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Medotsuさんのつよきす ~Mighty Heart~の長文感想

ユーザー
Medotsu
ゲーム
つよきす ~Mighty Heart~
ブランド
Princess Soft
得点
90
参照数
121

一言コメント

あらゆる点において完成度が高いきゃんでぃそふとの全盛期を象徴する作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオ、テキスト、キャラ、声優、音楽、絵、どれをとっても高水準の萌えゲーであり、燃えゲーでもある。

評価点が分かれそうなのは
①コンセプト上女性陣が強気な性格が多く、いわゆるおしとやか系ヒロインがほぼいない
②主人公のレオが過去を引きずってテンションの下りがうざいと感じる人がいるかもしれない
事だろうか。
自分の友人は②の理由でこのゲームは好きでないと言っていた。

PC版からの移植にあたって変更された点はエロが多すぎた祈ルートの削除と、よっぴールートの大幅な修正。そして、素奈緒ルートの追加。素奈緒はキャラとしての完成度が高く、レオの過去についても触れられている為、エロにこだわりがないなら無印はこっちでプレイするのがおすすめ。
と昔は思ってたけど今は逆移植版もあるのかな?

ストーリー
過去に起こったとある事件以来、テンション任せの行動は碌な結果をもたらさないと学んだレオは日々を大人しく過ごすことを決意。しかし、生徒会の手伝いをさせられるようになってから騒々しくも充実した日々が始まる。

一般的な学園アドベンチャーにしては登場人物の数がかなり多く、サブヒロイン、男性陣共に個性的なキャラが揃う。萌えゲーでは冗長になりがちな共通ルートも、ハイテンションなテキストや個性的なキャラによって彩られるため全編通して飽きる場面が殆どない。

登場人物とルートについて

レオ・・・主人公。過去に起こしたとある事件からテンション任せの行動を厭う。テンションの下りはシナリオ中で何回も多用されるため人によってはくどいと感じるかもしれない。ボトルドウォーター作りが好きという謎の趣味を持ち、そのことに関しては性格が変わる。
話開始時点ではウジウジした描写が目立つが、そこから徐々に変わっていくといういわゆる成長する主人公。燃えゲーとしての側面もあるこのゲームではマッチした題材だと思う。
なんでモテるのかわからない奴、最初から最後までダメなまま成長しない奴、最初から完璧なのにそれがかえって嫌味たらしい奴(また俺なんかやっちゃいました?系)、あまりにも鈍感すぎる奴、などイライラする主人公も結構多い業界において、バトル物でもないのに成長の過程が描かれているというのは割と貴重な存在。個人的には良い主人公だと思う。

乙女・・・姉キャラ。戦闘力が半端なく、愛刀「地獄蝶々」を常に帯刀しているヤバい人。同ブランドの姉しよで様々な姉キャラが出たが、どのキャラとも違う個性を持つ新たな姉キャラ。普段はきりっとしているが機械の操作に弱いというギャップを持ち、関係性が恋人に近くなるにつれ可愛いさが増す。村田とのボクシング対決が熱いルート。

カニ・・・外見は愛らしいのに口を開けば下劣な言葉が飛び出す男勝りな幼馴染。
全体的に言うことなす事小者匂が漂う。天然系のポンコツとは真逆のベクトルでポンコツなヒロイン。カニの可愛さもそうだけど、何より昴の男気が光るルート。
こんなイケメン幼馴染がいるのにレオに惚れてしまうのが男女関係の不思議なところだと思う。ゲームに限った話じゃなく現実でもこういうことたまにあるよなと。

エリカ・・・高飛車ではあるが見下しているというよりは、人の上に立つものとしての自覚が備わっているといった感じのため、不快感はない。
男女関係を知るためにレオに仮初の恋人関係を要求するけど、はまりかけてしまいエリカから関係を解消。その後のレオの行動が非常に臭い。吹っ切れた後はテンションの下りどこ行ったという怒涛のオラオラを見せる。そのやり取りが放送を通じて全校に拡散してしまうという見ててニヤニヤうようなバカップルぷりが発揮される。
余裕綽々のお嬢様があたふたするさまを見たいという人の希望にこたえてくれるだろう。

なごみ・・・出会いから個別に入るまでは常に周りとの距離を取っている孤高のヒロイン。
デレに移行するまでの期間が長い分、デレに入ってからの破壊力がすさまじい。
しかもそれが突然やってくるから最初は何が起こったかわからなかった。
時系列的には
共通→個別入るまで(義務感で生徒会にいるだけでレオにもほぼ無関心)

個別入って少し経過(態度が少し柔らかくなる)
なのだが、この態度が少し柔らかくなりつつもツン成分多めの状態で最後まで行くのだろうと思っていた。しかし、次の場面

父親を捨てて新しい男の元に行く母親を許せないなごみ。それに対してそういうところがガキなんだよと諭すレオ。それに対して「ガキじゃないです」とレオに突然のキス。
ここに至るまでデレる傾向があまりなく一気に展開進んだな~と思っていたら、さらに次の場面

