コンセプトはMaking Loversと似ているが、今回はヒロインによって周辺環境どころか時間軸まで異なるというさらなる発展系。このような作品は他にあまりなく、色々と創意工夫を凝らそうとする姿勢には好感が持てる。今回のシステムは良い点と悪い点がはっきりしており、好き嫌いが分かれると思うが絵が良いだけの量産型萌えゲーに逃げず企画力で勝負する姿勢はこれからも続けて欲しい。
ヒロインは四人いるが、それぞれのルートで主人公の環境と年齢設定まで大きく異なるという珍しい設計。
このシステムの良い点は、ヒロイン毎に独自のルートが設定されているので毎回新鮮な気分で攻略出来るところ。
逆に悪い点は、ヒロイン同士で横の繋がりが一切無いのでゲームを盛り立てる人材が不足しがちなところだ。
ただ、そこはメーカーも把握しているのか各ルートにはサブキャラが配置されており、マンネリ化を防ごうとする意思が見える。
しかし、このサブキャラ配置が機能しているルートと機能していないルートではっきりしているので、ヒロインによってはどうしても退屈と感じてしまう場面もあった。
作戦としては間違えていないが、全ヒロイン同様のクオリティを保って欲しいというのが正直なところ。
特にMaking Loversよりもヒロインが1人少なくなっているので尚更そう感じた。
削ること自体は構わないのだが、その分をこういうところで発揮してくれればなと思う。
絵について
元々絵で勝負するメーカーでは無いのでそこまで追求はしないが、本当に谷山さんなのだろうか?
個人的にはMaking Loversの方が良かった。
まあやってる内に慣れてきたから良いけど。
でも個人的にコレットは絵の崩れが目立つと思う。
他の3人はそうでもないんだけど。
ルート感想(攻略順)
えいみ
学生編のヒロイン。個人的には一番このルートが好き。
友人の恋を応援する為にダブルデートをセッティングしたことがきっかけで知り合い、飼い犬の事故に対して親身になってくれた主人公と急接近、付き合い始めてからは周囲を全く気にしないバカップル化、の自然な流れがよかった。
えいみ自身もかなり好きなタイプのヒロインだし、放送室をジャックしてお互いの好きなところ暴露大会を全校生徒の前で披露するなどとにかくバカップルっぷりが凄い。
舞台が学園ということで多くのモブが登場するし、サブキャラの大輔やカナ子もかなり存在感を出しているので全編を通して飽きることが無かった。
学園のアイドルという使い古された設定のヒロインだが、それを陳腐と感じさせないシナリオに仕立て上げるのは流石と言える。とにかく掛け合いが秀逸だった。
千津
社畜編のヒロインその1
安月給の会社に不安を感じ、副業で始めた家庭教師のバイトを通じて距離を縮めていくスタイル。
女子高生が年上に憧れて付き合う、というシチュエーションは現実でも多々ある話なのでこちらも割と自然な流れで付き合うことになる。
どのキャラもそうだが千津は付き合ってからが真骨頂で引っ込み思案な娘かと思いきや自分の母親に嫉妬をしたり、主人公を常に独占しようと奮闘するところが可愛かった。
立絵有りのサブキャラは千津の母親1人だけだがこちらも良い味をだしており、全体的に良く纏まっていたと思う。
コレット
社畜編のヒロインその2
外資系企業の社長令嬢の一人娘。主人公は子会社で働く一般兵なので、逆玉となる。
フランス人であり、SMEEの作品としては珍しい純正の外国人ヒロイン。
ホワイトボードの下りから接近していくことになるが、この流れはやや唐突な気もした。
それ以外に関しては概ね良かったが、ヒロインの中で唯一主人公の実家に挨拶するイベントが無いなど物足りなさも感じる。サブキャラはコレットの両親であり、父親が良い感じに狂っているのは良かった。
ただ、前述したとおりコレットはCGのクオリティが安定性に欠けていたのが気になった。
多恵子
社会人編のヒロイン
30才であり、エロゲとしては年齢が高めの年上ヒロイン。
他のルートではヒロインから積極的にアプローチしてくるが、このルートは唯一主人公がガンガンアタックしていくことになる。
ただ、付き合うまでの流れがやや強引に感じた。
30才まで独り身で男よけの指輪までしてるのに割とあっさり堕ちるのが違和感あり。
ルートサブキャラは多恵子の母だが、千津の母ほど役割を発揮できていないのも残念。
多恵子自体は年上でありながら子供っぽい拗ね方をしてきたり可愛い部分もあるんだけど、ヒロイン以外の人物関係がインパクトに欠けるのでそこだけは勿体なかった。
その他不満
デフォルト名で始めたときは名前で呼んで欲しい。
過去作ではちゃんと名前で呼んでくれるのに今作で唯一名前で呼んでくれるのが学生編の大輔のみ。
それもたった一回。
本名プレイする層に配慮するのは結構だけど第三者目線プレイヤーへの配慮を怠って欲しくないのでここは明確な不満ポイント。
総評
メリットとデメリットがそれぞれあるものの、コンセプト自体は斬新で良いと思う。
ヒロインも全体的に可愛いし、いつものSMEEらしさが出ていた。
ただ、えいみ以外のルートはもう少しはっちゃけても良かったかなと。
総合的には十分良作の部類に入る出来。