばかり。
どの場面であれ、目にして惹かれるのであれば全般に渡り魅力的に映る筈です。


【総評】
ましろ色という表現に触れて思ったのは、この物語自体が色を変える気がした事。
触れる側の考え方で、きっとどんな風にでも映る気がしました。

「所詮物語の中の綺麗事」と言えばそこまでかもしれません。
ですが、これに近い空気を味わった事ならきっと誰にでもある筈。
なら、それよりもう少しだけ綺麗な物語があっても…悪くは無いのではないでしょうか。

100点というのは勿論個人的な贔屓目もあるでしょうが、
それ以上に「減点すべき箇所が見つからない」、「そもそも減点する気にならない」
と、これを書いている最中でさえ思っているからです。

コンシューマ化されるとの事ですが、是非多くの方に触れて欲しいです。
物語も、音楽も絵も。何か一つでも欠けては為し得ないこの綺麗な世界に。
そしてこの物語の優しい空気が、多くの方に伝わって欲しい…そう思います。



……でも、主人公の性格は本当に大変ですね。支えてくれる人が居るのが救いです。
この若さでここまで敏感で、そして気を配るというのは見ていて心配な程。
芯が強いだけに、いつか倒れてしまうのでは…とずっと気になってました。
幸せになって欲しいですね、彼とそのパートナーには。

さて、長らくここまで読んで頂けたなら幸いです。
ほんの少しだけでも気になっているのならば、是非お勧めしたいです。
本当に……本当に、良かったです。