「えへへ・・・先輩、大好きです」
???誰だこれは?突然全くの別人に様変わり。ここまで差のあるヒロインは初めて見たし、一瞬でモデルチェンジする変わり身にも驚いた。
じゃあそれがダメかというと全然そんなことはなく、デレに転じていなかっただけでその下地はこの場面で既にできているから、意外性にいい意味で驚いた。
この破壊力は声優(海原エレナ)の演技もあって、すさまじいことになっている。
かなり可愛いヒロインだった。

素奈緒・・・PS2版の追加ヒロイン。このゲーム、何かの雑誌にヒロイン全員がツンデレって書いていたけど厳密にはツンデレとはちょっと違うのでは?というキャラが多い。
しかし、素奈緒は世間一般のイメージのツンデレにかなり近い。
「トサカくるー!」が口癖でピーナッツバターが好きなレオの中学時代の同級生。
テンション任せの行動にトラウマを抱くようになった原因。レオは昴と共に当時色々とやんちゃをしていたが、学園内では人気者のポジションだった。しかし、素奈緒を助けるために、同じ学校の生徒と喧嘩をして負かしてしまう。
他校相手なら英雄扱いだった喧嘩も、同校の生徒にまでその拳が振るわれるとなるととたんに周りからは恐怖の対象とみなされる。幼馴染さえいれば他にはいらないという昴に対し、それほど達観した考えには到達できないレオ。素奈緒は助けられたことに感謝したが、悪い奴に対して一貫した正義感を見せる素奈緒とは逆に、周りから引かれることを恐れて自分を押し殺すことにしたレオ。
ここから二人の仲は険悪なものになる。これがレオの暗い過去の内容。
PC版では明かされないこの部分が補完されているのがまず評価できる。
また、個別ルートでは最初はぎくしゃくしていた二人が徐々に距離を縮めていくという王道の内容でありながら、その王道のツンデレが強烈に可愛く、自身がこういう王道ツンデレが好きなこともありかなり好きだった。
普段のツインテールもいいけど一緒に温泉に入ったときの髪を下したCGの破壊力は圧倒的。
PC版はこのヒロインがいないというだけで大分面白さが下がると思う。それくらい存在感のあるキャラだった。

よっぴー・・・おしとやかとみせかけて強烈なヤンデレ属性のヒロイン。これもある意味強気の一種という解釈なのか?
一応ルートはあるがエロが多いので大分カットされた結果微妙な出来になってしまった。バッドエンドではエリカと決別する後味の悪いものだし、グッドエンドでもエリカを振ってよっぴーを選ぶだけで根本的に何も解決していない。PC版のように綺麗な終わり方はせず、逃げの一手という感じで微妙だった。キャラはいいんだけど。

祈・・・PS2ではルート削除されたキャラ。物腰の柔らかい毒舌という強気属性を搭載。まあ削除されても大勢に影響はないかと。みたかったらPC版をやればいいと思う。

その他
全員あげるとキリがないので主要キャラのみ記載。

昴・・・レオの幼馴染でスポーツ万能の超絶イケメン。父親がクズで家庭環境に問題はあるが幼馴染との日々を楽しく過ごしている。どのルートでもクールでかっこいいキャラだが「ナイスブルマ」など茶目っ気も見せる。また、カニルートでは作中一のイケメンっぷりを発揮する。
エンディングで昴とカニに向かってテレビ中継からメッセージを発するシーンは感動させられた。

フカヒレ・・・いじられキャラ担当の三枚目。レオの幼馴染その2。作中で笑えるシーンの半分はこいつが関わっているんじゃないかというくらい面白いキャラ。こいつがいるからこそつよきすという作品は成り立っていると思う。昴とは真逆のポジションのため男3人組は良いバランスになっている。
基本的にはいじられキャラだけどなごみルートではギター弾きを本気で目指している場面をレオが見かけ、レオの将来に対する考え方に影響を与えるなど真面目な場面でも行動が光るキャラ。
なごみルートのエンディングでは共通ルート序盤でセクハラ扱いされた後輩の女生徒から慕われる場面がみられる。
カニルートのエンディングでは確か郵便局の職員だったかな?ルート違うと将来がここまで変わるとは。

館長・・・破天荒な性格の竜鳴館のトップ。見た目が歴戦の武闘家にしか見えない。声優は聞けば一発でわかるだろう。

土永さん・・・祈りの飼う喋るオウム。こちらも声優は聞けば一発でわかるだろう。

村田・・・乙女ルートでレオと戦う2-Aのエース。12人の妹というどっかで聞いた設定。

西崎・・・この作品では珍しい大人しく健気なキャラ。乙女ルートの分岐でヒロインになる可能性を見出せるくらいフラグが立っていたが攻略不可。これ以降様々なリメイク作品が出るけど浦賀や豆花もヒロイン昇格したことを考えると結局主要な女キャラで攻略できないのは多分西崎だけ何じゃないだろうか?まあ強気娘のコンセプトとは真逆だから仕方ないのかもしれないけどこの点が当時かなり残念だった。
小説では西崎ルートが収録されている本もあり、これが唯一の攻略している場面だろうか。

のどか・・・なごみの母親。見た目は共通点あるが性格が真逆でほんわかしている。なごみルートでは重要な存在。

総評
強気キャラが攻略したい、コメディ作品がやりたいの2点なら真っ先にお勧めしたい作品。